. 15話「高氏と正成」:戦場から戻った彼らを待ち受けていたのは、かくも息苦しい世界であった・・ - Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -
15話「高氏と正成」:戦場から戻った彼らを待ち受けていたのは、かくも息苦しい世界であった・・ - Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -
15話「高氏と正成」:戦場から戻った彼らを待ち受けていたのは、かくも息苦しい世界であった・・ - Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

大河ドラマ「太平記」15話「高氏と正成」:戦場から戻った彼らを待ち受けていたのは、かくも息苦しい世界であった・・

お見事!」踊り終わった二人が平伏すると間髪いれず高氏が声をかける。「車を引く者にしてかかるうまさよ。一座の舞の見事なること、疑いなしじゃ!」高氏は床几から立ち上がり、正成に寄る。「その方、名をなんと申す?」「吾平と申します」正成が答える。「悪う思うな、その方が名高き悪党楠木兵衛に似ていると申すものがおってな。念のため詮議を致した。」戦の最中に兜で隠れた顔が似ていると言っても、見間違うこともあるのではないかと、高氏は土肥前司に聞こえるように、言う。

そのまま一座の詮議を締めようとする高氏の言に驚き、土肥が異議を唱える。「さりながら・・」「そこもとが見たところ、この一座に不審はない。とく放免致すべしと存ずるが・・」高氏は聞く耳をもたない。それでもしつこく食い下がる土肥に駄目を押す。「この足利高氏!、人を見る目にいささかの自負がござる。」

軍制はよくわからないが地位としては大将軍とされていた足利高氏のほうが土肥佐渡前司よりも偉かったということだろう。最後は高氏が押し切る。 後の展開から想像すると、このゴリ押しは遠征軍の大将軍筆頭の大佛貞直経由で長崎円喜・高資父子にも逐一報告されていたといったところだろうか。

立ち上がった正成に高氏が話しかける。「そこもとが万にひとつ楠木兵衛なら、お尋ねしたきことがあった。」驚いたように高氏の顔を見る正成。

田楽一座の単なる車引きにしては眼光尖すぎるよ、このおっさん。 土肥某が正成と疑うのも無理はないな!

高氏は正成と目を合わせないまま、続ける。「・・ なにゆえ、勝ち目のない戦にたたれたのか、と。 」最後にちらりと正成をみやり、高氏は立ち去る。

こちらのおっさんもあなどれない。高氏がゴリ押しした茶番を察していた模様。 この飄々としたところは好きですね。

おたずねにお答え申し候 戦は、大事なもののために戦うものと存じおり候 大事なもののために死するは、負けとは申さぬものと心得おり候 それゆえ勝ち目負け目の見境なく、 ただ一心不乱に戦をいたすのみにて御座候 どうかお笑い下されたく候車引き

西園寺公宗

鎧装束のまま出仕した高氏は廊下にて、取り巻きをつれて歩く西園寺公宗(長谷川初範)にゆきあたり、高氏は廊下の端に片膝つく。「これは治部太夫殿。陣中でもあるまいにそのむさむさとしたお姿は何事ならん?」「おそれながら足利殿はさきほど伊賀より帰着されたばかりにて・・」案内の官吏が公宗に言う。「されば着替えてご出仕なさればよいものを・・。 同じ関東武者でも北条殿と足利殿とでは人と犬ほど作法が違うようじゃな。 ・・」手に持つ扇子で顔を隠しながらわざとらしく高氏が屈んでいる端に寄るように向かってくる。たまらず高氏は廊下から地面に降りる。高笑いを残して去る公宗とその取り巻き。

いやぁ、これまた強烈なキャラが登場した。癇に障る高い声といやらしい低レベルなイジメのような仕打ち。この後、敵役としてどのような活躍をするのかはわからないが、楽しみである。西園寺家は関東申次として幕府との連絡役を担ってきた家系。いわば北条家ひいては長崎家との繋がりが深い。長崎家の足利嫌いがうつってもおかしくはない。またこういう役割を担うものの常として、双方に対して絶大な権力と金が集まっていたことは想像に難くない。

あまりに強烈だったので少々調べると・・西園寺公宗は鎌倉幕府滅亡後、その役は無くなり、夢よもう一度と、地位回復のため北条家残党に対する支援を行ったりする。最後は後醍醐天皇を宴に招き暗殺を試みるが事前に露見し、高師直らに囚われ、さらに護送中に処刑されたという(ドラマでここまで描くかは不明)。明治の元老のひとり西園寺公望はこの子孫にあたる。

京都の逗留場所である上杉邸で西園寺公宗の仕打ちの話を聞いた直義(高嶋政伸)が高氏に言う。「兄上、それは挨拶されておいたほうがよいかもしれませぬぞ。・・やはり笠置に立たれた先帝は立派なお方であったということです。学問においては朝廷に並ぶもの無しと言われ、 世を正さんとする熱も度量も人並み外れた大きなお方であった。 楠木兵衛殿が勝ち目のない戦に乗り出すだけの理由はあったんです。 ・・そういう御方を敵の持明院統は怖れた。幕府も怖れた。よって追い落とす。だが、都のみんなは知っております。新しい帝より先帝がはるかに立派な御方であった、と。西園寺卿もどの公卿もみなそれを知っている・・。・・西園寺卿は北条得宗家、とりわけ長崎円喜殿と親密だと申します。・・行き先大事を行うならここは持明院統に睨まれるのは得策ではない、と・・」「直義からそのような説教を聞くとは思わなんだ・・」と高氏が返す。

楠木正成の弟正季ほどの猪武者ではないにしろ、直情径行の気があった直義にしてはいつになく冷静な分析。京都在中期間中にキャラ変したか

旧暦11月なので現在の12月、京都は寒く、直義も火鉢の炭を熾しつつ、寒い寒いと口にしている。 で、この寒い寒いという描写は次の後醍醐帝の軟禁される六波羅の描写に続いていく。

囚われの先帝

仲時は六波羅探題北方の北条仲時の事。後醍醐天皇役の片岡孝夫現片岡仁左衛門だが、見目の神々しさは今までも再三見てきているが、ここまでの声を張り上げるようなセリフや長々しいセリフは初めてだと思う

「よい、こうして声をあげれば体もあたたかる。後一度吠えれば今日は終わりじゃ。 カーッカッカ」後醍醐はそんな忠顕の心配などまったく気にしていない。 生きていればヒゲも伸び、垢も出ると自嘲げに言う後醍醐。「・・ようやく朕にも人間の匂いがしてきたぞ!見ておれ、朕は、必ず、生き抜いて見せるぞ」自らに言い聞かせるように口にする帝。

声を張り上げて芝居がかった節回しで登場したのは佐々木判官こと、佐々木道誉(陣内孝則)。またもやお前かの感が強いが、幕府内でもうまいこと泳いでいるということなのだろう。

美しゅう都

その年の暮、幕府は後醍醐の隠岐の島への流刑を決める。

高氏は京からの辞去に挨拶に西園寺公宗の館を訪ね、またも公宗より絡まれる。「これは誰かを思えば、今頃何の御用でまかりこされた」「はっ、治部太夫、京にまかりこしたこの折にご尊顔を拝したてまつりたく・・」「はて、ご尊顔を拝すにはいささか遅うはないか?」「その議、面目なく候へば、一言暇を申して鎌倉に罷りたたぬと存じ・」ぶった切ったのは公望「暇なら、北畠殿や大覚寺の方々に申されてはいかがかな?」取り巻きの中から嘲笑が起こる。「それとも、先帝が隠岐へ流し奉られる議をお聞き及び、あわてて我らに寝返りあそばされるか?」「先帝が?隠岐へ?」「ご存知なかったか。おいたわしや。先帝は隠岐の島へ配流と決したそうじゃ」またもや嘲笑・・。今度は後醍醐とその周囲の者達への嘲笑だろうか。

辞去後、門前で待っていた直義に、高氏は言う。「直義、京の都も鎌倉を同じになってしもうた。美しゅう都ではのうなった。ワシには帝は今でも先帝お一人だと思われるのだ。・・直義、鎌倉へ帰ろう・・

天下安泰

表向きは隠居している長崎円喜(フランキー堺)が風邪をおして出仕しているところに、現内管領の長崎高資(西岡徳馬)が訪ね来る。円喜の周りは官吏が取り巻いている。円喜の元には、遠征軍へ参加していた長崎高貞*1からの書状が届いていた。円喜は遠征の顛末として、護良親王や楠木正成を取り逃がしたことを嘆く。「・・2万もの兵を送り込んで何をいたしておるというのじゃ。はーぁ、執権貞時公ご存命の折にはかかる手落ちなど思いも及ばなんだら」「ははは、父上はあれこれお気になされすぎじゃ。先帝は捕らえたのです。都の勅許さえでればすぐにでも隠岐へ送り奉ればよい! これで我らに矢を向けるものも意気阻喪しましょう。もはや天下は安泰じゃ! 」自身満々な高資は「のう?」と周囲の官吏の同意をとるように言う。「さようかの?」と言いながら手元の紙で大きく鼻をかむ円喜。「この円喜には此度の戦いぶりには解せぬものがある。 とりわけ足利殿の戦いぶりには解せぬ。 六波羅探題は何も気づいてはおらぬが、この円喜の目はごまかせぬ。足利殿の戦は戦にあらず。

鎌倉へ帰る

高氏らが鎌倉の屋敷に戻る。無事を喜び合う一行だが、難題が待ち受けていた。遠征に出る直前に逝去した父貞氏の弔いについて、幕府が禁じてきたのだ。足利家の弔いともなれば諸国より一族・郎党が参集することになり、この”世情乱れたる折節なれば穏やかではない”という。執権赤橋守時も、やむをえぬ沙汰だと、申し訳ないと言ってきた。「父の弔いをやらぬとあらば、かえって北条殿に恨みを抱く一族もあらわれよう。このまま引き下がるわけにも参らぬ。この議、得宗殿に直々にお願いいたそうぞ

慈悲の心は犬に食わせてしもうた

表情がない金壺眼。やや甲高くゆっくりした話し方。どこまで本気かわからず、どこに行くのかわからないその内容・・。聡いのかそうではないのか、よくわからない。母御前(覚海尼)とおそらく長崎円喜には従順。田楽踊りと闘犬が何よりも好き・・。

「足利殿。目に見えぬものを信じられるか?」「信じたくございます」「例えば何を信じる?」「得宗殿のお慈悲の御心を・・」「・・ 慈悲の心は犬に食わせてしもうた。 ・・長崎がそういたせと申すのでな。・・長崎は先帝も隠岐で殺してしまえと申す。それが世の安泰のためじゃ、と。おそれがましきことよのぅ。だが母御前は長崎と仲よーいたせと申す。それが鎌倉のためじゃ、と。ワシにはとんとわからぬ。先帝を殺したてまつり、浄土も見よと申すのか?・・とは申せ、この高時あるは、母御前のおかげ、長崎のおかげじゃ。先帝を殺し、浄土も見ねばならぬ。ワシは忙しい。」高時と高氏が話す背後で顕子が仏絵に朱の絵の具を垂らして遊びはじめる。それを見た高時はニヤリと笑い、そのまま顕子を背後から抱くようにして、仏絵や衣が汚れるのも気にせず戯れ始める。高氏が提示していた書状は戯れの中で破られ、ぐちゃぐちゃにされる。高氏は、「これ、足利殿!」と呼び止める高時の声を無視して、その場を立ち去る。

「犬に食わせてしもうた」とのセリフのところで思わず笑ってしまった。 北条高時が登場するような歴史ドラマ・映画はそうそうないと思うが、この片岡鶴太郎が演じた高時像は強烈すぎて、これを超えるのはなかなか難しいのではないかと思えるほどの怪演。 セリフが一切ない顕子との戯れのシーンなど狂気がはいっていたように思う。

感想:かくも息苦しく生きづらい世に・・

今回もうひとつ描かれたのが後醍醐帝の人徳という点だ。笠置山挙兵のエピソードの記事の際に、なぜにここまで各地の豪族達が後醍醐天皇を支持したのかという点を指摘したが、今回のエピソードではじめて高氏の口を借りて語られた。最後に久々に登場した鶴太郎ならぬ北条高時。セリフの内容やセリフまわしのひとつひとつもそうだが、最後に愛妾と戯れてみせるその様子は狂気をはらんでいるようで、彼自身もおかれた立場の中で煩悶し、あげくは現状逃避を図っているように見えた。

いずれも、今後の足利高氏謀叛に向けた布石が打たれたエピソードとして印象に残る回となった。

大塔宮派と足利党との対立は、強盗として捕らえた大塔宮派の僧… 新政府にあたって護良親王は足利高氏の存在を「第2の北条氏」と… 鎌倉幕府の拠点六波羅探題の陥落を受け、後醍醐帝が京に還幸す… NHK大河ドラマ「太平記」13話。 後醍醐帝が籠もった笠置山の山… 後醍醐帝が籠もる笠置山攻略のために集められた幕府の派遣軍の… 最終更新: 2026-03-17 08:30
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