ISO/IEC GUIDE 51安全の定義「安全とは許容不可能なリスクがないこと」とリスクゼロはありえない
本ガイドラインは、規格の起草者が安全面を規格に盛り込む際に役立つ実践的なガイダンスを提供するものです。また、本ガイドラインの基本原則は、安全側面の検討が必要な場合にはどこでも使用でき、設計者、製造者、サービスプロバイダ、政策立案者、規制当局などの他の関係者にとっても有用な参考資料です。本ガイドラインに記載されているアプローチは、脆弱な消費者による使用を含め、製品やシステムの使用において発生しうるリスクを低減することを目的としています。
本ガイドラインは、製品またはシステムの設計、製造、流通、使用(保守を含む)、破壊または廃棄から生じるリスクを低減することを目的としています。製品やシステムのライフサイクル全体(意図された使用と合理的に予見可能な誤使用の両方を含む)を考慮し、製品やシステムが職場、家庭環境、または娯楽活動で使用されることを意図しているかどうかを考慮しています。その目的は、人、財産、環境に対する許容可能なリスクを達成し、環境への悪影響を最小限に抑えることにあります。
危険源は、さまざまな安全上の問題を引き起こす可能性があり、制御機構の完全性を含む製品やシステムのエンドユーザー、および製品やシステムが使用される環境によって大きく異なります。職場ではリスクをより広範囲にコントロールすることが可能ですが、家庭環境や、弱い立場にある消費者が製品やシステムを使用する場合には、このような状況ではないかもしれません。そのため、本ガイドは、特定の関心分野やユーザーのための他の出版物によって補完される必要があるかもしれません。そのような出版物の参考リストは「参考文献」に記載されています。
本ガイドラインは、すべての新規規格の起草および既存規格の次回改訂時に適用されることを意図しています。品質と安全性のそれぞれの役割を区別することが重要です。しかし、安全性の要求が一貫して満たされていることを保証するために、規格の品質要求を考慮する必要があるかもしれません。
Introduction 序文まとめ- 脆弱な消費者による使用を含め、製品の使用において発生しうるリスクを低減することを目的とし、製品のライフサイクルから生じるリスクを低減することを目的としている
- 製品のライフサイクルとは設計、製造、流通、使用(保守を含む)、破壊または廃棄
- 危険源は製品の使用環境でどこにでも存在する
- 職場環境では危険源をコントロールすることが可能かもしれないが、家庭環境や、弱い立場にある消費者が製品を使用する場合には、このような状況ではないかもしれない
- 品質と安全は区別されるべきである
「安全」とは
「安全」定義「安全」という言葉はISO, IEC そしてJIS 規格でそれぞれ 定義されています。
JIS Z 8051:2015 安全
許容不可能なリスクがないこと
ISO/IEC GUIDE 51:2014 safety
freedom from risk which is not tolerable
Freedom from risk
Safety: Freedom from risk を直訳すると
Safety: Freedom from risk 安全: リスクから開放されていること
which is not tolerable
which is not tolerable を直訳すると
which is not tolerable 許容できないリスク 安全とは、許容不可能なリスクがないこと
Safety: Freedom from risk + which is not tolerable
Freedom from risk + which is not tolerable 安全とは、許容できないリスクから開放されていること
ISO/IEC 版からJIS 化で日本語にする時に多分JIS の担当者は下記のよう考え日本語の定義を考えました。(憶測です)
- できない → 不可能な
- リスクから開放されていること → リスクがないこと
つまり、原文 Safety: Freedom from risk which is not tolerable を日本語に訳すと
Safety: Freedom from risk which is not tolerable安全とは許容不可能なリスクがないこと
許容可能なリスク tolerable risk 許容不可能なリスク intolerable riskリスクの受容には二つのレベルがあります。一つは許容可能なリスク (tolerable risk)、もう一つは許容不可能なリスク(intolerable risk) です。
許容可能と許容不可能な概念 リスクリミット リスクリミット risk limit「安全」や「安全な」という言葉の使用について
よく考えてみると意味がわからない「安全に妥協なし」という標語 「安全」や「安全な」という用語 やばすぎるリスクゼロ信仰 [安全」や「安全な」という用語の使用「安全」という言葉は独り歩きしがちです。この言葉は、社会や個人の生活において重要な価値観を表していますが、その意味や範囲は曖昧で多様です。一般的には、「安全」は「安心」の前提となるものと考えられますが、それだけでは不十分です。「安全」=「安心」と混同され、あらゆる危険源から無敵状態と誤解されているかもしれません。しかし、現実には、完全な安全は存在しません。どんな状況でも、何らかのリスクが伴います。「安全」の概念はある程度のリスクを含んでいます。
リスクとは、危険な事象が発生する可能性とその影響の大きさのことです。リスクをゼロにすることは不可能であり、また必要でもありません。重要なことは、リスクを適切に評価し、受容できる範囲内に抑えることです。これをリスクマネジメントと呼びます。リスクマネジメントは、危険を予防するだけでなく、万が一発生した場合に備えて対策を講じることも含みます。リスクマネジメントを行うことで、「安全」は「安心」につながります。つまり、「安全」とは、リスクをコントロールすることで得られる状態であり、「安心」とは、その状態に対する感情や信頼であると言えます。「安全」と「安心」は相互に影響し合いますが、同じものではありません。この違いを理解することが、「安全」に関する正しい知識や判断を持つために必要です。
リスクリミット内なので許容可能なリスクではあるが、ある程度のリスクが存在している 「安全」や「安全な」という用語例 「安全ヘルメット」の代わりに「保護ヘルメット」。「安全インピーダンス装置」の代わりに「保護インピーダンス装置」。 「安全床材」の代わりに「滑りにくい床材」。
「安全ヘルメット」 → 「保護ヘルメット」「安全帯」 → 「墜落用静止器具」
リスク risk とは
リスクとはリスク = 危害の発生確率 x 危害の度合いの組み合わせ
リスクを構成する要素(リスク = 危害の度合い x 危害の発生確率)JIS では、原文の is a function of を 「関数」 と訳しています。「関数」だと、足し算や掛け算などが該当します。足し算を用いても良いですが、掛け算をおすすめします。理由は、リスクとは risk: combination of 「組み合わせ」と定義されているからです。
JIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ]リスクアセスメント担当者や機械・電気回路設計者・EHS担当者にとって重要な規格が網羅されていて必携です。
JIS ハンドブック 72 機械安全リスクアセスメント
ISO12100.com 許容可能なリスク tolerable risk- 現代の社会の価値観
- 与えられた状況下
- 受け入れられるリスクのレベル
リスクアセスメントとは何か?具体的な方法どうするのか?など、リスクアセスメントはISO 12100 という規格を参照します。 ISO 12100 は JIS B 9705 で整合化されています。このセクションではリスクアセスメントの概要を説明します。
Safety of machinery – General principles for design – Risk assessment and risk reduction
機械類の安全性 − 設計のための一般原則 − リスクアセスメント及びリスク低減
リスクアセスメントとリスク低減のプロセス ISO 12100 リスクアセスメントとリスク低減の反復プロセスISO 12100 機械類の制限の決定と危険源の同定についてはこちらの記事をご覧ください。
ISO12100.comISO12100リスクアセスメントによる機械類の制限の決定や危険源の同定の具体的なやり方とコツ こんにちは!ISO12100 リスクアセスメント機械類の制限の決定と危険源の同定について話してみたいと思います。ISO12100 は、機械類の安全性に関する国際規格です。この規格…
リスクの低減方法 3ステップメソッドリスクアセスメントが(一旦)終了したら、リスクの見積もりによって算出されたリスクが許容できるレベルにまで低減することが必要です。リスク低減の方法は主に 3 つあり、これを3 ステップメソッドと呼びます。
- 本質安全設計方策: 機械の設計段階で、危険な部分や動作を排除するか、最小限にすることです。例えば、刃物や回転部分をカバーで覆ったり、温度や圧力を制御したりすることです。
- 安全防護及び付加保護方策: 機械の使用段階で、危険源や危険状態に対して人を保護するための装置や措置を設けることです。例えば、安全装置や遮断装置を取り付けるなどが挙げられます。
- 使用上の情報: 機械の操作者や保守者に対して、残存するリスクや安全な使用方法について情報を提供することです。例えば、警告ラベルや表示灯、取扱説明書や教育訓練などを用いて、人が危険な部分や動作に注意するように促すことです。
- 本質的安全設計方策
- 安全防護及び付加保護方策
- 使用上の情報
規格における安全側面 安全規格の種類
安全規格の種類ISO/IEC GUIDE 51 は規格の体系を説明し、3つの規格の分類(基本安全規格・グループ安全規格・製品安全規格)を示しています。規格の体系は次のような種類の規格で成り立っています。
- 基本安全規格: 広範囲の製品及びシステムに適用可能な一般的な安全側面に関する基本的な概念,原則及び要求事項からなる
- グループ安全規格: 幾つかの製品若しくはシステムに,又は類似の製品若しくはシステムのファミリーに適用可能な安全側面からなり,一つ以上の委員会で扱われ,できる限り基本安全規格を引用する
- 製品安全規格: 特定の製品若しくはシステム,又は製品若しくはシステムのファミリーのための安全側面からなり,一つの委員会の範囲内にあり,できる限り基本安全規格及びグループ安全規格を引用する
- 安全側面を含んでいる規格: その規格は安全側面だけを取り扱うものではなく,できる限り基本安全規格及びグループ安全規格を引用する
- 基本安全規格: どんな製品やシステムにも使える、安全に関する基本的な考え方やルールです。
- グループ安全規格: 似たような製品やシステムのグループに使える、安全に関する特別な考え方やルールです。基本安全規格を参考にします。
- 製品安全規格: 一つの製品やシステム、またはそのグループにだけ使える、安全に関する具体的な考え方やルールです。基本安全規格とグループ安全規格を参考にします。
- 安全側面を含んでいる規格: 安全だけではなく、他のことも取り扱う規格です。安全に関する部分は、基本安全規格とグループ安全規格を参考にします。
- 基本安全規格 → A 規格
- グループ安全規格 → B 規格
- 製品安全規格 → C 規格
全ての機械類に適用できる基本概念、設計原則及び一般的側面を規定する規格です。世の中に規格はたくさんありますがタイプA 規格は現在のところISO 12100 のみです。どのような規格を用いてもリスクアセスメントはISO 12100 を参照します。
機械類の安全性−設計のための一般原則 − リスクアセスメント及びリスク低減Safety of machinery – General principles for design – Risk assessment and risk reduction
タイプB 規格(グループ安全規格)タイプB 規格は広範な機械類に適用できる安全面又は安全防護物を規定する規格です。タイプB 規格にはB1 規格とB2 規格があります。規格の名前に「機械類の安全性」「Safety of machinery」となっていたらタイプB 規格です。タイプB 規格や下記で説明するタイプC 規格はたくさんの規格が存在します。
- タイプB1 規格 特定の安全面(例えば、安全距離,表面温度,騒音)に関する規格
- タイプB2 規格 安全防護物(例えば、両手操作制御装置、インターロック装置、圧力検知装置,ガード)に関する規格
機械の機械指令適合対策 (CE対策) や安全化対策では下記のタイプB 規格をよく用いますので参考にしてください。
Safety of machinery-Electrical equipment of machines- Part 1: General requirements
Safety of machinery — Safety-related parts of control systems — Part 1: General principles for design
Safety of machinery — Safety-related parts of control systems — Part 2: Validation
Safety of machinery-Emergency stop function-Principles for design
Safety of machinery-Positioning of safeguards with respect to the approach speeds of parts of the human body
Safety of machinery-Safety distances to prevent hazard zone being reached by upper and lower limbs
Safety of machinery — Interlocking devices associated with guards — Principles for design and selection
Safety of machinery-Guards-General requirements for the design and construction of fixed and movable guards
タイプC 規格(個別機械安全規格)個々の機械や機械群の詳細な安全要求事項を規定する規格をタイプC 規格と呼びます。こちらはタイプB 規格にくらべて、機械の安全に対して専門性が高くなっています。安全の要求はタイプB 規格は広く浅く、一方タイプC 規格は狭く深く規定します。以下はタイプC 規格の例です。
一般的な包装機械 EN 415-10:2014
包装機械の安全 – パート10 一般要求事項
Safety of packaging machines – Part 10: General Requirements
Machine tools — Safety — Turning machines
Machine tools — Safety — Stationary grinding machines
規格の体系のイメージ規格の体型のイメージを図で示します。タイプA 規格リスクアセスメントはすべての規格の原点と言われています。タイプA 規格でカバーしきれないリスクについてはタイプB 規格でカバーします。タイプB 規格でカバーしきれないリスクについてはタイプC 規格でカバーします。
まず、タイプA 規格とは、一般的な原則や用語、分類などを定めた基本的な規格です。タイプA 規格は、すべての規格の原点と言われており、他の規格に影響を与えます。タイプA 規格では、製品やサービスに関するリスクアセスメントを行うことが求められます。リスクアセスメントとは、製品やサービスが使用される際に発生する可能性のある危険や不具合を特定し、その重大度や発生確率を評価し、適切な対策を講じることです。
次に、タイプB 規格とは、製品やサービスの設計や製造に関する一般的な要求事項を定めた規格です。タイプB 規格は、タイプA 規格に基づいて作られますが、より具体的な内容を含みます。タイプB 規格では、製品やサービスが特定の分野や用途に適合することを保証するために必要な要素を規定します。例えば、電気機器に関するタイプB 規格では、電気的な安全性や電磁適合性などが定められます。
最後に、タイプC 規格とは、製品やサービスの特定の種類やモデルに関する詳細な要求事項を定めた規格です。タイプC 規格は、タイプA 規格とタイプB 規格に基づいて作られますが、より個別化された内容を含みます。タイプC 規格では、製品やサービスが特定の機能や性能を有することを保証するために必要な条件や方法を規定します。例えば、研削盤や旋盤に関するタイプC 規格では、ガードの堅牢性の試験や計算が定められています。
guide 51 の体系はピラミッド型になっており、上位の規格が下位の規格に影響を与えます。この体型は、規格の階層性と相互関係を表しています。上位の規格は、下位の規格に対して一般的な原則や要求事項を定めます。下位の規格は、上位の規格に従って具体的な方法や詳細を示します。このようにして、guide 51 は、一貫性と整合性を保ちながら、様々な分野や目的に応用できるように設計されています。
適切なC 規格が無い場合は当然あります。その場合は、よく似た機械の C 規格を用いたり、その規格さえ無い場合はB 規格を用いてリスクアセスメントを行います。
ここまで読んでくださいまして、ありがとうございました。次回ISO 12100:2010 解説に進みます。