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久保田早紀 異邦人 -シルクロードのテーマ- 淡く儚い絹の白

古楽器の軽い響きがなんともいえず妙。チェンバロでしょうか。弦楽器のアレンジも勇壮。“あなたにとってわたしただの通りすがり”を歌うあたりの平静さはつまらなそうに見えるほどです。感情を内に仕舞って見えるのは気のせいでしょうか。曲想のおかげもあるかもしれません。それにしても久保田早紀はかなり平然とふるまう歌手に思えます。肝がすわっているといいますか、心がここにいないみたいにさえ思えます。それがこの曲想と相まっています。曲によって歌唱のキャラクターを演じ分けるのでしょうか。

曲の名義など

作詞・作曲:久保田早紀。久保田早紀のシングル、アルバム『夢がたり』(1979)に収録。編曲:萩田光雄。本文中に書きますが、アレンジメント含めて乗数倍で素晴らしい。

『異邦人』を聴く(アルバム『夢がたり』収録)

アンデスの高地かしらと思わせる笛の音もきこえます。フルートじゃないよね? たて笛? ケーナとかでしょうか。

音楽面で気になるポイント

異邦人のイントロの譜例。

ドファラ♭レ♭ ドーシーラ♭ー、ドファラ♭レ♭ ドッド、シッシ、ラ♭ー、ドファラ♭レ♭……

このスケールは……私の手持ちの資料で見てみて近いのは「ハンガリアン・マイナー・スケール」でしょうか。ハンガリー? そう言ってみれば猛烈にそんな気がしてきます。シルクロードがハンガリーを通っている? ちょっと外れているような気もしますがどうでしょう。無関係ではないようにも思えます。

歌詞の儚さ

“子供たちが空に向かい両手をひろげ 鳥や雲や夢までもつかもうとしている その姿はきのうまでの何も知らない私 あなたにこの指が届くと信じていた”(『異邦人 -シルクロードのテーマ-』より、作詞・作曲:久保田早紀)

無垢な子供の姿まではいいとして、それを昨日までの自分に重ねます。今日の自分と何がちがうというのでしょう。無知だった? 昨日と今日のあいだで、なにが起こったのか。信じていた希望がくだける事実を知るのでしょうか。それは、触れることのできたはずのあなたが遠ざかった事? その希望はそもそも幻想だったのか、それとも、昨日までは確かに存在した事実だったのか。

“空と大地がふれあう彼方 過去からの旅人を呼んでる道 あなたにとって私 ただの通りすがり ちょっとふり向いてみただけの異邦人”(『異邦人 -シルクロードのテーマ-』より、作詞・作曲:久保田早紀)

“市場へ行く人の波に身体を預け 石だたみの街角をゆらゆらとさまよう 祈りの声 ひづめの音 歌うようなざわめき 私を置き去りに過ぎてゆく白い朝”(『異邦人 -シルクロードのテーマ-』より、作詞・作曲:久保田早紀)

祈りの声 ひづめの音 歌うようなざわめきと名詞をたたみかけ、聴き手の注意を引きます。祈りの声は私に異なる宗教の存在を思わせます。決して私にとって馴染みのある宗教のものではない……想像させます。ひづめの音は石畳の上で鳴るものでしょうか。土の上を四つ足が行くのとは明らかに違う、乾いた音なのでしょう。カスタネット風の音色はこの歌詞の表現であると想像します。

“時間旅行が 心の傷を なぜかしら埋めてゆく不思議な道 サヨナラだけの手紙 迷い続けて書き あとは哀しみをもて余す異邦人”(『異邦人 -シルクロードのテーマ-』より、作詞・作曲:久保田早紀)

後記

異邦人 ポルトガル録音ヴァージョン(アルバム『サウダーデ』収録、1980年)

ご笑覧ください 拙演

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