SYMPHONIACSがライブで魅せつけた、クラシックとEDMの可能性
ここでシンフォニアクスのプロフィールを簡単に紹介しよう。「ネオクラシック」を標榜する彼らは、ヨハネス・フライシュマン(Vn.)、クリスチャン・キム(Vn.)、トム・スーハ(Vn.)、オスカー・ミカエルソン(Pf)、コリン・ストークス(Vc.)、コンスタンチン・ マナーエフ(Vc.)、アンディ・レオマー(Electric/Conduct)からなる7人組の若手クラシック奏者集団。ドイツを活動拠点に現在ヨーロッパを中心に全世界にて活躍中だ。メンバー各位、幼少期より音楽の英才教育を受け、有名音楽学校を卒業。現在も世界有数の管弦楽団やソリストとして活躍している。メンバー各々がヨーロッパ各国や韓国、アメリカに在住しているSYMPHONIACS。彼らのコンサートや作品はとてもユニークで、クラシック音楽の現代版解釈を基調に、DJやビート、エレクトロの同期やEDMを織り交え、とても親しみやすいクラシック音楽にて、これまで世界各国の老若男女を魅了してきた。
来日公演当日はようやく日本盤発売となった1stアルバムの曲を中心に、クラシックの名曲やポピュラーソング、そして特別に日本を代表する作曲家坂本龍一の楽曲も独特にカバー。クラシックが元来持つ厳かさや気品、ダイナミズムやドラマティック性を活かしながらも、現代的な躍動感や高揚感、至福感やキャッチーさを交え、この日本でも集まった老若男女をシッカリと楽しませてくれた。
スッと暗転。真っ暗な中、スポットライトがピアノのオスカーのもとに当たり、その中を彼が爪弾きを始める。そこに加わっていく弦楽隊。ビートも合流していき1曲目の「Roadgame」が形成されていく。ライトも映え出し、場内に生命力が満ちていく。対して「ヴィヴァルディ: 「四季」より冬」は弦楽の厳かさからはいった。コリンとコンスタンチンのチェロが荘厳さを、ヨハネス、クリスチャン、トムのヴァイオリンが激しさを寄与していった。また、「Animals」(マーティン・ギャリックス)からはライティングとステージバックに配されたLEDスクリーンに各曲ごとに映し出される想像を補う映像がさらに映え始める。同曲ではエレガントなピアノから強いキックと弦楽たちが躍動感を寄与。アンディもコンダクトを取りながらリアルにパッドを叩き、キックを育んでいく。会場も合わせてクラップ。一体感の胎動を感じた。
「初めてのジャパンツアーにようこそ」と英語でアンディ。「みなさまこんばんわ」とヨハネスが日本語で挨拶をする。「今日は真の自分たちを生で伝えたい」とアンディ。ここからは彼らの特徴のひとつでもあるエレクトロとクラシックとの融合が楽しめた。切ないメロディのユニゾンと全員のピチカートも印象的だった「Prayer In C」(ロビン・シュルツ)「ヴィヴァルディ: 「四季」より夏」では荒れる海原に投げ出されたようなチェロの重厚さと緊迫感のあるヴァイオリンの応酬が楽しめた。
「遠く日本まで来れました」とアンディ。ここではメンバー各人の紹介と各々の出身地が告げられた。続いて、ポピュラーナンバーたちが次々に贈られる。歌の旋律をチェロに任せ、ヴァイオリンとのユニゾンとハーモニーにより、オリジナルのダイナミズムと壮大さに、更なる情景感やドラマ性を付与した「A Sky Full Of Stars」(コールドプレイ)、また「Aerodynamic」(ダフト・パンク)では、オリジナルでのダンサブルさに深みと荘厳さが付与され、そのフォルテシモしてゆく躍動さに合わせて場内からもクラップが起こる。
「今日はアルバムにも収録していない曲もやります」とアンディ。センチメントなピアノの旋律から場内を未明のマジックアワーへと誘った「Faded」では、力強い4つ打ちと弦楽隊全員によるピチカートのユニゾンが興奮度を高めてゆく。また、ダイナミズムと躍動感、鼓動感を用い、明るさへの導きを感じた「Summer」(カルヴィン・ハリス)のアルバム未収録曲たちも我々を楽しませた。
唯一無二のクラシカル meets EDM
バロック音楽の独自解釈も彼らの魅力。「バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番」では気品と躍動の融合も味わえ、センチメンタルな曲のブロックの際には、チェロとピアノだけによる「Après un rêve」、2本のチェロとピアノを中心にヴァイオリンが加わる形で贈られた「Carmina Burana」などが、会場のすみずみにまで楽曲の擁するその哀しみを染み渡らせていった。
前述通り、この日は日本公演用に特別に「Merry Christmas Mr.Lawrence」も一足早いクリスマスプレゼントのように我々に届けられた。オリジナルに対し荘厳で気品高く永遠性さえも感じた同曲。後半はビートも加わり楽曲が昇華されていく様を見た。
ここからは後半戦。コンサートがさらに熱を帯び、会場もオールスタンディングの体を魅せていく。ヴァイオリニストたちもステージ前方のヘリに座り演奏した「Titanium」(デヴィッド・ゲッタ)では、EDMならではの高揚感とピーク感、そこに弦楽ならではの美しさや優雅さが凄まじい同居を魅せた。会場中からクラップとともに、ビートの強い高揚感のある曲が続く。弦楽隊全員が前に出て弾いた「Something Just Like This」(ザ・チェインスモーカーズ)ではクリスチャンも「さぁ、踊りましょう!」と日本語で煽る。また、そのEDMとクラシカルな融合と高揚感溢れる音楽性で場内を躍らせた「Insomnia」(ザ・フェイスレス)では、メンバー全員がフロントに出てプレイ。会場を興奮のるつぼへと巻き込んでいく。 「次はDJアマデウス・モーツアルト!」とアンディがジョーク。チェロの二人、ピアノによる「モーツアルト協奏曲No.40&Bitter Sweet Symphony Remix」のEDMバージョンが放たれた。同曲では袖に引っ込んでいったとばかり思っていたヴァイオリニストたちも客席に。サプライズによる興奮の中、モチーフのヴァイオリンフレーズもことさら際立ち、オリジナルの持つ至福感をクラシカル meets EDMにてしっかりと楽しませてくれ、福音に包まれるのを感じた。
アンコールでもその興奮はうまく引き継がれた。故アヴィーチーの「Levels」が、そのフォルテシモとピアニシモを上手く活かした音楽性にて、躍らせながらもきちんとストーリーを育んでいけば、ダブルアンコールでの厳かでいて躍動的な、「Don’t You Worry Child」(スウェディッシュ・ハウス・マフィア)が明日への力を与えてくれるように贈られた。 「素晴らしい夜をありがとう」(アンディ)の言葉を残し、彼らは何度も深々とお辞儀をし、最後のサービスとばかりに、ラストはなんと会場を通って控え室へと帰っていったのであった。 彼らが去った後もしばらくは場内に生命力とヴァイタリティ、不思議なワンダーさが残り続けていた。そしてそれらを胸に、我々は会場の扉を開け明日へと向かったのだった。
【セットリスト】 1. Roadgame 2. Vivaldi Winter 3. Animals 4. Prayer In C 5. Vivaldi Summer 6. A Sky Full Of Stars 7. Aerodynamic 8. Bach Toccata Variations 9. Faded 10. Summer (Calvin Harris) 11. Bach Cello Suite No.1 12. Cry Me A River 13. Après un rêve 14. Carmina Burana 15. Merry Christmas Mr. Lawrence 16. Titanium 17. Something Just Like This 18. Insomnia 19. Mozart Symphony No.40 & Bitter Sweet Symphony Remix -Encore- En. Levels Double Encore W-En. Don’t You Worry Child
池田スカオ和宏 ライター/インタビュアー 音楽系Web媒体を中心に執筆中。 1993年頃より執筆開始。1997年~新星堂フリーペーパー「pause」編集部に。2002年~は5年間編集長を務める。同時期インディー系フリーペーパー「SELDOM」を立ち上げ&10年間運営。2007年新星堂退社。 同時期、LUCK'A Inc.設立に参画。 以降も多音楽媒体でインタビュー/ライヴレポを執筆し、2018年度は年間370本のインタビュー&ライヴレポを達成! 振り返ると高校の頃のレコ屋のバイトから現在まで音楽に携わる仕事 以外したことがないなぁ…。
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