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2016年公開の映画『モアナと伝説の海』
『モアナと伝説の海』は、2016年に米国で、2017年に日本で公開されたディズニーのアニメ映画。全世界の興行収入が6億9,000万ドル超、日本でも51億円超の大ヒットを記録した作品である。2024年12月6日(金) には続編となる『モアナと伝説の海2』、実写2026年7月には実写版が米国で公開される予定となっている。
ネタバレ注意 以下の内容は、映画『モアナと伝説の海』の内容に関するネタバレを含みます。 『モアナと伝説の海』ネタバレ解説 『モアナと伝説の海』の舞台は?『モアナと伝説の海』は、他の多くのディズニープリンセスの作品と同じく架空の世界を舞台にしている。しかし、本作には明確なモデルが存在しており、舞台はポリネシア諸島とされている。太平洋のアメリカ大陸とオーストラリアの間に位置するポリネシア諸島には、現在のハワイやニュージーランド、イースター島、タヒチなどが含まれる。
ポリネシアには開拓の歴史があったが、フィジー、サモア、トンガを見つけた後、古代ポリネシア人達は数百年から1000年ほど開拓をやめた時期があったとされている。つまり、“海に出ないポリネシアンがもう一度海に出る話”を描いた『モアナと伝説の海』は、紀元前950年ごろから紀元1世紀頃が舞台になっていると考えられる。
キャラ&キャストにも注目海を目指すモアナは村長の父の跡を継いで次の首長になることが決まっている。ポリネシアには昔から女性が首長になる例があり、特に有名なのはハワイ王国のリリウオカラニだ。ハワイ王国を建国したカメハメハ大王が初代国王で、最後の王がリリウオカラニだった。
『モアナと伝説の海』で主人公モアナの英語版の声優を担当したアウリイ・クラヴァーリョは、ハワイ先住民の血を引いている。アウリイ・クラヴァーリョは、入学に際してハワイ先住民の血を引いていることが求められる名門カメハメハ・スクールを卒業している。日本語吹き替えではモアナの声は沖縄出身の屋比久知奈が担当しており、共にオーディションでモアナ役に抜擢されている。
半神半人マウイの声を当てたドウェイン・ジョンソンは、祖父にサモア人レスラーのハイ・チーフを持つ。サモア諸島もポリネシアの一部であり、マウイはサモアやタヒチ、ハワイなど様々な神話で語り継がれている半神の英雄だ。日本語版ではマウイの声は歌舞伎役者の尾上松也が担当している。
マウイの正体映画『モアナと伝説の海』では、モアナが暮らすモトゥヌイで魚や作物が獲れなくなってしまい、モアナは祖母タラから女神テ・フィティの心(緑の石)をテ・フィティに返しに行くように言われる。旅の中でマウイを見つけたモアナは、マウイと喧嘩しながらもカニのタマトアから「神の釣り針」を取り戻すという条件付きでテ・フィティに心を返すための旅に出る。
マウイは神の釣り針によって自在に変身する能力を持っていたが、1000年前にテ・フィティの心を盗んだ際に、溶岩の悪魔テ・カァに倒され神の釣り針を失くしてしまっていた。マウイはモアナの協力のもと神の釣り針を取り戻すが、うまく変身することができなくなってしまっていた。
そして、マウイは自分が海に捨てられた人間の子どもであり、神に拾われて釣り針を与えられてから半神半人になったことを明かす。そして、生命を生み出すことができるテ・フィティの心を盗んだのは、人間に感謝されるためだった。マウイは人間に捨てられたという過去から、人間に感謝され、価値があると思われることに固執するようになっていたのだ。
ポリネシアの神話では、マウイは神と人間の間に生まれた半神のトリックスターとして知られる。トリックスターとはイタズラをする神様で、ギリシャ神話では神から火を盗んで人類に与えたプロメテウスなどが挙げられる。マウイも神話では人々に火をもたらしたとされている(ハワイ神話では鳥から火の起こし方を教わり、マオリ神話では先祖から火を盗んだ)。
『モアナと伝説の海』では、マウイには様々なポリネシア神話の要素が取り入れられている。マウイが釣り針を使うのも言い伝えの一部である。様々な島の文化で語り継がれるマウイの功績は、歌やタトゥーの中で表現されている。
『モアナと伝説の海』ラストをネタバレ解説 モアナのアイデンティティ映画『モアナと伝説の海』のラストでは、テ・フィティの島の島を目指すモアナとマウイの前にテ・カァが現れ、マウイの神の釣り針が壊れかけてしまう。釣り針を失って人々から感謝されなくなることを恐れるマウイは飛び去ってしまうが、エイに転生した祖母のタラに勇気づけられたモアナは、もう一度一人でテ・カァを乗り越えようとする。
ここで流れる曲は、屋比久知奈演じるモアナと夏木マリ演じるタラが歌う「どこまでも ~How Far I’ll Go~」。モアナは自分が海から選ばれたと思っていたが、モアナが海に選ばれたのは先祖が海を愛した旅人だったからだった。それがモアナをモアナたらしめるアイデンティティであることに気づいたのだ。
モアナは、大地から動けないテ・カァの修正を利用してテ・カァの小島を通り抜けることに成功したが、その背後から追撃を受ける。このピンチに助けに来たのはマウイだった。ここでモアナがかけた「ありがとう」という言葉は、マウイがずっと欲していたものだ。
そしてマウイは神の釣り針と引き換えにテ・カァを止めることに成功する。ちなみにこの最後のテ・カァとの戦いのシーンは、当初の脚本ではマウイを軸としたものになるよ予定だったが、モアナを主人公として際立たせるために変更されたという。
テ・カァの正体そしてモアナは心をテ・カァに渡すため、海を割る。この描写は『聖書』のモーセがイスラエルの人々をエジプトから逃すために海を割った「出エジプト記」のストーリーを想起させる。だが、モアナは敵から逃げるためではなく、テ・カァと向き合うために開いた道を行く。
先ほど自らのアイデンティティを確立したモアナはテ・カァにも「本当の自分」になるよう求め、テ・フィティの心を返すと、テ・カァは緑に覆われた女神の姿に変わり、島に緑豊かな自然をもたらした。釣り針をなくしたマウイも釣り針がなくても自分は自分であることを認めるのだった。
マウイは心を盗んだことをテ・フィティに謝罪すると、テ・フィティはマウイに新しい神の釣り針を、モアナに船を与えて島へと姿を変えた。マウイは自分のタトゥーに航海するモアナを加えて、タカの姿で飛び去っていった。
『モアナと伝説の海』では、マウイのタトゥーが象徴的に描かれる。実は「タトゥー(Tatoo)」の語源はタヒチやサモアで、「刺青」を意味する「タタウ(Tatau)」からきている。ポリネシアの神話では、最初のタトゥーはタアロア(カナロア)という神様に彫られたもので、その二人の息子マタマタとツライポが人間にタトゥーを伝えたとされている。元来タトゥーは神のものだったということだ。
ラストで流れる曲は?故郷のモトゥヌイに帰ったモアナは両親とブタのプアらと再会。海から黄色とピンクの法螺貝を贈られ、これを先祖の石の上に置く。先祖の石はそこに留まってきた部族の歴史だったが、法螺貝は海の象徴。そして、形状的にはその上に石を置くことはできない。モアナ達は、自分の代を区切りとして再び海に出ることを決めたのだ。
モアナ達が海に出る時に歌う曲は「もっと遠くへ(フィナーレ)」。モアナが洞窟で先祖の歴史を知った時にも流れた曲だ。
『モアナと伝説の海』のエンドソングは、日本語版では加藤ミリヤが歌う「どこまでも~How Far I’ll Go~」。英語版ではアレッシア・カーラが歌うバージョンの「How Far I’ll Go」になっている。
ポストクレジットシーンでは巨大なカニのタマトアが登場。ひっくり返ったまま動けなくなっており、「俺がセバスチャンでお姫様の世話をしてる赤いカニなら助けてくれるんだろ?」と悪態をついている。セバスチャンはディズニーの『リトルマーメイド』に登場する主人公アリエルのお目付け役のカニだ。タマトアは、同じカニでも人気キャラになれそうにないことを嘆いているのである。
ちなみにこのタマトアのセリフは、英語版では「俺がの名前がセバスチャンで、クールなジャマイカのアクセントがあったら助けてくれるんだろ?」となっている。日本語ではジャマイカアクセントが消えているため、「お姫様の世話をしてる赤いカニ」という直接的な表現が用いられたのだろう。
映画『モアナと伝説の海』ネタバレ感想 『モアナ』への評価と批判映画『モアナと伝説の海』は、ポリネシア文化をベースにしたこれまでにないディズニープリンセスを紹介したという意味で高く評価されている作品だ。筆者の知り合いの範囲でも、若いハワイの人々からは好意的に受け止められている(主人公モアナをハワイ出身のアウリイ・クラヴァーリョが演じたことの影響も大きいだろう)。
一方で、ポリネシアンの著名人からは、特にマウイの描き方をめぐって批判も起きている。マウイは様々な神話に登場する著名なキャラクターであるだけに、主人公のモアナの色を消さないようにという狙いもあってか、マウイにはコミックリリーフ的な役割が与えられた。
マウイの体型についても、ポリネシアンに対する偏見を助長するものだとして批判する声がある。また、本来は神聖な存在であることを背景とした抗議によって、中止になったグッズ展開もある。
モアナの暮らす文化圏は架空の場所ということになってはいるが、ポリネシアの島々は千数百年後には白人諸国によって近代化を迫られることになる。海を渡って“新世界”を開拓する別の民族によって吸収されていくのである。
『モアナと伝説の海』は、族長の娘である主人公が旅に出て、宝物をあるべき場所に返すという典型的な物語である一方で、開拓者精神を賛美する作品でもある。行き着く先が植民地主義と結びつく危うさを持つかどうかは、続編『モアナと伝説の海2』の内容に委ねられることになるだろう。
続編はどうなる?留意しておきたいのは、『モアナと伝説の海』が公開された2016年11月という時期は、大統領選でヒラリー・クリントンを破ってドナルド・トランプが次期大統領に選ばれたタイミングだということだ。
筆者はこの時期にカリフォルニアに住んでいたが、アメリカ一国主義を掲げるトランプの出馬が警戒されており、ハリウッドでは外の世界に目を向けようという内容の作品が増えた時期でもある。だが、先のマウイの商品化も含め、そうしたアメリカ合衆国の理論に回収されてしまうこと自体が、『モアナと伝説の海』とポリネシア文化の哀しいところだ。
『モアナと伝説の海』の作品自体は、主人公モアナの躍動感にあふれると、広大な海を舞台にしたゲーム『ゼルダの伝説 風のタクト』のような爽快感によって、見ていて楽しい作品に仕上がっていた。登場するキャラクター達もジョン・マスカー共同監督がジブリに影響を受けていると明かしている通り、日本に馴染みのある雰囲気も漂っている。
『モアナと伝説の海』の続編にも期待がかかるが、奇しくも再びトランプが大統領に選ばれたタイミングで11月27日に米公開となる。『モアナと伝説の海2』の予告編ではモアナがラストで登場した法螺貝を吹く姿も見られたが、続編ではどんな物語が描かれるのだろうか。公開を楽しみに待とう。
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