. RV589 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
RV589 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

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ヴェネツィアの孤児たちが奏でる演奏とは。ヴィヴァルディ:グロリア ニ長調 RV589

本場の風格、イタリア音楽

前回までバッハを聴き、バッハには中世以来のヨーロッパのあらゆる音楽が流れ込んでいる、という話になりましたが、その大海に注ぐ2つの大河は、イタリア音楽フランス音楽です。

当時から絶大な人気のヴィヴァルディ

その中でも、〝最先端の音楽〟としてバッハに大きな影響を与えたのは、ヴィヴァルディです。

バッハは若い頃、主君の王子、エルンスト公子がオランダ留学から持ち帰ったヴィヴァルディの楽譜を、その依頼でオルガン曲に編曲しました。

当時、世界最高の品質を誇ったアムステルダムの印刷会社による出版楽譜によって、ヴィヴァルディの音楽は全ヨーロッパを席捲していたのです。

今も、ヴィヴァルディの『四季』は、一般にはバッハ以上に親しまれているかもしれません。

千年の海洋共和国、ヴェネツィア

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)は、バッハやヘンデルより7歳年上で、バッハの死より9年前に亡くなっていますので、ほぼ同時代のちょっと先輩、といった感じです。

ヴィヴァルディは、イタリアの水の都、ヴェネツィア(ヴェニス)で生まれました。

ヴェネツィアは、中世以来、地中海貿易を独占し、西欧からオリエントに開かれた唯一の窓でした。

王様はおらず、有力商人たちで統治する共和国だったことも特長です。国家元首は「ドージェ」と呼ばれ、終身制でしたが世襲はできず、評議会員による選挙で選ばれたのも特徴的です。

もともとは西ローマ帝国が滅亡したあと、フン族など異民族の来襲から逃れた人々が、海の潟(ラグーン)に、杭をたくさん打ってその上に住居を作るという、大変な苦労をしてできた町でした。

それ以来、海洋国家として発展、地中海に勢力を伸ばして〝アドリア海の女王〟と呼ばれ、発展し、ナポレオンによって滅ぼされるまで千年の歴史を保ちました。

音楽の分野では〝ヴェネツィア楽派〟を形成し、ナポリ、ローマと並ぶ発信地でもありました。

大流行した「グランド・ツアー」とは

この時代、英国貴族の子弟が、将来社会のリーダーとなるための学業の仕上げとして、ヨーロッパ大陸を旅する「グランド・ツアー(欧州大旅行)」が流行し、その他の国にも広がっていきました。

そのメインの目的地はイタリアであり、そこでヨーロッパ文化の源流というべき古代文明の痕跡と、古典文化に触れるのが大きな目的でした。

永遠の都ローマ、そしてナポリ、古代都市ポンペイ、ギリシャ文明の残るシチリア島などをめぐり、最後にヴェネツィアで最先端の流行に触れて、たくさんの土産物を手に帰国するのです。

そのためヴェネツィアでは巨大な土産物マーケットが誕生し、カナレットやグアルディらの描く風景画と、ヴィヴァルディらの新曲の楽譜がその代表でした。

ヴィヴァルディの生い立ち

さてヴィヴァルディは、ヴェネツィアの象徴サン・マルコ寺院のヴァイオリニストの息子として生まれました。

しかし、ヴィヴァルディは生まれつき難病を患っていたようで、15歳から僧籍に入り、聖職者の道を歩みますが、同時に音楽家としても修行を積みました。

25歳のときに司祭に叙階されますが、その病気のせいでミサは行えず、実質的には聖職者の仕事はせずに、音楽家として生計を立てていきます。

あだ名は〝赤毛の司祭〟でしたが、〝在俗の司祭〟という微妙な立場でした。

ヴィヴァルディは1703年から「ピエタ慈善院付属音楽院」のヴァイオリン教師となりました。

「ピエタ慈善院」は、いわゆる孤児院なのですが、実は、これが当時のヴェネツィアの大人気観光スポットだったのです。

慈善院の孤児たち

慈善院(オスペダーレ)は当時のヴェネツィアに4つあり、ピエタ慈善院はその代表格で、設立されたのは14世紀でした。

子供を育てることのできない親は、「スカフェッタ」と呼ばれる、日本でも一時期議論になった赤ちゃんポストに子供を入れます。

孤児の女子たちは、女子修道院でもあるこの施設で、読み書き、信仰、糸つむぎや裁縫とともに、音楽教育を受けました。

ヨーロッパ中で評判となった演奏

ヴェネツィアには女性の修道院があって、そこでは修道女たちがオルガンや他の楽器を演奏し、また見事に歌う。世界中のどこに行ってもこれほど優しく心地のよい響きの歌には出会えないだろう。

〈ロシア貴族ピョートル・アンドレヴィッチ・トルストイ 1698年〉

日曜と祝祭日には必ずこれらの慈善院の礼拝堂では、娘たちによる声楽や器楽の演奏会が催される。彼女たちは聖歌隊席に座を占めるが、聴衆たちの視線は目の詰まった鉄格子によってさえぎられている。その演奏はまったくもって見事なものである。彼女たちの多くは素晴らしい声に恵まれているし、またこのように姿が見えないために、すべてはよけいに魅力的なのである。

〈英国の旅行者エドワード・ライト 1720年〉

4つの慈善院、すなわちピエタ、メンディカンティ、オスペダレット、インクラービリにおける教会の音楽は、土曜、日曜、祝日に必ず行われる。それが午後の4時頃に始まり、6時過ぎまで続く。この中でピエタ慈善院が、現在のところ最も重要である。ここではおよそ900人の娘たちが養われている。すべて孤児たちであるが、例外的に、貧しい家庭から寄宿生として送られてきた者もいる。(中略)彼女たちの多くが声楽ばかりでなく、器楽においても秀でているのはまったく驚くべきことである。彼女たちはヴァイオリン、チェロ、オルガン、テオルボ、さらにオーボエやフルートも見事に演奏する。現在特に有名な者は、ポローニアとゲルトルーデ、オルガンではトニーナ、テオルボではプルデンツァ、オーボエではスザンナ、ヴァイオリンではアンナ・マリアである。このアンナ・マリアに関しては、我々男性のヴィルトゥオーゾでも彼女に匹敵するものはまれである。

〈ドイツの旅行者ヨハン・クリスティアン・ネマイツ 1726年〉

この地で群を抜いて優れた音楽といえば、慈善院の音楽です。慈善院は4つあり、どれも私生児、孤児、さらに両親に扶養能力のない娘たちで溢れています。彼女たちは国の費用で養われ、音楽に秀でるためにのみ訓練されます。ですから娘たちは天使のように歌い、ヴァイオリンやフルート、オルガン、オーボエ、チェロ、ファゴットなどを演奏します。大きいからといって彼女たちをためらわせる楽器は存在しません。娘たちは修道女のように隔離されて暮らしています。演奏は彼女たちだけで行われ、それぞれの演奏会に出るのは40人ほどの娘です。あなたに誓ってもいいですが、耳にざくろの小さな花束をつけ、白衣をまとった若く可愛いひとりの修道女が、じつに優雅に、そして本当に正確にオーケストラを指揮し、リズムを取るのを眺めるほどの喜びというのは、ほかにありません。

〈フランスの政治家シャルル・ド・ブロス 1739年〉

鉄格子の向こうの、彼女らの運命

バッハのところで登場したザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世(ポーランド王アウグスト2世強王)も、1716年から1717年にかけて、17ヵ月もヴェネツィアに滞在しました。

旅行記に名前が挙げられたアンナ・マリアは、アンネッタの愛称で、キアーラ(キアレッタ)とともに、名ヴァイオリニストとしてヨーロッパ中に名が轟いていましたが、いずれもヴィヴァルディの愛弟子でした。

聴衆の男たちは、旅行記の証言にあるように、鉄格子で姿の見えにくいオルガン桟敷で可憐に歌い、妙なる調べを奏でる女性たちに憧れたのです。

輝かしい、ヴィヴァルディの『グロリア』

『四季』をはじめとする500曲以上のコンチェルトのほか、現存するだけでも54曲あるオペラ(ヴィヴァルディ自身は94曲作曲した、と手紙に書いていますが、さすがに盛っているようです)がその中心です。

今回聴く『グロリア』は珍しい宗教曲で、20世紀になってから発見されました。

ヴィヴァルディ:グロリア ニ長調 RV589

Antonio Vivaldi:Gloria in D Major for soloists chorus and Orchestra, RV589

Rinaldo Alessandrini & Concerto Italiano

第1曲 グロリア 第2曲 エト・イン・テラ・パクス 第3曲 ラウダムス・テ

ソプラノ二重唱

われら汝を頌めまつる

われら汝を讃えまつる

われら汝を拝しまつる

われら汝を崇めまつる

第4曲 グラツィアス 第5曲 プロプテル・マグナム 第6曲 ドミネ・デウス 第7曲 ドミネ・フィリ 第8曲 ドミネ・デウス・アニュス・デイ 第9曲 クイ・トリス

合唱

汝、世の罪を除く者よ、われらを憐みたまえ

汝、世の罪を除く者よ、われらの願いを受け入れたまえ

第10曲 クイ・セデス

アルト独唱

汝、父の右に座したもう者よ、われらを憐みたまえ

第11曲 クォニアム 第12曲 クム・サンクト・スピリトゥ

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