海の王者から陥落したホホジロザメ、彼らを襲う新たな頂点捕食者
ホホジロザメ(学名:Carcharodon carcharias)は、海の王者と称される。恐れられ、圧倒的な力を持つ無敵の存在だ。しかし、新たな証拠がそれを覆しつつある。 南アフリカからメキシコまでの沿岸海域で、シャチ(学名:Orcinus orca)はもはや、ホホジロザメと獲物を奪い合うライバルではない。不可解なことに、ホホジロザメはシャチの獲物となっているのだ。 こうした新たに発見された現象について、すでにわかっていることを以下にまとめた。こうしたシャチの行動は、考えられていた以上に高度化し、広範におよび、影響力を持つようになっている。
シャチが住み着くと、ホホジロザメは去った
転機となったのは、『African Journal of Marine Science』で2022年に発表された研究だ。研究チームは、南アフリカ西ケープ州ガンズバイ近海で、シャチの行動パターンを追跡した。きっかけは、「ポートとスターボード」と呼ばれるコミュニティーに属する2頭のシャチが、ホホジロザメを殺す姿が目撃されたことだ。
当時、複数のホホジロザメの死骸が、肝臓を失った状態で海岸に打ち上げられていた。それに伴い、ホホジロザメの目撃情報は激減した。テレメトリーデータからも、タグを装着されていた多くのホホジロザメが、この海域を去ったことが確認された。 研究論文の筆頭著者は、「ガンズバイでシャチによる襲撃が起きた後、ホホジロザメは数週間から数カ月にわたって姿を現さなかった」と説明している。 筆頭著者はさらに続ける。「しかし、私たちが目の当たりにしているのは、(決して小規模ではない)大規模な回避戦略のようだ。これは、タンザニアのセレンゲティで、ライオンが存在感を増したとき、リカオンが取る行動とよく似ている。シャチがこれらの海域に出没すればするほど、ホホジロザメはより長く海域から遠ざかる」 そして2024年、新たな衝撃がもたらされた。追跡調査をしていた同じ研究チームが、史上初めて、シャチが単独でホホジロザメを仕留める瞬間を記録したのだ。シャチは完全に単独行動で、群れもいなければ、長時間の追跡もなかった。 西ケープ州モッセルベイ近海で起きたこの捕食行動では、最初の接触からわずか2分足らずで、シャチの口にホホジロザメの肝臓が確認されたと報告されている。
「シャチのサメ狩り」が、南アフリカからメキシコに広がる
ホホジロザメ(Shutterstock.com)つい最近まで、シャチとホホジロザメの遭遇事例のほとんどは南アフリカ周辺に集中しており、ごくまれにオーストラリア周辺で確認されていた。しかし、2025年11月3日付で『Frontiers in Marine Science』に発表された研究によって、状況が一変した。
翻訳=米井香織/ガリレオ 2026年5月号発売中 最新号の購入はこちらから定期購読のお申し込み 2026年5月号発売中 最新号の購入はこちらから定期購読のお申し込み関連記事
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