高音質なUSB DACの自作方法|VICS USB Audio キット(PCM2704)活用
・USB DAC ICにTI/バーブラウン社製PCM2704を使用。 ・USB1.1対応 ・サンプリングレート:32,44.1,48KHz対応 ・16bit デルタシグマDAC ・THD+N:0.006%(RL>10kΩ) ・SNR:98dB ・Dynamic Range:98dB ・Windows標準装備のドライバを使用(USB Audio Class Device) ・基板サイズ40×70mm
現在使っているSoundBlaster Digital Music LX 改 に勝るものが作れるだろうか。
Sound Blaster Digital Music LX 改造|コンデンサ交換で音質向上 USBサウンドカード Sound Blaster Digital Music LX の改造。全てのコンデンサーをOS-CON、Nichicon MUSE ESに変更し音質アップ blog.bnikka.com使用部品
オリジナルキットではコンデンサなどは汎用品が使われている。 どうせ後で交換したくなるだろうと考え、最初から変更することにした。 変更内容は以下。
部品記号 規格 部品種類 用途 規格 部品種類 メーカー 価格 備考 R1,R13,R16 4.7kΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W R1:LEDの電圧調節 R13,R16:オペアンプの帰還抵抗 → 4.7kΩ 金属皮膜プレート抵抗 1% 1/2W ニッコーオム ¥42×1 R1は削除 R2,R3 1.5kΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W R2:3pin(DT)をLV TTL-levelに調節 R3:9pin(D+)をTTL-levelに調節 → 1.5kΩ 金属皮膜プレート抵抗 1% 1/2W ニッコーオム ¥42×2 R4,R5,R6,R7,R8,R11,R17 22Ω 金属皮膜抵抗 1% 1/4W R4,R5:ダンピング抵抗 R6:C9とでV++電源のLPF形成 R7,R8:C7,C8とでLPF? R11,R17:ダンピング抵抗 → 22Ω 金属皮膜プレート抵抗 1% 1/2W ニッコーオム ¥42×5 R6,R11,R17は削除 (R11,R17は電線路における反射を防ぐため通常あった方が良い) R9 1MΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W クロック生成用 → 削除 R10,R18 20kΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W カップリングC14,C15とで出力のHPFを形成 → 削除 R12,R15 10kΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W オペアンプのゲイン決定 → 10kΩ 金属皮膜プレート抵抗 1% 1/2W ニッコーオム ¥42×2 R14,R19 470kΩ 金属皮膜抵抗 1% 1/4W オペアンプの入力抵抗決定 → 470kΩ 金属皮膜プレート抵抗 1% 1/2W ニッコーオム ¥42×2 Y1 12MHz 水晶発信子 PCM2704に12MHzのクロック供給 → 水晶発信器に変更 LED1 赤 LED パワーインディケーター → 削除 U2 オペアンプOPA2340PA 出力ゲイン調節オペアンプ → NJM2114Dに変更 C1,C10 22pF 積層セラミックコンデンサ 50V 水晶発信子のノイズ吸収 → 削除 C7,C8 0.022uF 積層セラミックコンデンサ 50V R7,R8とでLPF? → 0.022uF メタライズドポリエステルコンデンサMKT1826 100V ERO ¥136×2 C3,C5 0.1uF 積層セラミックコンデンサ 50V 10pin(Vbus)の高周波ノイズ吸収 → そのまま使用 C2,C4,C9,C11,C13 1uF 積層セラミックコンデンサ 50V ICの高周波ノイズ吸収 → そのまま使用 C12 47uF 汎用電解コンデンサ 単電源用のVccp/2供給用のデカップリングコンデンサ → 100uF OS-CON SA 20V SANYO ¥231 C14,C15 2.2uF 汎用電解コンデンサ カップリングコンデンサ → 削除 L1 100uH インダクタ USBバスパワーのためのLPF → 削除 CN1 USBコネクタ → そのまま使用 ケース タカチ UC9-5-12DD ¥1610 RCA端子 金メッキRCAジャック(赤黒) ¥399 ACアダプタ 9V 2.5A 24W スイッチングACアダプタ ¥600 DCプラグ MJ-10 ¥30 ブラケットLED CTL701R 三成電器 ¥168 スイッチ DQ-11 3pin ¥105 抵抗 酸化金属皮膜抵抗 62Ω(LED電圧調節用) ¥21クロックの改良
キットオリジナルの水晶発振子は”12AKSS5DT”と書いてある。 どれだけ検索してもヒットせず、精度もどこのメーカーかも分からない。 そこまで精度は高そうではないので、交換することにした。
オーディオICにとってクロックは命だ。 サンプリングレートなども、このクロックから作られるからだ。 精度の高いものを選べば、輪郭がしっかりした高音質が期待できる。
TCXOは温度保障付き発振器だ。 KSSとあるので、京セラキンセキ製だろう。 ただ、データシートが見当たらないので精度等は分からない。 このあたりが非常に怪しいがTCXOのものは高精度のものが揃っているので、恐らく高精度だろう。
1pin : 使用しない 7pin : GND 8pin : クロック出力 14pin : 5V電源
14pinと7pinの間になるべく足が短くなるように22pFのコンデンサを挿入する。 これは、発振器が発する高周波ノイズを除去するためだ。 高周波特性の良い積層セラミックコンデンサが安価で良い。 この積セラにはキットについてくるものを使用した。
330Ωの抵抗はダンピング抵抗だ。 高周波の反射を防ぎ、それにより低在波が生じるのを防ぐために入れている。 22Ω〜300Ω程度が良いようだ。
水晶発振器 12MHz TCXO 京セラキンセキ ¥525 330Ω抵抗 プレート抵抗 1/2W 1% ニッコーム ニッコーオム ¥42 22pFコンデンサ 積層セラミックコンデンサ(キット付属) 220uFコンデンサ OS-CON SA 10V SANYO ¥231PCM2704をセルフモードで駆動
ということだ。 あの表面実装用のPCM2704の足にハンダ付けをするのは困難を極める。 それに、パターンカットをすると元に戻せなくなってしまう。
これをPCM2704の4pin(PSEL)と21pin(HOST)にハンダ付けする。 データシートでは21pinのHOSTはUSB bus power の5Vに繋げるように書かれているが、どちらでも良い。
パターンカットは、カッターナイフでC2から4pin(PSEL)へ出ている銅線を断ち切るだけだ。 一箇所だけで良い。 一応、テスターなどで絶縁を確認した方が良い。 きちんと絶縁できていないと厄介なことになる。
接続pin 配線場所 7pin(VDD) C2の足(■) 13pin(VCCL) C4の足(●) 16pin(VCCR) C13の足(●) 20pin(VCCP) C11の足(■)・4pin(PSEL)をGNDに落とす ・21pin(HOST)をUSBバスパワーの5Vに接続(この5VとGND間に1MΩの抵抗を挿入)
オペアンプを正負5Vで駆動
普通のオペアンプは、正負電源を用意してあげるか、単電源でも動作するように入力電圧をV+/2のゲタをはかせてあげる必要がある。 オペアンプは真空管に対応する音を決定する大切な素子だ。 ここを交換することで、好みの音に近づけることができる。
増幅率は A = 1 + R2/R1 となる。 R3はオペアンプの入力抵抗を決める抵抗で、キット通り470kΩで問題ない。 C1とR’でHPF(High Pass Filter)を形成する。 カットオフ周波数は 1/(2πC1R’) [Hz] だ。
オペアンプ用の負電源作成(チャージポンプ方式)
1:GNDが共通ではない電源を2つ用意する 2:DC-DCコンバータで負電圧を作る 3:チャージポンプ方式で負電圧を作成する
オペアンプはそこまで大きな電流を必要としないので、今回は正電源から負電源を作れて仕上がりもコンパクトに済むチャージポンプ方式を試してみることにした。 チャージポンプ(ChargePump)方式とは、コンデンサに蓄えられた電荷をスイッチにより繋ぎ替えて負電圧を作成するものだ。 チャージポンプICたるものがあるので、これを利用すると簡単に仕上がる。
チャージポンプICは ・ブーストモードがない7660系 (ICL7660/7662,JRC7660など) ・ブーストモードがある1044系 (LTC1044/1044A/1144,MAX1044など) が一般的のようだ。
これがLTC1144を用いて負電圧を作る回路だ。(ブーストモードはON) チャージするコンデンサは10uF以上のものを使用する。 なるべく低ESRのOS-CONなどが良い。
チャージポンプIC LTC1144CN8 15V → ±15V ¥300 100uFコンデンサ SANYO OS-CON SA 20V ¥231×23.3V、5V、-5Vの作成(スイッチングレギュレータ)
・PCM2704のセルフパワー電源用の3.3V ・水晶発振器の電源とオペアンプのV+用に+5V ・オペアンプのV-用に-5V
IN GND OUT IN GND OUT GND IN OUT ↑注意 3.3V 三端子レギュレータ TA48033 ¥84ヒートシンクには両面テープで固定。 5V 三端子レギュレータ 7805 ¥63パッケージはGNDになっている。 -5V 三端子レギュレータ 7905 ¥637805とはGNDとINの位置が異なるので注意が必要。 パッケージはINの電圧になるので、絶縁されたモールドパッケージを買うと良い。C1:3300uF (MUSE FW 25V) C2:6800uF (ELNA RJJ 10V) ← 3.3V用 3300uF (MUSE FW 25V) ← 5V用
C1:チャージポンプ出力のOS-CON 100uFがこれと兼用 C2:3300uF (MUSE FW 25V)
ケースの加工
高音質デジタルアンプの自作方法|TA2020-20|20万円のアンプを1万円で超える Tripath社TA2020-20というICを使った自作デジタルアンプ。回路図を含む作例の紹介や、ブラックゲート等のコンデンサの音質紹介、ポップノイズ対策の改造例等を紹介します blog.bnikka.com完成
TA2020-20デジタルアンプと同じケースということで、ほとんど同じ外観だ。 それにしてもこのケースは素敵だ。 タカチ様さまさまです。 自作と思えない重厚感を放ってくれる。
と思いきや中はむちゃくちゃだ。 電源の平滑コンデンサとスイッチングレギュレータのヒートシンクが大きく場所をとる。 USBバスパワーにすれば、非常にコンパクトにまとまりそうだ。
音を鳴らしてみる
PCM2704はWindows標準装備のドライバで動作する。 USB Audio Class Deviceだ。
いよいよスイッチON。 LEDが光り、奇跡的に一発で音が鳴った。 ちょっと感動。
比較対象は、SoundBlaster Digital Music LX 改だ。 SoundBlasterの倍近い1万円以上を費やし、倍以上の体積を占めるPCM2704。
高音域 落ち着いた音だ。シャリシャリしない。ガラスが割れるような耳を劈く音は、きちんと突き刺すように迫ってくる。 中音域 SoundBlasterは中域が少し篭ったような感じだったが、その篭りがなくなった。うっとりするような音だ。 低音域 心地良い。優しい感じのする低音だが、しっかり響く。余裕のあるような鳴り方だ。 全体として SoundBlasterに比べて、包容力がある。SoundBlasterは良い音を出すことにやっきになっている感じがして少しばかりしんどかったが、PCM2704は安心してゆったりと聴いていられる。落ち着いた音なのに、篭った感じもない。SoundBlasterを遥かに凌駕する音が鳴ってくれてとても嬉しい。 USBバスパワーではなく、きちんとレギュレータで電源供給をしてあげるのが、やはりオーディオには良いみたいだ。 あと、たぶん水晶発振器もあれで大丈夫だったみたい。
バスブースト回路の追加
高音は抑えて低音を増強するのが好きなので、バスブースト回路を作ることにした。 以下のようなオペアンプを用いたLPF(Low Pass Filter)だ。
非反転増幅回路にC1を加えただけだ。 上で書いたように、GainはC1が無い場合は A = 1 + R2/R1 になる。 C1が入ると少しややこしくなり、
このExcelファイルのR1、R2、C1を変更するだけで周波数特性がグラフになるようにしてある。 因みに、私の好きな音は R1 = 12kΩ R2 = 15kΩ C1 = 0.022uF という設定だった。
オペアンプ NJM2114D JRC(新日本無線) ¥168 12kΩ リケノーム MA 1/2W 5% (理研) ¥78×2 15kΩ リケノーム RMG 金足 1/2W 2% (理研) ¥160×2 470kΩ ニッコーム 1/2W 1% (ニッコーオム) ¥42×2 0.022uF MKT1826 100V メタライズドフィルム (ERO) ¥136×2RMGは金足だ。すごくリッチな感じがする。 オーディオ用カーボン抵抗。 にぎやかな良い音がするとネット検索によると好評のようだ。
RAは精度が5%と低く、ゲインを決定する抵抗には本来使うべきではない。 左右で違う音になってしまうからだ。 けれど、テスターで測定してほぼ同じ値の精鋭部隊2本を用いたので、問題ないだろう。
なかなかコンパクトに収まった。 電解コンデンサはカップリング用のBlackGate NX 22uF ¥168×2だ。 PCM2704と第一弾オペアンプを出た出力は2VくらいのDCがあったので、カップリングコンデンサを入れることにした。 (このあと、BlackGate NXとオペアンプの間にR3を挿入していないことに気付き、急遽もう一本リケノームを投入することに)
すごい。イコライザでシュミレーションしたのと同じような音にすることにできた。 我ながらあっぱれ。 イコライザで出していた音に比べ、非常に重厚な音だ。 アナログ回路で実現したためにバスブーストしても波形の歪みが小さいためか、リケノームのお蔭か、BlackGate NXのためか、NJM2114Dを2つも通しているためなのかは分からない。 けれども、とても高級な重い音だ。 非常に満足。
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