第3話「柔らかい角」音を喰う蟲、無音を喰う蟲が引き起こす伝奇。TVアニメ「蟲師」を深掘り!詳細あらすじと感想
ギンコ「その角──どんなふうに生えてきた?」
真火「耳を塞いでたんだ。去年の冬、母さんが死んでしまったから・・・。母さんがよくそうしてたから、思いだして真似してみたんだ。そしたら、額が盛り上がって角が生えてきた」
ギンコ「耳を塞いでた? どうしておまえの母さんは・・・」
真火「わからない。思いだせないんだ。母さんもオレと同じ角が生える病気で、耳を塞いでも音は防げなかったはず。あのとき、母さんは何か言って、弱り果ててしまった両手で、強くオレの耳を塞いだ。でも、あのとき何て言ったか、覚えてるはずなのに、いつも思い出そうとするのに、頭の中にもどんどん音が流れてきて聞き取れない」
真火の母親「母さん、音が消えたの。今度はピンと、何も聞こえなくなった。怖いの。あんなに恐ろしかった音がなつかしい」
絶えず流入してくる膨大な蟲のざわめきを聞き取ってしまい、衰弱していた母親。
彼女は亡くなる直前に「音が消えた」と言っていた。
ちょうどこの頃、母親は真火の両耳に手をあて塞いでいた。
これらのことからギンコは考える。真火の母親の身に、いったい何が起きたのだろうか? と。そこに「阿」を追い出すヒントがあるのではないか? と。
ギンコ「何も聞こえなくなるとはどういうことだ。なのに一体、何から耳を塞ぎたかったんだ?」
「阿」の弱点は──?
ギンコ「静かだ。だが、決して無音じゃない。耳をそばだてれば、雪の積もるのにも音はある。周りに音がなくなれば、自分の心臓の音が聞こえてくる。だが、あらゆる音を拾うとなると、ひとつひとつの音はもう聞こえなくなるのか。それが極限まで高まれば──もしや! もしやそれが、”音が消える”という事か?」
だとすればギンコが言った「とんでもない音の洪水が極限までに高まると音が消える」も、本当にあることだろうか? それとも、ここに限っては作者の創作だろうか? 分からなくなる。このギンコの思い付きは、まるで光の三原色のようだ。赤、青、黄色の光の三原色を混ぜると、そこは無色になる。同様に音も極限まで混ぜられると、無音になる──?
ギンコ「真火、両手を貸してくれ。おまえの母親のようにな」
真火「──こう?」
角が音を集めるのと、両手で耳を塞ぐのは同じ目的
真火の母親が聴いていたのは、懐かしい溶岩の音
真火の母親「真火、聞こえる? これが母さんの音だよ。むかし、母さん見たんだよ。父さんとねぇ、火を噴く山。この音は、あの溶岩の音にそっくり。だから、母さん消えそうなくらい不安なとき、この音を聞くの。何でも溶かす溶岩みたいに、不安も辛さもみんな、溶かしこんでしまえる気がするの。ほら、おまえもやってごらん。おまえの中にも溶岩が」
耳を塞ぐ行為がじつは音を聞くための手段だったというのが、なんとも逆説的で面白い。
ギンコ「世界は静かだろう真火。慣れるまでは落ちつかないだろうし、絶たれた世界を恋しく思う事もあるだろう。だが、それも春になって、賑やかになれば忘れる」
真火「オレ、忘れない。ずっと聞いてたんだ、母さんと同じ音。ぞっとするくらい、きれいな音──」
pick up/なぜ額の角は柔らかい?
今回の物語のタイトルは「柔らかい角」。作者が描きたかったのは、蟲が引き起こす奇病ではなく、親子の情や絆だったとはっきり分かる。
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