【マイルス・デイヴィス】Miles Davis At Fillmore アルバムレビュー 考察56
Black Beauty と Live At Fillmoreの決定的違いについて・・・パーカッションと編集
前回、ブログに書きました「ブラック・ビューティ」の中で、おもしろい音を出す機器としてリング・モジュレーターをご紹介しました。
今回は アイアート・モレイラのパーカッション の一つにスポットをあててみます。 「クイーカ」 というそうです。
僕の世代なら NHK教育テレビ(現Eテレ)の「できるかな?」に出てくる「ゴン太くん」の声 と言ったらすぐわかりますねw。いろんな表情の音を出してます。
ですが、前回の「ブラック・ビューティ」でなにか物足りなさを感じていたのはブログにも書きましたが、その要因の一つが「ブラック・ビューティ」にはパーカッションがあまり聴こえない点にあるような気がしてきました。
Just a moment. www.jazzmusicarchives.com「ブラック・ビューティ」での話になりますが、 「アイアートのパーカッションの音を拾うマイクのスイッチを入れ忘れた」 的なことが書かれています。
これは「マイルス・デイヴィス自伝」でマイルスが語っているのですが、 「『そんなに叩いたり、馬鹿でかい音を出すな。もっとバンド全体のサウンドを聴け』と言ったら、途端に何もやらなくなってしまった。で、今度は『ちょっとは叩けよ』と言わなきゃならなかった。」 とアイアートとのやりとりが記録されてます。
もしかするとこの会話から、アイアートは「ブラック・ビューティ」ではかなり控えめのパーカッションしか叩けなかったのかも・・・。
それに対してどうでしょう?本作「アット・フィルモア」では、かなりエレクトリック・サウンドをかきたてるような、効果的なリズムや効果音をアクティブにプレイしている印象がありませんか?
ついフロント楽器ばかりに耳がいってしまいますけどね・・・。そして この頃のライブは曲間が基本なく、一気通貫のスタイルが取られていますが、その曲間の転換時の「間」、「隙間」を埋めるのが、このパーカッションだと思います。 非常に効果的だと思います。
他にも様々なパーカッション、笛、鈴など聴こえてきますが、それをすべてまとめて 「マイルス・ミュージック」 だと思います。
それはもう、 ジャズでもロックでも、なににも属さない、新しい一つのジャンル だと思います。
そしてもう一つの2作の大きな違いは、 「間延びのしない、テオ・マセロの編集」 ではないかと思います。4日間のライブを凝縮して2枚にまとめた本作は、テオの技術なしには完成しなかった名作だと思います。
録音日時がたった二ヵ月の差ほどとはいえ、これら2点のアルバム、 「ブラック・ビューティ」と「アット・フィルモア」 の決定的違いで、後者が優れたアルバムと言われる所以ではないか?と考えます。
「ブラック・ビューティ」は「日本先行」で「無編集ノーカット」が売り でしたが、それが若干、仇となってしまっているような気がします。
全般をとおして・・・Miles Davis At Fillmore
本作は電子楽器が導入され始めたMiles in the Sky(1968年)以降の 「エレクトリック・マイルス」の2つある結論的アルバムの一つ と考えています。
もう一つの結論は、次回のこのブログで取り上げるであろう「ライヴ・イヴル」(1970年)です。
この2つの作品でまた、ある程度マイルスの変化の終着点が形作られて、その次の「オン・ザ・コーナー」(1972年)に発展していくような、そんな位置関係だと僕は思っています。
時系列に聴きなおして、当時のファンの気持ちを追体験している気分ではいますが、どうしてもこの先に「オン・ザ・コーナー」がリリースされるとか、マイルスは長期休養に入るとか、知ってしまっている以上、その追体験にも限界はあるなあ、と思うようになりました。
いずれにせよ、本作は チック・コリアとキース・ジャレットが同時に在籍した 一つのマイルス・ミュージックの結論を示した怒涛のライブ・アルバムだと言えそうです。
なにより、 「マイルス・ディビスは喜んでもらうことに関して渇望していた」 ということが、モーガン・エイメスさんというかたのライナー・ノーツに書かれています。
関連記事
【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】Miles in Tokyo アルバムレビュー 考察39 前回の記事で書いたとおり音楽性の違いからジョージ・コールマンがマイルスバンドを離脱。そこで次にテナー・サックスに入ったのがサム・リヴァースなる人物です。 【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】Live Around The World アルバムレビュー 考察77 この盤を制作するにあたり10曲を選定、それを当時のセット・リストに近い形に並び替えて最後にマイルス生涯の演奏⑪『ハンニバル』をつけ足した自信作Live Around The World 【マイルス・デイヴィス】The Essential Live in Stockholm アルバム レビュー 考察29 マイルスが1960年春にヨーロッパ・ツアーをしたのが3月21日~4月10日。このアルバムは3月22日にストックホルム(スウェーデンの首都)で行われたライブの模様を収めています。 【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】Agharta アルバムレビュー 考察63-2 『アガルタ』の日本盤CDに封入されているライナー・ノーツがあまりにも詳しく、素晴らしい内容なので、僕の私見などは後回しに、できるだけ要約して皆さまにおお届けしようという趣旨で書いてまいります。 【マイルス・デイヴィス】Porgy & Bess アルバム レビュー 考察25 指揮者、作曲家、編曲家であるギル・エヴァンスとの共同大作です。ギル・エヴァンスのオーケストラといえばすでにレビューしました1957年のMiles Aheadで共作していますね。 【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】 Workin’ マラソンセッション ing四部作 アルバム レビュー 考察14 いわゆる『マラソン・セッション』と呼ばれるアルバム4作品を聴いていくことになります。マイルスをこれから聴くというかたにはとてもいい4部作になると思います。 【マイルス・デイヴィス】BLACK BEAUTY アルバムレビュー 考察55 【マイルス・ディヴィス(Miles Davis)】Live Evil アルバムレビュー 考察57コメント
コメントをどうぞ コメントをキャンセル 筆者:かなやま■名前 かなやま ■年齢 アラフィフ ■地方在住 妻子持ち ■自称 マイルス者 ■学生時代にマイルスのアルバム"Aura"に出会い、ジャズを志したかったが意味がわからず挫折・・・。20年以上の時を経てようやくジャズとマイルスに目覚め、マイルスをこれから聴く人たちに向けて楽しみ方を発信する活動中。 ■目標「真のマイルス者に、俺はなる!」
kanayama@jazzをフォローする 山下達郎 『サブスク死ぬまで解禁しない』から思う 僕(賛成派)の意見 2022.06.26 2025.07.05 マイルス・デイヴィス(Miles Davis)人気名盤ランキング TOP5(勝手にマイルス考古学集計) 2023.03.19 2026.03.07 【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】Bitches Brew アルバムレビュー 考察51 2022.02.20 2026.03.07 【マイルス・デイヴィス(Miles Davis)】Someday My Prince Will Come アルバム レビュー 考察30 2022.01.25 2026.03.07 【マイルス・ディヴィス(Miles Davis)】Live Evil アルバムレビュー 考察57 2022.03.04 2026.03.07 【マイルス・デイヴィス大事典】ファン必携全839ページ!!■ディスク・ガイド(データ&解説) ■演奏楽曲事典(各Ver.を解説) ■人物事典(共演者、作曲家、関係者等) ■資料・索引(作品、共演者、楽曲提供者、楽曲名、人名等)