「ルパンの車」が現代によみがえらない理由。新型フィアット・500が物語る「安くて小さい国民車」の限界
500eの販売が鈍ると、まず揺れたのはトリノのミラフィオリ工場だった。欧州全体でEV需要が減速した2024年、500eの注文は明らかに細り、生産は何度も止まった。ラインはフルで回せず、稼働と停止を繰り返す。従業員には短時間勤務や一時帰休が適用され、ミラフィオリの先行きに対する不安が広がった。労組は、生産の不安定さと雇用への影響について懸念を公に示し、工場の将来像をステランティスに問い続ける。500eの失速は、そのまま工場の不安定さとして可視化されていった。
ここで企業が直面したのは、ごくシンプルな算数だ。EV専用モデルだけでは、ミラフィオリを安定して回せない。500eは象徴性こそ高いが、台数のベースにはならない。EVを諦めるかどうかという話ではなく、「この工場を何で食わせるのか」という、ごく実務的な問いが先に来る。
そこでフィアットが引っ張り出したのが、1.0Lの3気筒マイルドハイブリッドだった。これは新たなイノベーションといったものはない。むしろ逆で、2020年以降の旧500やパンダにすでに載っていた、FireFlyシリーズと呼ばれる現行の小排気量ユニットの延長線上にある。排気量1.0L、3気筒の自然吸気エンジンに12Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、出力はおおよそ70馬力級。
その載せ替え先が、EV専用で作ったはずの500eのボディというところが、この話の皮肉な点になる。本来はバッテリーを床に敷き詰める前提で設計されたパッケージに、再びエンジンとトランスミッションを収める。
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