. 2』ラストの意味は? 新たな感情の共通点、続編の可能性を考察 | VG (バゴプラ)
2』ラストの意味は? 新たな感情の共通点、続編の可能性を考察 | VG (バゴプラ)
2』ラストの意味は? 新たな感情の共通点、続編の可能性を考察 | VG (バゴプラ)

Без кейворда

©️Pixar Animation Studios

映画『インサイド・ヘッド2』公開

ディズニー・ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』が2024年8月1日(木) より日本の劇場でも公開された。『インサイド・ヘッド2』は、2015年に公開された映画『インサイド・ヘッド』の続編で、約9年ぶりのシリーズの新作となる。

『インサイド・ヘッド2』は、ディズニー・ピクサーとしては「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」「カーズ」といった人気シリーズに続く6つ目のシリーズ作品になる。今回は、この夏注目の『インサイド・ヘッド2』のラストについて、ネタバレありで解説しつつ、感想を書いていこう。なお、以下の内容は本編のネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意 以下の内容は、映画『インサイド・ヘッド2』の内容および結末に関するネタバレを含みます。 『インサイド・ヘッド2』ラストのネタバレ解説&感想 新たな4つの感情

映画『インサイド・ヘッド2』は、前作で11歳だったライリーが13歳になって登場。ライリーは高校進学を目前に控え、名門高校ホッケーチーム・ファイヤーホークスのホッケーキャンプに誘われることになる。サンフランシスコでは、小学校が5年制、中学校が3年制、高校が4年制なので、ライリーは14歳から高校に進学することになる。

同じく同級生のブリーとグレイスと共にホッケーキャンプに挑んだライリーだったが、道中で二人が別の高校へ進学する予定であることを聞かされる。失意の中、キャプではライリーは憧れのエースプレイヤー、ヴァルら高校生達の付き合いを優先し、憧れのファイヤーホークスに入るために奮闘する——。

というのがライリー側の物語だが、もちろん本作『インサイド・ヘッド2』ではライリーの頭の中でヨロコビをはじめとする感情達が奮闘するのがメインストーリーになる。思春期を迎えたライリーの感情には、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリというこれまでのメンバーに、シンパイイイナーハズカシダリィという4人の感情が加わる。

前作『インサイド・ヘッド』以降、ヨロコビがライリーの感情をリードしていたようで、ライリーには「私は善い人」という“自分らしさ”が生まれていた。ところが『インサイド・ヘッド2』では、シンパイがライリーの感情の主導権を握ることになる。ヨロコビはライリーにキャンプを楽しんで欲しいと考えていたが、シンパイはチームに入団するために策を練らなければならないと考えており、この相違によって旧感情チームと新感情チームの間に溝が生まれることになる。

「複雑な感情」の共通点とは

『インサイド・ヘッド2』で興味深かったのは、ライリーが思春期に入って生まれた感情が「複雑な感情」と表現されていたことだ。ヨロコビやイカリ、カナシミといったこれまでの感情は「単純な感情」だったということになる。

新しい感情のシンパイ(Anxiety)は主に将来に対する不安イイナー(Envy)は誰かに対する嫉妬ハズカシ(Embarrassment)は視線に対する恥ずかしさダリィ(Ennui)は何かをすることへの倦怠感を代表している。そして、『インサイド・ヘッド2』では、これらの感情達は他者との関係の中で活発な動きを見せることになる。

例えば、シンパイが懸念する多くのシチュエーションは「孤独になること」だ。イイナーは他者への視線であり、ハズカシは他者からの視線を気にする感情だ。舞台がキャンプというアクティブな場所であることもあり、ダリィはあまり登場しないが、やはり最大の活躍の場は先輩から好きなバンドを馬鹿にされた時に返答が“ダルく”なって皮肉を言う場面だった。

綺麗な景色を見て「ウレシイ」、走っていたらコケて「カナシイ」など、自分だけでも完結するような感情ではなく、他者との関係の中で生まれるのが今回登場した新しい感情なのだ。また、「チームに入るために点を決める」「孤立しないために相手に合わせる」「相手を黙らせるために皮肉を言う」など、新しい感情が外部にある目的のために行動を起こすきっかけとなっていたことも印象的だった。

ライリー高校生チームのキャンプに参加して、友達と楽しく過ごしているだけではダメだという現実に直面する。思いのままに感情を出していてはチームの中でやっていくことはできない。『インサイド・ヘッド2』では、ウレシイたちは司令部を追放され、「抑圧された感情」となってしまう。一方でそれは、ライリーの成長のためのステップでもあったように思う。

想像力の戦い、Appleオマージュも

良い思い出で構成される「私は善い人」というライリーの自分らしさ=「本当のライリー」は、戦略的に生きようとするシンパイによって放棄されてしまった。ヨロコビ達はそれを取り戻して司令部へ戻ろうとするが、これがなかなかうまくいない。

道中で他のメンバーから「妄想に取り憑かれてる」と責められたヨロコビは、ついに前向きでいることの大変さを吐露する。おそらくこの大変さはライリー自身も抱えているもので、「私は善い人」という前提はプレッシャーにもなっていたはずだ。ヨロコビは、今のライリーにはシンパイが必要ということにも気づいていた。

そんなこともありながら、前作『インサイド・ヘッド』にも登場したイマジネーションランドにたどり着いたヨロコビたちは、枕の砦(Fort Pillowton)という建物へと入っていく。アメリカでは、枕やシーツ、掛け布団などで作った隠れ家を「Pillow fort」と呼び、子どもやティーンエイジャーがその中で遊ぶ文化がある。

『インサイドアウト2』では、シンパイが起こりうる悪い出来事を枕の砦の中のアニメーターたちに描かせ続けていた。次の日に控えたキャンプ最後の試合は実質メンバー入りを賭けたテストとされており、シンパイはライリーが眠れなくなるほどに多くの不安を想像させていたのである。

これに対抗したのはヨロコビで、シンパイのネガティブな想像力に対し、ヨロコビはポジティブな想像力でやり返す。アニメーターを巻き込んだ想像力の戦いが『インサイドアウト2』最大のバトルというのは面白いポイントだった。最終的にはアニメーターに休みをあげて帰らせるという終わらせ方も、自由度の高い働き方で知られるピクサーアニメらしい展開だった。

ちなみにこのシーンで最後にアニメを描いていたキャラクターの一人が椅子を投げ、シンパイが映っていた大モニターを破壊するシーンは、AppleのCM「1984」のオマージュとされている。「1984」は1984年1月22日にスーパーボウルで放送された伝説のCMで、ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説『1984年』(1949) をオマージュし、初代Macintosh(Mac)の発売を告知する内容だった。このCMのラストでは、『インサイド・ヘッド2』と同じく女性が金槌をハンマー投げの要領で大モニターに投げつけて破壊している。

Apple創設者でマッキントッシュの開発を主導したスティーブ・ジョブズは、かつてピクサーの前身を買収してピクサーを設立している。このシーンは、亡きジョブズに捧げたオマージュだったのかもしれない。

感情をコントロールすること

『インサイド・ヘッド2』のクライマックスでは、司令部に戻る手段を失ったヨロコビが、喜びが減っていくことが成長なのではないかという考えに至る。大人になった私たちには身につまされる展開だ。確かに仕事に必死で心配事ばかりで、良いことがあっても「ぬか喜びしてはいけない」と自分を戒めたりして、そうして大人としての生活を維持しているようにも思う。

それでも、ヨロコビは「私は善い人」というライリーらしさを持って帰らなくてはならないという使命のために再び立ち上がる。シンパイがライリーにコーチのノートを盗み見させて「私はダメ」という新しいライリーの自分らしさ=「本当のライリー」を作ってしまっていたのだ。

イカリが呼んだポーチーのダイナマイトで放棄した無数の「嫌な思い出」ごと司令部に帰ってきたヨロコビたちだったが、ライリーは最悪の状況を迎えていた。「私はダメ」という思いに駆られたライリーは自分勝手なプレーを続け、親友だったグレイスに対する悪質なファウルでペナルティボックスへと入れられてしまった。

アイスホッケーでは、防具をつけ、スティックを持って激しく接触する競技の性格上、ペナルティは重く設定されている。ペナルティを課せられた場合、一時的にフィールドから退場しなければならず、ペナルティボックスと呼ばれる場所で待機する必要があるのだ。ちなみに2分の退場は退場処分の中で一番軽いものである。

ライリーはこのペナルティボックスでも「私はダメ」という思いに駆られ、パニック発作を起こしてしまう。シンパイも暴走して制御不能に。さながらスーパーヒーローのフラッシュのように残像で本体が目視できないほどの状態に陥ってしまう。到着したヨロコビがなんとかシンパイをコントールパネルから引き剥がし、台座の“本当のライリー”を「私は善い人」に挿げ替えるが、それでも状況は良くならない。

なぜなら、シンパイが作った「私はダメ」もヨロコビが作った「私は善い人」も、感情が主導して作り出した“自分らしさ”でしかなかったからだ。『インサイド・ヘッド2』の冒頭では、ヨロコビはライリーの嫌な思い出を捨て去り、良い思い出だけを残してライリーらしさを作り出していた。アイスホッケーの試合でペナルティボックスに入れられた記憶も捨ててしまっており、ライリーはそれによってキャンプでも同じ過ちを繰り返してしまったのかもしれない。

ヨロコビは、シンパイにかけた「ライリーらしさはあなたが決めるものじゃない」という言葉が、自分に対しても言えるものだということに気づいた。ヨロコビが「私は善い人」のライリーらしさを台座から外すと、良い思い出と嫌な思い出によって自然と作り出された本当のライリーらしさが形成されていく。そして、本当のライリーらしさとは、間違うこともあれば、強くあれることもある、助けが必要なこともあり、優しくあれることもある、さまざまな側面を持ったライリーだった。

ライリーにとって重要だったのは、ありのままのライリーであることだったが、ヨロコビは「ライリーのために」とポジティブな感情をベースにしたライリーらしさを作り出してしまっていた。人は大人になると「感情をコントロール」しなければならないが、ライリーは「感情にコントロール」されている状態になっていたのだ。

振り返れば、新しく登場した複雑な感情達は、「チームに入るためにはどうするか」「孤立しないためにどうするか」という理論の構成に繋がるものだった。楽しさや怒りに任せ、感情にコントロールされるばかりでは大人としてやっていくことは難しい。ヨロコビはそれを受け入れたのだろうし、ライリーはさまざまな感情と共に生きていくことになるのだろう。

落ち着きを取り戻したライリーは、ブリーとグレイスに謝罪。このシーンのライリーは、友達じゃなくなってもしょうがないけれど、許してもらえればと思っている、と複雑な心境もありのままに、正直に話すことができるようになっている。

ブリーとグレイスに許してもらったライリーは、再びアイスホッケーのフィールドへと飛び出していく。この時、ライリーはヨロコビを呼びだす。ライリーが主体的に自分の感情をコントロールできるようなった瞬間だ。ヨロコビはライリーに求められて登場し、昔のように純粋のホッケーを楽しむのだった。

ラストの意味は?

『インサイド・ヘッド2』のラストシーンでは、ライリーはファイヤーホークスのメンバー発表を待っている。時系列的には高校に入学した後のようで、周りにはヴァルたちがいるが、ブリーとグレイスとも連絡を取り合っているようだ。感情達の方も、前回カナシミと仲良くなったように、シンパイやイイナーらともうまくやっている。思い出に浸るナツカシだけはまだ出番を与えてもらえないようだが。

感情達は、ライリーには良いところも悪いところもあって、厄介だけど、ライリーの全てが好きだと受け入れている。そして、ファイヤーホークスの合否通知を受けたライリーは、笑顔を見せて『インサイド・ヘッド2』は幕をとじるのだった。合否の結果は明らかにならなかったが、おそらく合格したと見られる演出になっている。

エンドクレジットシーンでは、少し戻ってキャンプ直後のライリーと両親の会話が映し出される。キャンプはどうだったかと聞かれたライリーだったが、ダリィが発動して「良かったよ」の一言で済ませてしまう。すると母と父の頭の中で感情達の会議が始まるのだが、そこには前作で登場していなかった母と父、それぞれのシンパイも姿を見せている。

これが『インサイド・ヘッド2』唯一の矛盾で、制作陣も触れざるを得なかった点だろう。大人の階段を上る中で登場したシンパイら複雑な感情を、ライリーの母と父は前作の時点で持ち合わせていなかったのだ。だから、この場面では母のシンパイは他の感情から「久しぶり」と言われている。

両親はしばらく大きな心配事もなく暮らせていたということだろうか。あるいは、『インサイド・ヘッド』では会社の問題など、シンパイが登場する場面では両親の頭の中が映し出されていなかったと考えることもできるだろうか。いや、ちょっと無理はあるか。だが、両親のイイナーやハズカシについては、大人になって消えたとも考えられる。ライリーの中にも、いつか消えてしまう感情があるのかも……?

『インサイド・ヘッド2』ラスト感想&考察 感動あり学びありの傑作

映画『インサイド・ヘッド2』は、前作『インサイド・ヘッド』に続く傑作で、13歳のライリーの心の動きを通して、感情と理論の狭間を行き来しながら、自分の生き方、考え方について振り返させてくれるような作品だった。子どもも楽しめる作品でありながら、人の心の変化や成長について大人も学びながら感動できる良作だ。

9年経っての続編ということもあり、アニメーションも格段に進化していた。特に終盤のライリーを映し出したシーンは息を呑むほどの美麗さだった。声優陣も新旧キャストが共に見事な演技を見せており、映像と声が感情の機微が重視されるストーリーをしっかり後押ししていた。

ライリーが酸いも甘いも含めて人格を形成していくという教訓は、前作のカナシミを受け入れるというテーマからさらに一歩進んだものだった。11歳のライリーと13歳のライリーでこれだけ幅を作り出せるのだから、まだまだ続編は期待できそうだ。

考察:続編はどうなる?

アメリカでは、“ティーンエイジャー”という言葉は13歳から19歳までを指す。「11 (eleven)」と「12 (twelve)」の単語には「teen」という文字が入らないからである。つまり、『インサイド・ヘッド2』の13歳のライリーはティーンエイジャー1年目であり、まだまだティーンエイジャーの心の動きを描く余白は残されているのだ。

ちなみに、米国では『インサイド・ヘッド2』公開前には映画『私ときどきレッサーパンダ』(2022) と同じく作中で生理を扱うのではないかという予想もあった。実際には作中で言明されることはなかった。一方で、冒頭で感情が敏感になり母と衝突するシーンなどは、ライリーに生理がきているとも受け取れる演出になっている。

前作のDVDに収録され、ディズニープラスでも配信されている短編「ライリーの初デート?」(2015) では、訪問してきたライリーの男友達をボーイフレンドだと思い込んだ両親がドタバタ劇を繰り広げる。今後の作品ではライリーの恋愛も描かれるかもしれない。一方で、ライリーが現実の他人には恋愛感情を抱かないアロマンティックの可能性もあるので留意が必要だ。

また、ライリーがあまり感情にコントロールされなくなってくると、感情達が活躍する場所は減っていきそう。保守派が優勢な米国の最高裁判事を目指すというライリーの物語は今後も見たいが、様々な属性の子ども達とその感情を描くストーリーを展開することもできるだろう。

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社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。

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