. 1977) - カジノロワイヤルの手帖
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水増し部分をあえて味わってみる『ザ・カー』(1977)

妙に画質がいい。いやそれはいいのですが、70年代アメリカ映画を強く感じさせる乾いた映像と風景、埃っぽさがいい感じです。映画の本筋としては正体不明の黒い乗用車が、何の説明も動機もなくぽんぽん人をはね殺していくという不条理ホラーで、次第に「運転者不在」「銃が通じない」「ドアに取っ手がない」などの異常スペックが判明していき、なおかつ「現れる時は不吉な風が吹く」「墓地にはなぜか入れない」などの事実から「こいつ実は悪霊なんじゃね?」と正体が推定されていくあたりのサスペンスがなかなかよろしい。

この手のホラー映画の特徴として「大して面白くもない人間ドラマでの尺水増し」が挙げられますが本作もその例に漏れず「娘二人をかかえて再婚を迷っている男やもめの保安官」「再婚後、連れ子と上手くやっていけるか自信がない女教師」「DV親父とそれに耐える母子」「それを傍から見守る警察所長(元カレ)」といったものすごくどうでもいい人間ドラマが展開され、手堅くフィルムの尺を稼いでいきます。ご本尊のカーについては出自も動機も全く描かれずブンブン人をはね殺すだけの殺人車としていっそいさぎよい説明の省略に反し、この人間ドラマ部分の果てしなき蛇足っぷりはどうだ。むしろここは敢えて味わっておくべきところではないのか。というわけで「ホラー映画の本筋に関係ない水増しドラマ部分をあえて愛でる」という新しい観方を思いつくなどしたわけですが虚しさもまた格別です。

このような壮絶な決着ながら、はたして悲劇は本当に終わったのだろうか。むしろ本当の悲劇はここから…というこれまたホラー映画独特の後味を忘れておらず大変好感が持てます。いやーHuluにはええもん見せてもらった。この調子で70年代の微妙なホラー映画(『デアボリカ』とか『ザ・ショック』とか『ドッグ』とか『クラッシュ!』とか『家』とか『オードリー・ローズ』とか『スクワーム』とか)をバンバン配信して頂きたいものです。少なくとも俺得です。以上、よろしくお願い致します。

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