上野のホテルの怖い話
荷物を置いて、シングルベッドに横になると、ガタンバタンと音がした。 隣の部屋の音らしい。ずいぶん壁も薄そうだ。 僕は地元の家で留守番している彼女に、到着の電話をかけた。 「ついたよ」 「ホテルどうだった?」 「値段相応な感じ」 しばらくとりとめのない会話をしていると、ふいに彼女が黙った。 「どうした?」 「・・・誰か部屋にいる?」 「?・・・いるわけないだろ」 「ふーん」 「なんで?」 「女の人の声がした気がした」 「怖いこというなよ。ここ壁が薄いから周りの音じゃないか」 「とかいって、昔の知り合いでも連れ込んでるんじゃないでしょうね」 「そんなモテたら苦労しないよ」 他愛ない会話にだいぶ癒されたところで、「おやすみ」を言って、電話を切った。 彼女との電話を終え、部屋に静寂が戻ってくると、ふいに寂しさがこみ上げてきた。 押しつぶされそうな孤独感。 この世界でたった1人きりのような気分だった。 なんで急にそんな気持ちになったのだろう? 自分でも説明のしようがない。 今まで感じたことがない気持ちだった。
その夜は妙に寝苦しかった。 枕が変わると寝れなくなるタイプの人間でもないのに、身体がモゾモゾして違和感があった。 スマホでSNSでも見ようと思って、ふと気がついた。 音声メモアプリが起動している。 仕事で重要な打ち合わせがあった時に録音用として使っているアプリだ。 操作が簡単な反面、ボタンが当たって勝手に録音されてたりすることがある。 録音ファイルをタップすると、さきほどの彼女との電話が録音されていた。 なんとなく録音を聞いていたら、ふいに彼女でも僕でもない人の囁き声のようなものが聞こえた気がした。 『誰か部屋にいる?』 彼女が言っていたのはこれか・・・。 僕は音量を上げて、再度、音声を確認してみた。 どうしてそうしようと思ったのかはわからない。 ほぼマックスまで音を上げると声が聞き取れた。 女性の声のようだ。 その内容に、僕は耳を疑った。
「一緒に死の。一緒に死の。一緒に死の・・・」 ひたすら、そのフレーズをずっと繰り返している。 背筋に寒気が走った。 慌てて録音ファイルを削除しようとした。 削除の間際に一際大きな声で「一緒に死のう!」と声がした。 いや、最後の声は録音アプリからではない。 ・・・部屋の中からした。間違いなく。
その後は特に変わったことはなかった。 地元に戻ってから、こういう話に詳しい友人に話してみたら、結婚式という陽の気に満ちた華やかな場所に行ったから霊が去ったのだろうということだった。 もしお葬式などに行っていたら、霊を持ち帰っていたかもしれないそうだ。
なつまるをフォローする関連記事
ひとり暮らしの怖い話 #129 3日雨が続くと幽霊が・・・#225 【怖い話】持ち物検査 【怖い話】ベランダ 【怖い話】将門の首塚 【怖い話】【心霊】葬列 #206 プロフィール3分で読める怖い話を連載中。 Xで更新情報をお伝えします。 時々、YouTubeも更新します。
なつまるをフォローする サイト内検索 本日のおすすめ(ランダム投稿検索) 人気記事 ハウステンボスの怖い話 【怪談】草津温泉の怖い話 2018.06.26 2025.08.09 金沢のホテルの怖い話 盛岡のホテルの怖い話 【怖い話】山奥のサファリパーク 羽田空港で体験した怖い話 #256 最新記事- 【怖い話】山奥のサファリパーク
- 【怖い話】武蔵小杉のタワーマンション
- 【怖い話】「なんか買って」
- 【怖い話】行列ができる心霊スポット
- 猫の怖い話