ダ・ヴィンチ作『最後の晩餐』の意味や裏切り者などの人物をわかりやすく解説
影とは何であり、光とは何か。影とは光の欠如のことであり、光線に対向した緻密な物体による光の遮断にすぎない。影は光の性質を持ち、明るさは光の性質を持つ。一方は隠し、他方は露わにする。常に両者は、物体と結びついて一緒におり、影は光よりも強力である。というのは、影は、物体から完全に光を遮断してそれを奪い去るが、光は物体から、つまり緻密な物体から完全に影を追い払うことができないからである。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ画家の目指すべき第一の目標は、平らな表面が立体的に見え、かつその平面から浮き出して見えることである。この技において他の人より優っている画家ほど、大きな称賛に値する。このような研究、いや、このような科学の王冠と称すべきものは、光と影、つまり明暗から生まれる。それゆえ、影を嫌う者は、高貴な才能を持つ人々のもとで得られる芸術の栄光を嫌う者であり、無知な俗衆のもとで栄光を手に入れる者である。このような人々は、絵画に対して色の美しさしか求めず、平らなものを立体的に見せるという驚異的な美を完全に忘れ去っているのだ。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』はどこにある?美術館?
有名な 美術館 に所蔵されているのかというとそうではない。イタリアのミラノにある サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院 にある。建物自体が“世界遺産”に登録されている。
『最後の晩餐』の来歴言い伝えでは、この修道院の院長は、レオナルドに作品を完成させるようにうるさく催促したという。時折レオナルドが、半日もぼんやりともの想いにふけっているのを見て異様に思い、菜園を耕す日雇い人夫が働くように絵筆を休めず仕事をするよう要求した。これでも足りずに院長は公爵に苦情を訴え、あれこれ悪く言い立てたので、やむなく公爵はレオナルドに人を遣って、物腰も穏やかに、すべては修道院長の執拗な催促のためと言い訳しながら、言葉巧みに仕事を催促した。
レオナルドは、この君主が鋭い才知と思慮深さをもっていることを知っていたので、絵について(院長とは話したこともないようなことを)公爵とあれこれ語ってみたいと思った。そして絵画について大いに論じ、高い才能を持つ人は精神でもって創意ある着想を探し求めているので、仕事をしていない時ほど多く頭を使っていること、まず完全な観念が形づくられ、それから手が頭脳の内にすでに構想されたものを表現し描き出すということを理解させた。
そして描かねばならない顔がまだ二つ残っている、と付け加えた。一つはキリストの顔であるが、それを地上に見出すことができるとは思えないし、受肉した神のしるしであるあの美しさと天上的な優雅さを想像力によって描き出すことができるとも考えられない。もう一つ残っているのはユダの顔で、彼についてもあれこれ考えてみたが、奴のように多くの恩恵を受けた後で、残忍な心を抱いて、自分の主でありこの世の創造主である人を裏切ろうと決意した男の顔つきを想像するのは不可能と思える、ユダについては探してみるつもりだが、どうしてもうまく見つからない場合にはあのしつこくて無遠慮な修道院長の顔も使えないわけではない、と述べた。
これを聞いて公爵はけたたましく笑い出し、まったくそのとおりだと言った。すると当惑した哀れな院長は、もっぱら菜園の仕事を催促することに心をくだき、レオナルドにはかまわなくなった。こうして彼はユダの顔を見事に仕上げたが、それはまさに裏切りと極悪非道の権化のように見える。キリストの顔は、前述のごとく、未完成のまま残された。
芸術家列伝 ヴァザーリさて、『最後の晩餐』は、ダ・ヴィンチが完成させた数少ない作品の1つ。この大作がきっかでダ・ヴィンチの名前はヨーロッパ中に知れ渡ることに。同時代人のサッバ・ダ・カスティリオーネは、自身の著書『追想記』の中で 「世界中に知れ渡っている誠に神々しい作品」 と呼んだ。
修復作業についてしかし、それほどの名作なのに1つ問題が発生している。何かというと、完成直後からカビや剥離が生じ劣化が進行したこと。壁に絵を描く場合、従来はフレスコ画という手法が取られていたが、ダ・ヴィンチは、テンペラと油彩を混合させた新手法を実践。フレスコ画は英語の「フレッシュ」の言葉に近い意味合いで、漆喰が乾かない内に描き上げる必要があり、長考して描くタイプのダ・ヴィンチには不向きだった。そこでフレスコ画ではなく、独自の手法に頼ったがこれが裏目に出て失敗。ヴァザーリは、1556年に『最後の晩餐』を見た際、 「あまりひどく侵蝕されていて、広がったしみの他、何も見えない」 と記録している。当時の修復師がカビで覆われた作品の修復を試みたが、技術の精度が低く、逆にオリジナル性が失われる結果となった。
その後、国家事業的に、 1978年から1999年まで20年以上、最新技術による修復作業 が続けられ、オリジナルの完全再現とは行かないものの、一定の復元に成功した。修復費用は何と約17億円。
Leonardo3 Museum | Leonardo3 Il Mondo di Leonardo da Vinci 『最後の晩餐』完全復元予想1943年、 第二次世界大戦中の爆撃による被害 を受けている。サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の天井と片側の壁が粉砕されたが、『最後の晩餐』のある壁はかろうじて生き残った。天井が再建されるまでの間、雨ざらしや風雪にも耐え、今日私たちがこの絵を目の当たりにすることは、ほとんど奇跡と言ってもいい出来事なのである。
『最後の晩餐』は何を話している? 物語と会話
イエスがこれらのことを 言 われた 後 、その 心 が 騒 ぎ、おごそかに 言 われた、「よくよくあなたがたに 言 っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを 裏切 ろうとしている」
弟子 たちはだれのことを 言 われたのか 察 しかねて、 互 に 顔 を 見合 わせた。
ヨハネによる福音書『最後の晩餐』はなぜ有名なのか
まず第一に、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、他のどの画家にも表現できなかった “感情” にフォーカスされている。
ダ・ヴィンチの “感情表現の集大成” がこの『最後の晩餐』なのである。
心の情動は、人の顔をさまざまな仕方で動かす。それによってある者は笑い、ある者は泣き、ある者は喜び、ある者は悲しみ、ある者は怒り、ある者は憐れみを示し、ある者は唖然とし、ある者は愚かさを、またある者は思索し瞑想する様を示す。このような情動には、顔だけでなく、手や体の動作も伴わせなければならない。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ人物像を描く場合には、その人物像が心で何を思っているかを、充分に表現できるような身振りを取らせよ。さもないと、君の芸術は称賛に値しないだろう。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ人物像の動作が、その人物の心の中にあるはずの情動と一致していない時には、四肢はその人物の心の判断に従っていないわけで、したがって、その制作者の判断力も大したものでないことを示している。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ人物像の心の情動を表現する動作は、その心の動きに完全に即応しているように描き、その動作の内に大きな愛着心と熱意が表れていなければならない。さもないと、その人物像は一度ならず二度死んでいる、と言われるだろう。つまり、その人物は絵空事であるゆえに、一度死んでいるのであるが、それが心の動きも体の動きも示さない時に、二度目の死を迎えるのである。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ人物像の動作と姿勢が、その動作をする者の心の動作だけを表現し、それ以外のいかなるものも表現しないようにすることが望ましい。
絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ歴史家のブルクハルトが、 「この動揺に満ちた傑作」 と呼んだ所以である。
ドメニコ・ギルランダイオ 『最後の晩餐』 1482ドメニコ・ギルランダイオ 『最後の晩餐』 1476
レオナルド・ダ・ヴィンチ 『最後の晩餐』 1495-1498
ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、キリストが「この中に私を売った裏切り者がいる」と言った際の弟子たちの驚き・動揺の瞬間を描いたものであり、もし1人だけテーブル前にいるとすでに犯人が判明しているのと同様なので、劇的瞬間を表現することはできない。
同じテーマの『最後の晩餐』でも、ダ・ヴィンチは、明確に自分の描きたい意図を持って描いているのである。
一言で言うと、 主役の交代 。
ドメニコ・ギルランダイオ 『最後の晩餐』 1482
それは 山などの自然の描写 。
『最後の晩餐』完全復元予想 『最後の晩餐』 部分 レオナルド・ダ・ヴィンチ 筆者撮影
人間の知恵は、さまざまな創意工夫をして、いろいろな手段を尽くして一つの目的に応えようとする。だがそうは言っても、自然の産み出す発明ほど、美しく、たやすく、迅速なものを見出すことは断じてできない。自然の発明には何一つ欠けるものがなく、また余分なものがないのである。
解剖手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ自然は、まだ人に試されたことのない無数の原理に満ちあふれている。
パリ手稿I レオナルド・ダ・ヴィンチ匠、造物主、自然、必然、著者、設計者、発明者、作者、製作者
解剖手稿 レオナルドダ・ヴィンチ自然の師匠であり、その後見人である必然性。
解剖手稿 レオナルドダ・ヴィンチ自然は決してそれ自らの法則を破らない
パリ手稿C レオナルド・ダ・ヴィンチ自然は、奇跡を起こしたいと願う者どもに仕返しをするものらしい。
解剖手稿 レオナルドダ・ヴィンチダ・ヴィンチにとって自然とは、あらゆるものの師匠であり、法則性を持つ必然性。 それは、奇跡を象徴する神とは対極をなしている。
それは、 異教徒レオナルド・ダ・ヴィンチ 。
ある者はテーブルに両手を突いてキリストを見つめる。またある者は、口に含んだ食べ物を吹き出す。
フォースター手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチある者は出題者を見ようと前かがみになって、片手をかざして目に影を作る。ある者は、その前かがみになった者の後ろに身を引いて、自分の背後の壁と前かがみになった者の間で出題者を見る。
フォースター手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチこの文章がなぜ問題なのかというと、不適切な言葉遣いにある。ダ・ヴィンチは、「ここに裏切り者がいる」と言ったキリストのことを 「出題者」 であると言い放つ。これは「救世主」と敬うキリスト教の信者たちからすると、冒涜的で不敬極まりない表現にあたる。
このような文章からも、ダ・ヴィンチが『最後の晩餐』を通して伝えたかったことは、 単なるキリスト教の物語ではない ことは明白だ。
ダ・ヴィンチが『最後の晩餐』を通して、本当に伝えたかったこと。それは、無数に存在する生物たち、雷や虹やオーロラ、不思議な現象も法則をもって必然的に生成流転する 自然の偉大さ なのである。(ダ・ヴィンチ研究者の桜川Daヴィんちがダ・ヴィンチ思考的に主張する説であり、一般的には自然はそこまでクローズアップされていない)
それは 晩餐であれば夜のはずなので、外の景色は真っ暗か暗がり、少なくとも夕方の景色になっていなければ不自然である。
『最後の晩餐』に描かれた人物や静物
『最後の晩餐』とは、キリストが磔の刑になる前日の晩に、12人の弟子と行った夕食のことであり、新約聖書にその記述がある。テーブルの上には、料理が並べられてるが、 パンはキリストの身体 であり、 葡萄酒は多くの人のためにキリストが流すという契約の血 を表している。つまり、キリストが処刑されることで流す血は、人類の原罪の償いをすることを意味している。
『最後の晩餐』 ラヴェンナ 6世紀 モザイク壁画
酒を飲んでいた者は杯をその場に置き、顔を話し相手の方に向ける。もう1人は両手の指を組み合わせ、眉をひそめて仲間の方をふりかえる。別の男は両手を広げて掌を見せ、肩を耳まですくめて驚いた口元をする。また別の男は隣の男の耳元に話かけ、それを聞く男は、一方の手にナイフを持ち、他方の手にそのナイフで半分に切ったパンを持ったまま、振り向いてこれに耳を貸す。もう1人のナイフを持った男は、振り向きざまに、その手でテーブルの上の杯をひっくり返す。
フォースター手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチキリストは、裏切り者は「わたしがパン切れをワインに浸して与える者」と言ったため、同じパンに向かう手は、ユダが裏切り者であることを密かに暗示している。すでに解説したように、右手には銀貨30枚が入った袋を握りしめており、両手の仕草から裏切り者を特定することができるのである。
鑑賞するためには予約が必要
『最後の晩餐』を見るためには、基本的には 事前予約が必須 である。予め電話かネットから予約。また、 見学時は予約時間の30分以上前に到着し、引換券(バウチャー)と身分証明書としてパスポートを提示し、入場券を受け取る必要がある。
それは何かというと、 『最後の晩餐』の窓口で販売しているセット券。 『最後の晩餐』の鑑賞に加え、他の観光施設と組み合わせたチケットであり、当時私は38ユーロで購入して鑑賞をした(2019年のダ・ヴィンチ没後500年の際)。この場合は別枠のようで、時間関係なく見ることができた。奥の手の方法であり、現在もあるかは要確認だが、もし資金に余裕のある場合や他の観光名所も一緒に回りたい場合は、受付でこのようなセットチケットがないかを尋ねてみよう。
【『最後の晩餐』の鑑賞とセットとなっている観光場所】
★ 電話番号 : 02 – 8942 – 1146 受付 : 月曜 〜金曜 9:00 – 18:00 土曜は 14:00まで
★ 見学時間
- 火曜日 −土曜日 : 8:15 〜19:00 ※ 月曜日は定休日なので要注意!
- 日曜日 : 8:15 〜20:00
- 1/1、5/1、12/25は休館日
※ グループ最大25人まで。見学時間は15分限定。
★ 行き方(電車)
- 地下鉄1号線 コンチリアツィオーネ駅(Conciliazione) 下車徒歩5分
まとめ
ダ・ヴィンチは、 ① 解剖学 ② 遠近法 ③ 明暗法 の3つの科学的な手法を用い、絵画をハイレベルなアートへと昇華させた。
技術的に一流であることはもちろん、絵には哲学的なメッセージを込めていた。 ただ単にキリスト教の物語を伝えるために描いたのではなく、自分が強く感じる信念を巧みに人物や静物、空間に託して伝えようとしていた。
「モナリザ」は何がすごい?微笑みに込めた作者の謎と意味を解説 「モナ・リザ」を描いた人は誰か? 世界で最も有名な絵画として知られる『モナ・リザ』。その作者はルネサンスの万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチです。 ダ・ヴィン…
よかったらシェアしてね! URLをコピーしました! URLをコピーしました!- レオナルド・ダ・ヴィンチのかっこいい名言71選とその解説
- 【年表】レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯と日本史・世界史比較