[No.32] スプライス(Splice) <42点> 【ネタバレ感想】
三文あらすじ:クライヴ・ニコリ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ・カスト(サラ・ポーリー)は、様々な動物の遺伝子を結合(Splice)させることで新たな生物を創造する研究を行っている。ある日、動物と人間の遺伝子結合に成功した2人は、禁忌と知りながらも新生物を生み出してしまう。誕生した生物に”ドレン”と名付け、人目に付かぬよう育てる2人だったが、ドレンはそんな彼らの予想を遙かに超えた成長を見せ始め・・・
『CUBE』の ヴィンチェンゾ・ナタリ 最新作。サンダンス映画祭で披露された後、配給権を巡る各社の激しい争いが繰り広げられたというから、否が応にも期待が高まる。しかも”禁断の実験で生まれた未知の生物が、科学者も予想しない成長を遂げる”というコンセプトは、まさに 王道モンスター・パニック のそれ。”人が怪物に襲われる”系の映画が大好きな筆者としては、鑑賞せずにはいられない。これは『CUBE』以上の傑作が誕生するかもしれないぞ!とワクワクしながら鑑賞したのだった。
まずは、科学者2人がドレンを生み出すまでの過程。いわゆるマッド・サイエンティストが登場する作品では、 倫理を逸脱した実験の善悪 がテーマになり得る。本作でも一応その点の問題提起はされていると思うのだが、クライヴとエルサという2人の科学者を正当化しようとはしていない。完全に ”愚かな科学者” として扱っている節がある。彼らが勤めるN.E.R.D. (Nucleic Exchange Research and Development)という部署(「NERD」は否定的なニュアンスを含んだ”オタク”という意味)にもそのことが表れていそうだ。部署の名前だけでなく、クライヴもエルサも一般的な科学者のイメージとは違う今時の服装で、クライヴはロックミュージックを、エルサはフリスクみたいなお菓子をこよなく愛していたりする。2人が同棲しているアパートの寝室にはなにやら日本のアニメの一コマが大きく引き延ばされて飾られていたり、クライヴの白衣はポップなアップリケがベタベタ貼られていたりもする。つまり、クライヴとエルサの2人は、倫理観が希薄あるいは欠如した ”今時の若者” を象徴するようなキャラなのである。
また、2人は 人間的にも未熟な者 として描かれている。エルサは「私は自分のやりたいようにやりますよ」という態度をとっているくせに、問題が起こると「どうにかしなさいよ!」とクライヴに切れる。悪い意味で典型的に ”女性っぽい” キャラ。クライヴもクライヴで、そんなエルサにヘコヘコしっぱなし。悪い意味で典型的な ”草食系男子” だ。そんな2人に、観客は終始イライラするだろう。しかしながら、実はこれは好ましい設定だ。説教臭いテーマを捨象して、クリーチャーが人を襲う描写に専念できる。…と、序盤は興味深く鑑賞していたのだが、あれよあれよという間に物語はおかしな方向へ進んでいく。
クライヴはドレンとセックスし、エルサはドレンにレ〇プされる。
とはいえ、よくよく注意して鑑賞していれば、このとんでもない展開への伏線が随所に散りばめられていたのであって、気付かなかった筆者こそが愚か者だったのである。まず、様々な動物のDNAが組み込まれているはずなのに、成長するとどんどん 人間の女性 みたいになっていくドレン。あんな普通の歯では人を襲えない。唯一の武器である尻尾の毒針も迫力不足。そして、クライヴとエルサの セックスをのぞき見 するドレン。なんだか クライヴに気がありそう なドレン。2人が冒頭で生み出した新生物ジンジャーとフレッドが 性転換して男になる という展開。監督が単純なパニックホラーなど撮ってくれそうにない ヴィンチェンゾ・ナタリ であるということ。本作が変態映画祭として有名な サンダンス に出品されているということ。そして本作のタイトル「SPLICE」は ”結合” という意味であること…。
おいおい… ドコ結合させてんねん 。まぁ、直前まで気付かず問題のシーンで衝撃を受けたのは完全に筆者の過失であるが、それにしてもこの展開は 悪趣味 すぎる。クライヴとドレンの営みを目撃してしまったエルサにクライヴが謝罪するシーンも、なんだか「浮気するなんてサイテー!」「元はと言えば、お前がちゃんとしてないからだろ!」というようなカップルの 痴話喧嘩 を見せられている気分で不快。確かに筆者は突き抜けた悪役のマッド・サイエンティストを望んだが、そっち方向に行ってしまうマッドさはノーサンキューである。 性癖まで”NERD” にしなくてよかったのに…。
ラストもやはり悪趣味。クライヴが変態趣味を爆発させる展開にビックリした筆者は、これはもしかしてエルサもいかれるのでは?と今度こそ驚かされないよう心構えをしていたところ、案の定、雌雄逆転した男ヴァージョンのドレンにエルサはレ〇プされてしまう。そして 「『ザ・フライ』だけはやめて…。」 と願う筆者の気持ちを無視して、エルサはドレンの子を身ごもってしまうのである。悪趣味だー…。
と、そんな感じで王道モンスター・パニックのプロットからは激しく逸脱している本作であるが、映画自体の出来としてはかなり素晴らしい。前振りは全てきちんと回収されるし、恐怖シーンはゾクゾクするほどコワイ。シッチェス・カタロニア国際映画祭で特殊効果賞を受賞しているだけあって、ドレンの造形は不気味さの中にも美しさを感じる秀逸なものになっている。ただ、ビジュアル面で言うと、冒頭で登場するジンジャーとフレッドが完全に 男性器 である。H.R.ギーガーは上手くモチーフにしたが、本作はモロだ。ここもまた悪趣味だなぁと思っていたら、制作総指揮にあの悪趣味の権化 ギレルモ・デル・トロ が名を連ねていた。この点の確認を怠ったのも、完全に筆者の過失である。
点数:42/100点 映画としては非常に良くできている。あくまでそれを前提にした上で、個人的には本作を友達に勧めたくないし、本作が最高に大好きだという人とは友達になりたくない。そんな作品である。
新品価格¥2,939 から (2013/3/24 01:55時点)
中古価格¥7 から (2013/6/24 05:33時点)
中古価格¥1 から (2013/6/24 05:20時点)
中古価格¥104 から (2013/6/24 05:24時点)
- [No.665] エスター(Orphan) <78点> 【ネタバレ感想】 (2020/03/08)
- [No.658] クリープ(Creep) <59点> 【ネタバレ感想】 (2020/02/21)
- [No.473] グリーンルーム(Green Room) <80点> 【ネタバレ感想】 (2018/01/13)
- [No.471] サラリーマン・バトル・ロワイアル(The Belko Experiment) <58点> 【ネタバレ感想】 (2018/01/10)
- [No.457] IT(IT/イット “それ”が見えたら、終わり。) <89点> 【ネタバレ感想】 (2017/11/13)
- [No.20] ヒルズ・ハブ・アイズ(The Hills Have Eyes) <72点> 【ネタバレ感想】 (2012/01/28)
- [No.28] キューブ2(Cube 2: Hypercube) <22点> 【ネタバレ感想】 (2012/02/06)
- [No.718] オールド(Old) <92点> 【ネタバレ感想】 (2021/09/04)
- [No.27] キューブ(CUBE) <92点> 【ネタバレ感想】 (2012/02/05)
- [No.498] ビートルジュース(Beetlejuice) <84点> 【ネタバレ感想】 (2018/05/30)
コメント
トラックバック
NEWER ENTRY [No.33] トレマーズ(Tremors) <96点> 【ネタバレ感想】 OLDER ENTRY [No.31] デビル(Devil) <82点> 【ネタバレ感想】 NEWER ENTRY [No.96] 死霊のはらわたⅢ / キャプテン・スーパーマーケット (Army of Darkness) <64点> 【ネタバレ感想】 OLDER ENTRY [No.31] デビル(Devil) <82点> 【ネタバレ感想】 Tag Cloud Latest Comments- https://save-worth.ru/zakazat-vyvoz-musora-v-rostove-na-donu-vo/:[No.222] イージー・ライダー(Easy Rider) <89点> 【ネタバレ感想】 (03/28)
- Daga88: 88daga: Trực Tiếp Đá Gà Thomo Hôm Nay:点数別リスト (03/27)
- двери с ПВХ покрытием:[No.3] 紅の豚 <100点> 【ネタバレ感想】 (03/27)
- Home - BJ88 DA GA THOMO:点数別リスト (03/26)
- консультации психолога:[No.3] 紅の豚 <100点> 【ネタバレ感想】 (03/23)
- 月のブログ:『容疑者Xの献身』 (04/19)
- ガメラ医師のBlog:ガメラ:平成(金子)版視聴記など 2013/05/10 (05/10)
- ガメラ医師のBlog:ガメラ:平成(金子)版視聴記など 2013/05/10 (05/10)
- ガメラ医師のBlog:ガメラ:平成(金子)版視聴記など 2013/05/10 (05/10)
- 名機ALPS(アルプス)MDプリンタ:『ジャンゴ 繋がれざる者』お薦め映画 (03/30)
- subscribe
- URL copy
- X
- YouTube
[ordinary_days] designed by Akira.
Copyright © Mr. Alan Smitheeの “時には映画の話を” All Rights Reserved.