行列式(det)の定義と現実的な求め方~計算の手順~
\begin 1 & 2 & 3 \\ 1 & 2 & 3\end,\begin 1 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 2\end, \begin 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1\end, \\ \begin 1 & 2 & 3 \\ 2 & 1 & 3\end, \begin 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2 \end, \begin 1 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 1\end
に対応しています。3次の行列式は覚えなくてもよいですが, サラスの方法 という暗記法があります。以下の記事を参照してください。
サラスの公式で3次の行列式を求める方法を図解 「サラスの公式」または「サラスの方法 (Sarrus' rule) 」とは,3次正方行列の行列式(det)を求める記憶術を指します。これがどういうものか,図解を交えて解説しましょう。 mathlandscape.com 三角行列の行列式三角行列の行列式
A = \begin a_ & a_ & \dots & a_ \\ & a_ & \dots & a_ \\ &&\ddots&\vdots \\ \huge&&& a_ \end
の行列式は \color \det A = a_a_ \dots a_ である。
a_ a_ \dots a_ 以外の項は積の中に必ず 0 が含まれるため,消えるわけです。
行列式の計算手順
行列式の計算は,もちろん定義通り計算しても構いません。しかし,たとえば 4 \times 4 行列の場合,足し算の数は 4! =24 個にもなってしまうため,あまり現実的ではありません。そこで,現実的な計算手順について,順を追って解説します。
行列式の現実的な計算手順現実的な計算手順は,順に
- 行列の基本変形を用いて0を増やす(特に1行目or1列目)
- 1行目or1列目に注目して展開する
- 得られた小さな行列式に対して手順1-2を繰り返す
- 2次・3次または三角行列の行列式に帰着させ,計算する
まずは 行列の基本変形を用いて,1行目 or 1列目の成分がある程度 0 になるように しましょう。行列の基本変形とは,次の3つの変形です。
行列の基本変形 基本変形行列式ある行(列)の 倍を他の行(列)に加える 変化なし 2つの行(列)を入れ替える \boldsymbol 倍 ある行(列)を < c \ne 0 >倍する \boldsymbol < c>倍このことを留意して,係数を調整しながら, ある程度計算しやすいところまで 基本変形していきましょう。
注意ですが,このステップでは無理に計算しすぎなくて良いです。頑張って計算すれば三角行列にできるため,行列式が求まりますが,たとえば各成分に変数が含まれている場合,複雑な計算をすることになってしまうため,そこまでする必要はありません。ある程度同じ行・列に 0 が集まればOKと思い,次のステップに進みましょう。
2. 1行目or1列目に注目して展開する定理(行列式に関する等式)
A を n 次正方行列とする。 A_ を A から i 行と j 列を取り除いた n-1 次正方行列の行列式とすると,
(-1)^ A_ を 余因子 と言います。これを図にすると,以下のようになります。
これ自身の証明は,余因子行列の定義と余因子展開~逆行列になる証明~で行っています。 これを用いて,行列式を展開しましょう。
このとき,手順1の効果で, a_ = 0 (または a_ = 0 ) の項は消えますね。
なお,一般に1行目or1列目以外の行・列に注目して展開することも可能ですが,手順1で「2つの行(列)を入れ替えること」を行って,1行目or1列目に移動させてから展開すると考えればよいでしょう。
3. 得られた小さな行列式に対して手順1-2を繰り返す 4. 2次・3次または三角行列の行列式に帰着させ,計算する 行列式の計算の例題例題
\color \begin 1 & 7 & 2 &4 \\ 1 & 5 & 2 & 4 \\ 3 & 0 & 1 & 0 \\ 2 & 1 & 5 & -3 \\ \end を計算せよ。
- 行列の基本変形を用いて0を増やす(特に1行目or1列目)
- 1行目or1列目に注目して展開する
- 得られた小さな行列式に対して手順1-2を繰り返す
- 2次・3次または三角行列の行列式に帰着させ,計算する
でした。これを用いて手順通りに計算すると,解答例は以下のようになります。最短手順とは限らず,別の変形をしても構いません。 係数に気を付けましょう。
計算機やコンピューターを利用するのもアリ応用数学の研究などでは,計算機を用いて計算するのが一般的です。たとえば,WolframAlphaを用いれば,インターネット上でも計算することができます。本格的に計算するためには,MathematicaやPython, Julia, R, Fortran, Mapleなどのプログラミング言語を利用すればよいでしょう。
行列式の性質
以下で,複素数 \mathbb は実数 \mathbb に変えても成立します。
定理(行列式の性質)
1. 行列式は,各列に関して線形性がある。すなわち, \boldsymbol \in \mathbb^n \,\,(1\le k\le n), \,\, \boldsymbol \in \mathbb^n を n 次元列ベクトル, s,t\in \mathbb とすると,
\small \begin &\det (\boldsymbol, \dots , \boldsymbol>, \textcolor+t\boldsymbol>, \boldsymbol>,\dots, \boldsymbol) \\ =&\textcolor \det (\boldsymbol, \dots , \boldsymbol>, \textcolor>, \boldsymbol>,\dots, \boldsymbol) \\ &+ \textcolor\det (\boldsymbol, \dots , \boldsymbol>, \textcolor, \boldsymbol>,\dots, \boldsymbol). \end
また同様に,行列式は各行に関して線形性がある。すなわち, \boldsymbol \in \mathbb^n \,\,(1\le k\le n), \,\, \boldsymbol \in \mathbb^n を n 次元行ベクトル, s,t\in \mathbb とすると,
\small \begin &\det \begin \boldsymbol \\ \vdots \\ \boldsymbol> \\ \textcolor +t\boldsymbol> \\ \boldsymbol> \\ \vdots \\ \boldsymbol \end \\ &= \textcolor\det \begin \boldsymbol \\ \vdots \\ \boldsymbol> \\ \textcolor> \\ \boldsymbol> \\ \vdots \\ \boldsymbol \end +\textcolor\det \begin \boldsymbol \\ \vdots \\ \boldsymbol> \\ \textcolor \\ \boldsymbol> \\ \vdots \\ \boldsymbol \end .\end
2. 転置行列の行列式は元のそれと同じ。すなわち, \color\det A = \det A^\top.
3. (列・行の入れ替え) \sigma\in S_n を置換とする。このとき,太字を列ベクトルとすると,
太字を行ベクトルとすると,
特に, 2つの列(または行)を入れ替えると,行列式は \color -1 倍になる。
4. 2つの列(または行)が等しい行列式の値は \color 0 である。
5. 行列式と積は可換である。すなわち, A,B を n 次正方行列とするとき,
\color \det (AB) = \det A \det B.
6. A が正則のとき, \color\det (A^) = (\det A)^ .
行列式の性質6つの証明(列,行の線形性,置換,積,転置など)行列式の性質のうち,特に大事な6つの性質(線形性・転置行列と行列式・列,行の置換・同じ列,行を持つ行列式は0,det AB = det A det B, det(A^) = (det A)^)を証明します。最後には,行列の基本変形と行列式の関連性についても考えます。
mathlandscape.comおわりに
特別な行列式
サラスの公式で3次の行列式を求める方法を図解 「サラスの公式」または「サラスの方法 (Sarrus' rule) 」とは,3次正方行列の行列式(det)を求める記憶術を指します。これがどういうものか,図解を交えて解説しましょう。 mathlandscape.com ファンデルモンドの行列式とその証明2つファンデルモンドの行列式 (ヴァンデルモンドの行列式; Vandermonde determinant) といわれる特殊な行列式について紹介し,それを因数定理を用いた方法と帰納法を用いた方法の2通りの方法で証明します。
mathlandscape.com特殊で有用な行列式の計算の一つに,巡回行列 (circulant matrix) における行列式 (det) の計算が挙げられるでしょう。これについて,巡回行列の定義とその行列式の計算方法を紹介・証明します。
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- 行列式の具体例
- 2次正方行列の行列式
- 3次正方行列の行列式
- 三角行列の行列式
- 行列式の現実的な計算手順
- 1. 行列の基本変形を用いて0を増やす(特に1行目or1列目)
- 2. 1行目or1列目に注目して展開する
- 3. 得られた小さな行列式に対して手順1-2を繰り返す
- 4. 2次・3次または三角行列の行列式に帰着させ,計算する