Без кейворда
ふざけて言い寄ってみると、不似合いだなんて思う様子はまるでない。本気で私を恋人にするつもりらしい。 呆れたお婆さまだけれど、風変わりな面白さに、私は誘われるままになってしまった。 とは言うもののこの関係が人の噂になってはまことに体裁がわるい。それなのにあの日以来、典侍がすっかり恋人気分なのには参ってしまう。帝の御からかいにも弁解しなかったとか。
夜も更けて涼しい風が吹いてきた。けれど、ここではどうにも眠れない。するとなにやら人の気配がした。 やや!典侍の古い恋人の修理大夫か。顔を合わせるなんて、そんな無様なことは真っ平だ。そうだ、これを潮に退散しよう! 「ひどいじゃないか、いままでだましていたなんて・・・」詰るように言いながら、私は直衣を取って一旦屏風の陰に隠れた。
怒り狂った男は・・・。 男は・・・中将じゃないか!なんということだ、ばかばかしい。 どうりで仕草が大仰で芝居がかっていたはずだ。太刀を抜いた腕を思いっきり抓ってやった。 なんでも私に張り合おうとする中将は、ほんとに困ったものだ。今度のことを葵上には内緒にしているらしいけれど、私の弱みを握ってにやにやしているに違いない。