高中正義、白熱のL.A.公演とニュー・ギターを語る
世界各地のラジオDJやネットのインフルエンサーが紹介したことによって、世界中の若者の間で話題となった日本のシティ・ポップやJフュージョン。その中でいま、高中正義の人気が凄まじい。SpotifyやYouTubeで驚異的な再生回数を叩き出しており、特に1stアルバム『SEYCHELLES』(1976年)や初期のベスト・アルバム『ALL OF ME』(1979年)などの人気が高く、日々再生回数をグングンと更新中。また、一昨年より初期のアルバムがアメリカで次々と発売され、それらも好セールスを記録している。
ステージを動き回って弾いた方が自分も楽しいし、お客さんも喜んでくれる
──昨今のアメリカをはじめとした世界的な人気は、一体どういうことなんでしょうか?
高中正義:シティ・ポップとしては竹内まりや、ANRIあたりが人気らしいんだけど、僕の場合は“歌のないシティ・ポップ”みたいな感覚なんだろうね。打ち込みが流行る前の、人力によるグルーヴがしっかりとあって、メロディアスな曲。そういうのがポイントなんだと思う。
──しかも、そのファンのほとんどが20代の若者というのも驚きです。
高中:約50年前に『SEYCHELLES』を作ったとき、アメリカでも発売できたらいいなと思ってアメリカ人の音楽関係者に聴いてもらったんだけど、「アメリカで売るにはちょっと弱い」なんて言われてね。それが今になってアメリカの若者にウケてるんだから、不思議だよね。
──そんな背景から実現した、今年3月9日・10日の米ロサンゼルスのウィルターン・シアター公演。その模様を収録した映像作品(Blu-ray)の『TAKANAKA SUPER LIVE 2025 BLACK SHIP in L.A.』が7月16日にリリースされました。
高中:チケットは発売と同時にすぐに売り切れちゃって、2日間ソールドアウト。(延べ)5,000人のファンが集まってくれた。アメリカのファンはみんな若いからエネルギーが凄い。声援も大きいし、ギターのメロディを一緒に歌ってくれるし、あまりの熱狂ぶりに驚いたけど、嬉しかったね。
──そのBlu-ray を観て気づいたのですが、新しいヤマハ“SG”が登場していましたね。
高中:僕がいつも「“SG”が重い」ってグチをこぼしているもんだから、ファンが軽い“SG”を作ってくれたんだよ。2本も作ってくれて、1本はテイルピース仕様、もう1本はロック・ナットでアーム付き。音も結構いいし、それに何より軽い。僕が長年使ってる“SG”は4.6kgあるんだけど、作ってもらった“SG”は3.4kgくらい。そうすると、もう昔の“SG”は使わなくなっちゃって、L.A.でもその2本を使ったんだよ。
──初めてファンの前で使ったのはいつでしたか?
高中:2月のビルボードライブ・ツアーで使うつもりだったのが、諸事情でふた月ほど延期になったので、3月1日の神奈川県民ホールで弾いたのが最初ということになるのかな。
──映像で観たところ、ボディの厚さがかなり薄いですね。
高中:ボディを薄くすると、厳密に言えば音は変わるんだろうけど、問題ない範囲なんだと思う。テレビで5千円のワインと10万円のワインを飲み比べてどっちがどっちかを当てるなんてのがあって、みんな結構ハズレてるんだよね(笑)。1万円のギターと300万円のギター、聴き分けられるかな?
──高中さんはどう思われます?
高中:クリーン・トーンで弾いたら聴き分けられると思うけど、歪ませたらもう分からないと思うよ。歪ませるのはアンプやスピーカーの役割だからね。話を“SG”に戻すけど、僕が“SG”に求めているのは太くて歪んだ音なので、造りがしっかりしていればオッケー。そうなると、あとは弾きやすさと軽さだね。
──このギターについて、詳しく教えていただけますか?
高中:それがね、このギターがどうやって作られて、どんな仕様なのか、僕は何にも知らないんだよ(笑)。「ある女性のファンが作って贈ってくれた」……それじゃ記事にならないでしょ?
──実はその女性と連絡が取れます(笑)。彼女に聞いてもよろしいですか?
高中:彼女が書いてもいいと言うなら、僕は構わないよ。
──それでは、特ダネいただきます(笑)。
──エフェクターは、いまは何をお使いですか?
高中:フラクタル・オーディオ・システムズの“FM9”がメインだね。ちょっと前にメーカーから「使いませんか?」と言われて、試してみたら良い音が出る。あと、ちょうどその頃、人様のコンサートにゲストで呼ばれることもあって、そこへ大掛かりなシステムを持って行って広げるのもいかがなものかと思っていてね。そんなこんなで使い始めたわけ。それ以来もう1年くらい使ってるかな。ただね、音を作るのが大変。あまりにもいろんなことが出来るので、操作というか設定が難しくてね。アンプからキャビネットまで膨大な数のモデリングが入っているし、このままステレオでライン出力しても十分使える音だよ。
──アンプ・モデルは何を選んでいますか?
高中:やっぱり聴き馴れたメサ・ブギーの“Mark Ⅱ”や“Mark Ⅲ”、“Rectifier”、EVHの“5150”とか、マーシャルの気に入ったモデル、フェンダー“Bassman”とかかな。
──高中さんは普段からいろんなものを試していますよね?
高中:ギター雑誌の新製品紹介コーナーをよく読んでいて、その記事に惑わされていっぱい買っちゃうわけ。試してみて「失敗だ」なんてものもたくさんあるから、うちには使っていない機材が山ほどある(笑)。でも、もちろん良いものもあって、それをボードに組み込むんだけど、配線がまた大変で。そんなややこしい配線はやめて、ひとつにまとめたい。ギタリストはみんなそう思ってるんじゃない?
──そこに登場したのがデジタルのマルチ・エフェクターというわけですね。
高中:これまでたくさんのエフェクターを繋いでいて、持ち運べないくらい大変なことになっていたのが、こんな小さなフロア型の1台で完結できるなんて夢のような話だよ。でも、それだけじゃ寂しいので(笑)ブギーの“Rectifier”をアルテックのスピーカーで鳴らすシステムも用意してあって、スイッチで使い分けられるようにしてある。
──最近、何か気になる製品はありましたか?
高中:自分の話になるけど、いま“Blue Lagoon”というエフェクターを作ってるんだよ。ブートレッグというメーカーと協力していて、半年くらい先には製品化して発売しようと思ってる。コンパクト・タイプのペダルで、フットスイッチが3つ。僕の「BLUE LAGOON」(1979年『JOLLY JIVE』収録)で聴けるイントロのクリーンなカッティングの音、Aメロのコーラスがかかったオーヴァードライヴ、ソロのときのオーヴァードライヴ、僕が作ったその3種類の音がプリセットしてあって、3つのフットスイッチで踏み分ける。このエフェクターで「BLUE LAGOON」を弾けば、本人のお墨付きで音色は完璧!…なんて面白いでしょ?
──それは「BLUE LAGOON」を弾かない人も使えると思いますよ。普通に、カッティング、リード1、リード2がプリセットしてあると思えば、他の曲を弾くときでもいろんな場面で応用できそうですね。
高中:普通に良い音だから、シンプルでオールマイティなコンパクト・マルチみたいな感覚で使ってもらえると思う。
──そういえば、Blu-rayを観ていて改めて気づいたんですが、最近のライヴでは「BLUE LAGOON」で聴こえてくるリズム・ギターはサンプリングですか?
高中:レコードでは、あの曲には同じパターンのリズム・ギターを2回録音して、左右のチャンネルにステレオで入れてる。少しだけタイムをズラして、コーラス効果が得られるようにね。あの頃、僕はアース・ウィンド・アンド・ファイアーのアル・マッケイが弾くリズム・ギターが大好きで、そんな感じで結構こだわりを持って弾いていた。だから、「BLUE LAGOON」ではあのリズム・ギターがないとちょっと困る。そうすると、メロディを弾く人も入れたら僕が3人いなくてはならない。つまり、1人では弾けないので、昔録音した音源を同期で使ってるというわけ。
──一時期、ワイヤレスにするかどうか迷っておられましたが、昨年あたりから完全にワイヤレスになりましたね?
高中:ずっと同じ場所に立って弾いてるより、ステージを動き回って弾いた方が自分も楽しいし、お客さんも喜んでくれる。音質面で細かいことを言う人もいるけど、長いシールドを使うことにもデメリットはあるし、シールドから解放されるというこの便利さには代えられないよね。
──電波状態は問題ないですか?
高中:ほとんどないんだけど、何かと混線して音が途切れることが20回に1回くらいはある。まあ、滅多にないことなんだけどね。不満を言うなら、送信機が重たいこと。僕は身体の左側のベルトに付けているんだけど、結構重たい。もっと軽くなればいいのに…。
──ところで、L.A.公演ではMCで「グラミー賞を獲るのが夢です」って言っちゃいましたね。
高中:随分前からいろんなインタビューで言ってたんだけどね、ついに本場で言ってしまった(笑)。まあ、言うのは自由だし、楽しいからいいんじゃない? でも、本気でグラミー賞を獲りたいなら新曲を作らないといけないね(笑)。
──さて、今年も9月より15ヵ所の国内ホール・ツアー、そしてその勢いを持っていよいよ念願のワールド・ツアーが始まります。
高中:L.A..公演の後、Supotifyの月間リスナー数がまた急激に増えてきて、アメリカは現時点で4つの都市からオファーが来てる。他に予定してるのは、ロンドン、オーストラリアはシドニーとメルボルン、中国は北京。まず国内ツアーでベストな形を作って、それを世界各地へ持って行くというパターンになるだろうね。僕ももう70歳を過ぎているから、とにかく健康に注意して、来年まで頑張るよ(笑)。
ニューSG完成までの流れ
SG KARUIZAWA 新緑そういうわけで、この2本のギターはヤマハ製の“SG”が基になっている。そのボディを薄く削ることから作業は始まった。1号機である “SG KARUIZAWA 新緑”(本項1枚目の写真参照)は、ボディ・トップのメイプル材に浮き出ているバーズアイのルックスを維持するため、削るのは裏面から。そして細部に渡り検証しながらパーツを厳選して載せていく。ストラップ・ピンを打つ場所など、こだわりは細部にまで及んだ。材やパーツについては別記したので、そちらをご参照いただきたい。
そういうわけで、この2本のギターはヤマハ製の“SG”が基になっている。そのボディを薄く削ることから作業は始まった。1号機である “SG KARUIZAWA 新緑”は、ボディ・トップのメイプル材に浮き出ているバーズアイのルックスを維持するため、削るのは裏面から。そして細部に渡り検証しながらパーツを厳選して載せていく。ストラップ・ピンを打つ場所など、こだわりは細部にまで及んだ。材やパーツについては別記したので、そちらをご参照いただきたい。
SG KARUIZAWA 新緑 スペックカラー:新緑グリーンバースト(トップ)、ブラック(バック) ボディ:バーズアイ・メイプル(トップ)、マホガニー(バック) ネック:マホガニー、セット・ネック・ジョイント 指板:ストライプド・エボニー フレット数:22 ピックアップ:セイモア・ダンカン“SH-1N”(ネック)、“SH-1B”(ブリッジ) コントロール:ヴォリューム✕2、トーン✕2 重量:3.38kg
SG KARUIZAWA2 紅葉 スペックカラー:紅葉レッドバースト(トップ)、ブラック/レッド(バック) ボディ:メイプル(トップ)、マホガニー(バック) ネック:マホガニー、スルー・ネック・ジョイント 指板:ローズウッド フレット数:24 ピックアップ:OPG アルニコV(ネック&ブリッジ) コントロール:ヴォリューム✕1、トーン✕1 トレモロ・ユニット:ゴトー“GE1996T/GHL-1” ペグ:ゴトー“SG301-MGT” 重量:3.27kg(トレモロ・バー除く)
この“SG KARUIZAWA”は1号機である“新緑”が、昨年の9月に高中の元へ贈られた。続いて、2号機である“SG KARUIZAWA2 紅葉”が予定していたクリスマスには間に合わなかったものの、年明けの今年1月に到着。当初はビルボードライブ・ツアーでお披露目する予定だったのかもしれないが、高中の入院によりツアーが延期され、3月1日の神奈川県民ホール公演がこのギターを初めてファンに披露したコンサートとなった。その後、3月9日・10日のL.A.公演でも大々的に使われたことは、もう周知の事実である。
SG KARUIZAWA2 紅葉
INFO
TAKANAKA SUPER LIVE 2025 BLACK SHIP in L.A. / 高中正義
2025年7月16日発売 | LAGOON MUSIC | BD
高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2025-2026
2025年9月13日(土) 東京 かつしかシンフォニーヒルズ SOLD OUT 開場 16:00 / 開演 16:30
2025年9月15日(月・祝) 宮城 仙台電力ホール 開場 16:30 / 開演 17:00
2025年9月21日(日) 神奈川 カルッツかわさき 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年9月23日(火・祝) 愛知 岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年9月28日(日) 岡山 倉敷市芸文館 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年10月8日(水) 東京 LINE CUBE SHIBUYA 開場 18:00 / 開演 18:30
2025年10月18日(土) 大阪 大阪城音楽堂 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年10月19日(日) 神奈川 厚木市文化会館 開場 16:30 / 開演 17:00
2025年11月1日(土) 栃木 栃木県総合文化センター 開場 16:30 / 開演 17:00
2025年11月3日(月・祝) 埼玉 あげお富士住建ホール(上尾市文化センター) 開場 16:30 / 開演 17:00
2025年11月15日(土) 千葉 浦安市文化会館 開場 16:00 / 開演 16:30
2025年11月24日(月・祝) 広島 JMSアステールプラザ 大ホール 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年12月6日(土) 福岡 福岡国際会議場 メインホール 開場 16:30 / 開演 17:00
2025年12月7日(日) 熊本 熊本県立劇場 演劇ホール 開場 15:30 / 開演 16:00
2025年12月28日(日) 北海道 カナモトホール(札幌市民ホール) 開場 15:30 / 開演 16:00
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