ヤマハSRV250はベテランの所有欲をそそる大型バイク・クオリティでフィニッシュにこだわった!【このバイクに注目】
XV250 Viragoの60°Vツインをクランクから新設計、走りを楽しめるロードスポーツへと磨き上げる!
1992年にリリースされたSRV250は、個性的な60°Vツインのロードスポーツ開発というテーマの他に、もうひとつの課題と取り組んでいた。 SRV250のターゲットユーザーはキャリアのある年齢層で、大型バイクの経験などでクオリティの違いを知っている筈。 そういった人たちがガッカリするのは、250ccになると感じさせられる格下クオリティ。 そこを払拭しなくては、オトナ向けの250ccロードスポーツは名乗れない。 SRV250は各部のボルトもメッキの前に防錆処理をしたり、マフラーなどメッキ加工前に磨いて表面を平滑にする他、塗装はタンクやサイドカバーまで耐候性のある電着+静電塗装を施すなど、すべてのクオリティを大型バイクと同じ品質管理を徹底したのだ。
ベースとなった250ccの60°Vツンは、1988年に登場したアメリカンクルーザ、XV250 Viragoだ。 250ccの片側125ccしかない小排気量であっても、ボア×ストロークが49mm×66mmという稀なロングストロークで、パワーを求めて回す250ccには異例のトルクで走る世界を目指していた。 この異端児エンジンの走りに、ヤマハのエンジニアたちは閃いた。 これでロードスポーツをつくったら走りが楽しいに違いない! コンセプトは時代に媚びないトラディショナルスポーツで、そこに大人の感性で質感を求める等々、ヤマハらしさを込めようということになったのだ。
そのロングストロークVツインは、27ps/8,500rpmと2.5kgm/6,500rpmと、低い回転域で粘りと穏やかさを特徴としていた。 そして60°Vツインの爆発間隔と排気脈動の関係を、XV250 Viragoとは異なる回転域でよりフラットになるクランクのバランス再設計から排気系で長さの調整をするなど、小気味よい加速をはじめとするオンロードスポーツへの熟成に時間を費やした。 その振動も方向性が従来の並列ツインなどと全く異なることから、解析データを元にオーソゴナル・マウントという積極的にエンジンがトルク変動で動くラバーマウントとして、快適で心地よいバイブレーションとスムーズさの両立をはかった。
目指したトラディショナルスポーツに相応しいデザインは、さすがヤマハで時代を超越した新し過ぎず旧くもない、大人好みのヨーロピアンな感性でまとめられていた。 Vツインならではの単気筒と変わらないスリムなエンジンに呼応して、燃料タンクは上から眺めると細身がさらに強調される個性豊かなフォルム。 デビュー2年目に加えられたSRV250Sは、1964年の世界で評価されたYDS-3のツートンカラーにも似た、ヤマハならではの質感が漂う感性を漂わせていた。
また開発当初からの目標でもあった、高張力鋼管によるダブルクレードルフレーム(メインφ31.8mm・ダウンチューブφ28.6mm・ヘッドパイプからのクロスチューブφ31.8mm)をはじめ、溶接工程で溶接個所にプロテクターを設けスパッタ(溶接粉)による磨いたとき布が引っ掛かることないようフラッグシップと変わらないレベルで気遣ったのだ。 オトナは気に入れば10年は乗る、そこに応えるのは開発エンジニアたちもひとりのユーザーとしての責務……そんな思いが込められていた。 他にも機能パーツであるサスペンションなど400ccクラスの仕様を奢る大人仕様にこだわったのだ。 それがどれだけ250ccとして特別だったかは、いまでも愛用されているSRV250が、依然として輝きを失っていないことからも立証されている。
しかしトラディショナル・スポーツは、ニーズは潜在的に多いものの、趣味性にこだわる層が中心であるため、ヒットする例は歴史上も少ない。 SRV250も、クオリティから走りまで、オトナの感性に応える名車としての評価を与えて良い機種だったが、販売量としては少ないままに過ぎていた。 そこで1996年にはタンクやシート類のデザインをライト・スポーツ系へ一新したモデルも派生、SRV250のネーミングは外され車名もルネッサとなったが、需要喚起には繋がらなかった。 とはいえ、250cc60°Vツインスポーツへチャレンジを続けていたヤマハが、開発側のこだわりが深く目標に対して諦めず妥協しない姿勢を貫いていたのはファンとして嬉しいかぎりだったが、この'90年代を境にそうしたこだわりが薄れはじめたのは残念でならない。
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