井上順『お世話になりました』貸してあげるの輪廻
実家を出て、下宿をして、この下宿での滞在を終えて、主人公はどこかへ、明日の朝に発っていく。新しい生き方といえるのがなんなのかは時代や社会、環境、文化によってまるで違うだろう。頻繁に引っ越したり環境を積極的に変えたりするのがきらいな人もいる。そういう人は土地に根をはるだろう。外からふらりとやってくる、『お世話になりました』の主人公のような根無し草に親切するのは、そういう、地域に根差した人間なのか? 案外、自分自身も根無し草だった経験を持つからこそ、その種の人間が感じる親切のありがたみを知っていて、主人公のような風来坊にやさしくできる……という因果なのかもしれない。やっぱり、“貸す”はほとんど「あげる」なんだな。……なんて言ったら、完全な返却の履行を前提とした「貸す」の語義が崩落しかねない。それはそれとして、ほどほどに奉仕し合って生きていきたい。
つじあやのが演奏する『お世話になりました』。ウクレレとまっすぐな歌が素朴。エンディングの口笛が可愛い。 勝手ながら激しい個性的なカバーを想像したけど、オリジナルへの愛と高い解像度を感じる直球かつ丁寧な大槻ケンヂの『お世話になりました』。『お世話になりました』を収録した大槻ケンヂのアルバム『I STAND HERE FOR YOU』(オリジナル発売年:1995)
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