歌声分析 Vol.4:TOMOO 透明感と芯が両立する無二の個性 ”温度”を宿すボーカルが聴き手に響く理由を説く
TOMOOの名が広く知られるきっかけとなったのが、Spotifyの『RADAR:Early Noise 2023』への選出だ。楽曲が多数のプレイリストにピックアップされ、中でも「Super Ball」は音楽配信サブスクリプションサービスを中心にロングヒットを記録した。その後、日常の感情の機微をすくい取る歌詞、柔らかさの奥に芯の強さを持つ歌声、派手なアレンジに頼らないサウンドとメロディの説得力が評価され、着実にファン層を拡大していったのである。楽曲単位で注目を集めるケースは少なくないが、TOMOOの場合、その評価は常に“声”へと回収されていく点が興味深い。サウンドやメロディの良さに加え、歌声そのものが楽曲の説得力を底上げしているからだろう。
TOMOO - Ginger (Live at 日本武道館 , 2025)TOMOOの歌声の最大の特徴は、太い芯と透明感という、一見すると相反する要素が同居している点にある。強く響かせても決して濁らず、繊細に歌っても輪郭が曖昧にならない。光量と質量を同等のポテンシャルで鳴らしていると言える。明るく前に抜ける声でありながら、薄くならず、しっかりとした重心が残る。この性質は、どの楽曲にも共通するTOMOOの歌声の無二の個性である。 その特性が最もわかりやすく提示されているのが「Super Ball」だ。軽快さと洒脱さを併せ持つシティポップチューンだが、歌唱は決して軽くない。中低音をメインに構成されたAメロでは、母音を早めに切り上げるのではなく、語尾を空気に溶かすように抜くことで丸みを出している。注目すべきは、後半の展開部である〈君の強さは〉から〈鉄壁のシェイプじゃないとこにだって生きてる〉までのブロックだ。刻むような譜割りの中で、〈生きてる〉の“き”の母音に強いアタックを与えつつ自然に抜いていく。この高度なリズム処理が、曲の大きなフックとして機能している。後半に向かって声量を上げ、楽曲全体にドラマ性を加えていく構成も含め、「Super Ball」は声の質量と軽快さ、その二面性を端的に示す1曲である。