ショパン ピアノ協奏曲第1番
第1楽章の冒頭のオケはしっかりした色彩感と重厚感のある落ち着いた弦セクションの演奏で始まります。アゴーギクは少な目でわざとらしさが無く、 セムコフの枯れた表現が味わい深い です。コンセルトヘボウ管の管楽器のソロも素晴らしいです。 ピアノは繊細で透明感と気品に溢れた表現 で、タッチの正確さに舌を巻きます。ブレハッチの表現と巨匠セムコフの演奏は、とても良い組み合わせで、格調高く過剰な表現はありませんが、非常な味わいがあります。ピアノとホルンとの掛け合いなど、 染み入るような味わい深さと気品を兼ね備えています 。
第2楽章は透明感のある響きの中、ピアノが繊細かつ格調高く演奏します。 同時に精妙な色彩感 があります。オケの響きもピアノの表現に相応しく、格調の高さを引き立てています。曲が進むにつれ、味わいが深まっていきます。第3楽章は速めのテンポでスリリングですが、格調を失うことはありません。 ブレハッチはポーランド出身ですが、民謡風な主題はポーランド舞曲らしいリズム感と哀愁があって楽しめます。 後半はかなり超絶技巧ですが、完璧に弾きこなしながらも派手にならず、ポーランド風のリズム感と色彩感を持ったまま盛り上がり、曲を締めくくります。
ツィメルマン=ポーランド祝祭管弦楽団 ツィメルマンの弾き振りによる理想のコンビネーションピアノ&指揮:クリスチャン・ツィメルマン 演奏 ポーランド祝祭管弦楽団
ショパンと同じポーランド出身のクリスチャン・ツィメルマンがポーランド祝祭管弦楽団を弾き振りしたものです。 2000年度第38回レコード・アカデミー賞協奏曲部門賞を受賞 しています。ポーランド祝祭管弦楽団はツィメルマンが結成したオーケストラです。レヴェルは高く、ショパンの協奏曲の伴奏は弾き慣れていて、安定しています。 1999年の録音で音質は非常に良く しっかりしています。
第1楽章の 冒頭のオケは、繊細でロマンティックな表現で目から鱗が落ちる素晴らしさ です。オケによるピアノの登場の雰囲気作りもとても素晴らしいです。 ピアノはクオリティが高く味わいのある演奏 です。ツィメルマンは感傷的に弾いていきますが、オケは少数精鋭でツィメルマンの演奏を絶妙にサポートしています。ポーランド風の民族的な響きもあって味わい深いです。第2楽章はロマンティックなだけではなく、様々な表情があります。第3楽章は とてもリズミカルでポーランドの民族舞踊の雰囲気が良く伝わってきます 。雰囲気も生き生きとしていて純粋な楽しさのある演奏です。オケの民族的な音色も魅力的です。
アルゲリッチ,アバド=ロンドン交響楽団 アルゲリッチの感情表現とアバドとの相性の良さピアノ マルタ・アルゲリッチ 指揮 クラウディオ・アバド 演奏 ロンドン交響楽団
ショパン・コンクール優勝から3年のアルゲリッチのピアノ独奏と、アバド=ロンドン交響楽団の演奏です。アルゲリッチもアバドも若かったことと、小回りの利く演奏やスリリングなテンポ感など アルゲリッチとアバドはとても相性がいい ですね。
第1楽章は長めのオケの後にピアノが入ってきます。この曲の場合、ここでソロと伴奏のイメージがズレていたら終わりです。 若いアルゲリッチは流麗で、速めのテンポで入ってくるので、アバドとの相性はやはり絶妙 ですね。ピアノが入るとアバドは伴奏をかなり抑えて線の細い響きなり、 アルゲリッチの精妙な表現もきれいに聴こえます 。テンポの変化は絶妙で、ピアノとオケの丁々発止のやり取りも聴けます。クレッシェンドの所はテンポも速くスリリングです。この辺りのピアノと伴奏の一体感は素晴らしいです。
第2楽章はほとんどピアノの独壇場ですが、陰ながら伴奏が上手く支えています。それによって アルゲリッチが幻想的な主題を弱い音量で弾いてもきれいに聴こえます 。やはり天性の感性というべきか、1990年代のデュトワとの共演の時でもそこまで演奏スタイルが変化せず、言い換えれば既に完成している訳なので凄いと思います。第3楽章はリズミカルになり、アルゲリッチは楽しそうにノリノリで弾いています。一方、アバドもこういうリズミカルな音楽は得意です。 時にとてもスリリングになり、聴いているとあっという間 に終わってしまう印象です。
ブーニン,コルド=ワルシャワ国立フィル (2001年) 大ブームを巻き起こしたロマンティックな名演ピアノ スタニスラフ・ブーニン 指揮 カジミエシュ・コルド 演奏 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
ブーニンは1980年代にショパンコンクールで優勝し、来日して大ブームを巻き起こしました。 ロマンティックなショパンの演奏 は、冬のポーランドを彷彿とさせます。このディスクは2001年の2度目の録音です。まさにこの曲のイメージ通りで、今聴いてもなかなかの名演です。
トリフォノフ,プレトニョフ=マーラー室内管 (2017年) 曲への理解度が深く、繊細な表現の名盤ピアノ ダニール・トリフォノフ 指揮 ミハイル・プレトニョフ 演奏 マーラー室内管弦楽団
ピアノのダニール・トリフォノフは「2010年混戦のショパン・コンクール第3位入賞で国際舞台に踊り出し、翌年ルービンシュタイン・コンクール優勝&チャイコフスキー・コンクール優勝&グランプリ」という、ロシアの奇才です。特にショパンの演奏に優れ、若手の中でも屈指のショパン弾きです。また作曲家でもあります。指揮はロシアのプレトニョフです。ロシア人コンビですが、 ロシアの民族性は特になく、クオリティの高い演奏 を繰り広げています。
第1楽章の冒頭は落ち着いた伴奏で始まります。プレトニョフのしなやかな表現で、この時点で他の演奏とは少し違いますね。高音質で木管など手に取るように聴こえます。 ピアノは柔らかくも粒の立った音色で、なかなか色彩感 があります。しなやかな伴奏と上手くフィットしています。技巧的な個所もクオリティが高く、常に繊細でしなやかです。
第2楽章もしなやかで優美な演奏です。遅めのテンポでじっくりと繊細に歌いこんでいます。感情に任せて盛り上がりすぎることなく、 曲の陰影や和声の変化に応じた繊細な感情表現 です。第3楽章はピアノが軽妙でリズミカルです。 色彩感溢れる響きで、リズミカルに爽快に盛り上がっていきます 。クオリティが高く、また純粋に楽しめる演奏です。
ポリーニ,クレツキ=フィルハーモニア管弦楽団 ポリーニの凛としたピアノ、クレツキの深みのある伴奏ピアノ マウリツィオ・ポリーニ 指揮 パウル・クレツキ 演奏 フィルハーモニア管弦楽団
ポリーニのピアノ独奏、伴奏はクレツキとフィルハーモニア管弦楽団です。 ポリーニが「ショパン・コンクール」に優勝した直後の1960年に録音 されました。ポリーニの後年の活躍を十分予感させる凛とした音色で技巧的にもスリリングです。伴奏がポーランド人の指揮者で作曲家であるクレツキで、伴奏が若いポリーニの演奏に深みを加えています。録音は1960年のスタンダードな音質だと思います。
第1楽章の冒頭はクレツキとフィルハーモニア管の響きの透明感が高く、しかも深みがあります。味わい深くフィルハーモニア管がポーランドのオケのように聴こえます。ポリーニのピアノはデビュー直後とは思えない落ち着きぶりです。 速めのテンポで透明で色彩感に満ちた音色でクオリティの高い演奏 を繰り広げています。静かな個所は少しテンポを落とし、 凛とした響きを保ちながら味わい深い演奏 です。若い感性も感じますが、技巧の正確さなど、新人離れしている感じです。
第2楽章はオケの格調高い響きで始まります。 ポリーニは少し速めのテンポで、透き通ったタッチが素晴らしい です。ロマンティックですが、感情に溺れることはありません。とても絶妙な表現です。第3楽章は重厚なオケで始まります。ポリーニはテンポを速めて主題をリズミカルに演奏します。ポーランドの舞曲を上手く表現しています。オケは重厚ですが、リズムはシャープでクレツキらしいコクがあります。 ポリーニは自由で多彩な表現を駆使して 、とても楽しく聴かせてくれます。
ショパンのピアノ協奏曲はロマンティックさがあって横に流れがちな気もします。ポリーニの演奏にはそういった先入観が感じられず、センス良く真摯な名盤です。
ルービンシュタイン,スクロヴァチェフスキ=ロンドン新響 巨匠アルトゥール・ルービンシュタインの歴史的名盤ピアノ アルトゥール・ルービンシュタイン 指揮 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ 演奏 ロンドン新交響楽団
巨匠ルービンシュタインのピアノによる演奏です。伴奏は指揮は若い頃のスクロヴァチェフスキとロンドン新交響楽団の組み合わせです。古き良き名盤、という雰囲気に満ちた演奏です。 録音の音質も当時としては良く、聴きやすい です。歴史的名盤の位置づけですが、今聴いても新鮮さがあります。
第1楽章の冒頭のオケはシャープな伴奏で近年の演奏とは大分違います。聴いていてスカッとする位、シャープで情熱的です。 ピアノのルービンシュタインはアクティブでメリハリのあるストレートな表現 です。確実なタッチで難易度の高いパッセージも軽々と弾きこなしていき、 とてもヴィルトゥオーゾ性の高い演奏 です。それで居ながら、華麗になりすぎることはなく、 ショパンらしさを上手く表現 しています。ポーランド的な哀愁というより、古き良き哀愁が感じられる演奏です。オケもメリハリがあって、色々な音が聴こえてきて楽しめます。
第2楽章は穏やかで、古い録音なので透明感とは行きませんが、きっと最近の録音だったら透明感があっただろうと思います。 ピアノは暖かみがあり、ロマンティックに弾いていきます。 木管とのからみも味わい深いですね。中盤から後半にかけてはスケールも大きく、表現の幅が広いです。第3楽章はダイナミックなオケで始まり、ピアノが入るとテンポアップしてとてもスリリングです。装飾は軽妙で上手い歌いまわしです。オケもショパンとは思えないほどシャープなリズムです。 ポーランド風の舞曲も絶妙な味付け です。後半は 超絶技巧とダイナミックさ もあり、スリリングに盛り上がっていき、曲を締めくくります。
アルゲリッチ,デュトワ=モントリオール交響楽団 色彩的な伴奏に幻想的なアルゲリッチのピアノピアノ マルタ・アルゲリッチ 指揮 シャルル・デュトワ 演奏 モントリオール交響楽団
ベテランとなったアルゲリッチのピアノ独奏にデュトワとモントリオール交響楽団の伴奏です。 1998年録音と新しく音質も良い です。少しクールで芳醇な響きのデュトワの伴奏に、アルゲリッチはいつものような色彩感あふれる鮮やかな演奏です。 アルゲリッチが繊細な表現 です。
伴奏に色彩感がある ので、他の演奏とは大分違って、アルゲリッチの世界観を表現することは上手くいっていると思います。 情熱をぶつけてくるような演奏ではなく 、詩的な味わいがある大人の演奏ですね。 もともとエキゾチックで色彩的な響きをもつアルゲリッチなので、とてもうまく行っています。特に 第2楽章は感情も入れ込んで、オケとも息が合い、とてもいい演奏 です。第3楽章はオケも活躍する楽章で、あくまでアルゲリッチが主役ですが、上手くピアノを盛り立てています。 アルゲリッチは、自由自在と言ってもいい位の演奏で、テクニックも素晴らしい です。
アヴデーエワ,ブリュッヘン=18世紀オーケストラ 実はロマン派初期の作曲家、全然違うショパンの古楽器演奏ピアノ ユリアンナ・アヴデーエワ 指揮 フランス・ブリュッヘン 演奏 18世紀オーケストラ
2010年ショパン国際ピアノコンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエワが1849年製のエラールのピアノを弾いたピリオド演奏です。女性ピアニストの優勝はアルゲリッチ以来とのことです。初演が1830年なので、オケはピリオド奏法といっても完全な古楽器奏法とは違うと思います。18世紀オケも恐らく、弦は逆ぞりの弓ですかね。
第1楽章はしっかりした響きのオケによる主題提示から始まります。録音が新しいので透明感があります。 ピアノは現在のピアノ程、華麗さはありません。暖かみがある音色です。 ブリュッヘンはオケをしっかりコントロールして、音量を出すべき所はしっかり出し、ピアノが中心の所はかなり押さえています。オケの存在感がモダン演奏よりも大きく、オーケストレーションの未熟さもそこまで感じられないですね。モダン楽器でのショパンの響きよりはベートーヴェンのピアノ協奏曲の響きの延長であることが感じられます。第2楽章は幻想的な透明感、とは行きませんが、暖かみがある音色で味わいがあります。第3楽章は とてもリズミカルでピリオド奏法の良さが一番出ている と思います。ポーランドの舞曲のような音楽にはピリオド奏法は良く合いますね。
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