絞り加工の基礎知識と工程9ステップを徹底解説!
まず、作りたい製品の形状を展開してブランク(板)の直径を求めます。ブランクを絞り形状にしますが、1回に絞れる径には限界があるため、最初に絞る「初絞り」の後に、「再絞り」が続くことを念頭に置きます。目的とする径に達したとき、形状を整える「リストライク工程」を要することも多いです。最後に絞ったフランジ(縁)のトリミングを行って完成になりますが、このトリミングによって削られる部分を考慮して、ブランク直径を計算します。
このとき、ブランク展開式と呼ばれる式を利用します。
D=√(d`^2+4dh) d`:フランジ直径 d:絞り部分の直径 h:絞り部分の高さトリミング代は、例えば円筒絞り加工をするときに円形ブランクから絞ったとしても、フランジの縁は変形して四角になります。トリミング代の明確な基準はありませんが、製品の大きさに比例するので、その分多めにフランジ直径を見積ります。
製品形状が複雑な場合は、形状を分割して面積計算して、その合計でブランク直径を決めることもあります。
②絞り回数を決める求めたブランク直径から、何回で絞ることができるか決めます。絞り加工では1回に絞れる深さに限界があるため、目的の形状になるまで複数回繰り返します。また、繰り返すにつれ、材料は加工硬化して絞りづらくなっていきます。その上で、絞れる量を決める方法として、「絞り率」を使います。
絞り率(m)=絞り後の径÷絞り前の径 初絞り…m1=0.5~0.6 2絞り…m2=0.75~0.8 3絞り…M3=0.8~0.9尚、これには、板厚の条件は考慮されていませんが、絞りの難易度を把握する方法として「相対板厚」があります。
相対板厚=板厚÷ブランク直径×100(%)相対板厚が小さいほど絞りにくく、大きいものほど絞りやすくなります。
③パンチ径を決める製品のパンチ、パンチ肩半径を元に、最後の絞りから初絞りへと順を追ってパンチ肩半径rを求めながらパンチRを決定します。
まず最終絞りのr1の中心位置と同じ線上にr2の中心をとり、円弧を描くように肩をとって最終絞りの一つ前のパンチR2を決めます。次に、R2の中心から外径までの距離を3~4等分し、r2の中心線上から1/3または1/4外側へずらした位置で、再び円弧を描くように肩をとってr3を求めながらR3を決定します。更に前工程がある場合は、初絞りまでこの操作を繰り返し、r、Rを求めます。
④ダイ寸法とクリアランスを決める絞り加工をすると、変形するときにブランクの縁が収縮し縁の板厚増加が生じます。このため、金型のクリアランス(隙間)は材料板厚より大きく設定し、板厚増加を考慮します。
一方、この板厚増加によって、絞り径の寸法精度が悪くなるため、厚くなった部分をしごいて均一にすることも行います。この場合、クリアランスは元の板厚より小さくなります。
このように、最初の工程ではクリアランスを大きくとり、無理なく加工できるようにした上で、最終工程に近づいた際にクリアランスを小さくし、側壁にしごき加工を加え、均一な厚さと寸法精度を確保します。
ダイ寸法は、各絞り過程のパンチ径にクリアランスの2倍(両側面分)を加えたもので求められます。
⑤ダイ肩半径を決めるダイ肩半径r`は、初絞りから最終工程に向かって決めていきます。このとき用いるのが③で求めた初絞りのパンチ肩半径rです。初絞りのダイ肩半径は初絞りのパンチ肩半径よりも少し大きいか同じにします。また、初絞りのダイ肩半径r`は
4t<r`<20t t:板厚第2絞りのダイ肩半径は、初絞り時の100~60%の範囲で減少します。第3絞り以降も同様に減少していきます。
尚、フランジのある絞り形状の場合は、必要なダイ肩半径の大きさと、製品が求めるダイ肩半径の大きさが異なり、形状を整えるためのリストライク工程を要する場合があります。
⑥絞り高さを決める形状にもよりますが、①でブランクを求めるために使用したブランク展開式をh=の式になおして各工程で計算することで、各絞り工程での高さを知ることができます。
h=(D^2-d2^2)/4d1 D:ブランク直径 d2:フランジ直径 d1:各工程の絞り直径 ⑦プレス機械の選定まず、絞り加工力を下記の式から求めます。
P=K・n・d・t・Ts(kgf) K:係数 n:円周率 d:絞り径 t:板厚 Ts:引っ張り強さKは、絞り率が一定であれば、相対板厚が大きいほど小さくなり、反対に相対板厚が小さいほど大きくなります。(限界値1.0)
この絞り加工力とシワ抑え力が同時に出力できること、パンチに張り付いた成形品を引き剥がす逆方向の加圧力があること、金型取り付けのための寸法が確保されていること、等の条件を満たしている機械を選びます。
⑧絞り材料の選定材料の特性には、「引っ張り強さ」「降伏点」「伸び」「硬さ」の4つがあります。この中でも、「伸び」は成形性を見る上で重要であると共に、以下紹介するr値(ランクフォード値)、n値(加工硬化係数)が絞り成形法と相関します。
r値…引き伸ばしたときに板厚方向よりも幅方向に縮みやすい材料であるかどうかを示す数値 (大きいほど絞りやすい) n値…加工したり変形させたりすることで材料が硬くなる性質を表す値 (大きいほど硬くなる) ⑨潤滑油の選定絞り加工中は、ブランクが高い面圧を受けながら金型の上を滑るため、潤滑油が必須です。潤滑油を使用することによって、摩擦や破断、焼き付き、金型のダメージを防ぐことができます。(※近年ではドライ絞り加工が行われる場合もあります)
使用するのは液圧潤滑油で、油性タイプと水性タイプの二種類があります。粘度、後工程での洗浄、冷却性など用途目的に応じて選定します。
絞り加工で作成できる形状
おわん型おわん型に加工する際には、一般にへら絞り加工と呼ばれる加工方法が用いられます。へら絞り加工とは、金属材料を高速で回転させ、へら棒と呼ばれる金属の棒を押し付けることで成形する加工方法を指します。
おわん型のような形状は、切削加工を用いて製作することもできますが、材料に金属の塊を用意する必要があり、さらに切削する部分も多くなるため、材料の無駄が多く、材料にかかるコストも増加してしまいます。一方、へら絞り加工では、金属板を用いて加工を行うことができるのに加えて、材料を削ることなく、塑性変形を利用して加工を施すため、材料の無駄がありません。
パイプの絞り加工 パイプのテーパー絞りテーパーとは、径が先端に向かって傾斜している(細くなっている)形状のことを指します。パイプにテーパーを付けるには、一般的に金型を用いてパイプの外径を絞る方法が利用されます。
●断面形状を変更する時に使う方法 ①プレスによる方法まず、プレス機を利用する方法では、上図のように、パイプ材料の外径より小さい内径のダイスにパイプを押し込むことで、その外径を小さくします。ダイスの形状を変えることによって、テーパーを付ける他にも、断面形状を円から六角に変えることなども可能となります。
②スウェージングマシンによる方法スウェージングマシンを用いる方法では、上図のようにスウェージングダイスと呼ばれるダイスによって、パイプを直径方向に加圧することで断面形状を変化させます。なお、スウェージングダイスの内部は、下図に示すような構造になっており、1~2対のダイスが加工部の周囲を回転しながら、連続的に叩くことで加工部を加圧していきます。なお、ダイスの打撃数は毎分3000~5000回にもなり、高速で加工が施されることが分かります。
<スウェージングダイスダイスの内部> ●パイプのバルジ加工バルジ加工とは、金型内にセットしたパイプ内に液体を充填させ、内側から超高圧力をかけることで金型に沿った形状に成形する加工方法を言います。ハイドロフォーミング加工や膨らまし加工などと呼ばれることもあります。バルジ加工は、難易度が非常に高い絞り加工の一種で、複雑な形状の中空製品の成形に利用されます。
異形の形状異形絞り加工とは、上図のように、円筒や角筒のような決まった形状を持たない複雑な形状を成形する加工方法を指します。例えば、下図に示したような家庭用暖房機の燃料タンクの底面には模様が付いていますが、このような模様の形状も異形絞り加工によって実現されます。
しかし、異形絞り加工では、円筒絞り加工や角筒絞り加工などと比較して、金型の形状がより複雑で、圧力を加える際に様々な方向に力がかかることから、加工の難易度は高くなります。
絞り加工のメリット
絞り加工では、容器状の製品を生産します。一方、切削加工で同様な形状の製品を製作するには、旋盤で外形を削り出し、さらにマシニングセンタなどで穴あけ・中ぐりなどを施すことが必要です。また、筒状の材料に底となる材料を溶接することでも容器状の製品は製作できますが、筒や底の成形には、板金の切断・曲げ・溶接などの工程を要します。
1.短時間の成形が可能 2.大量生産が可能 3.材料コストが低い 4.材料への熱的ダメージが小さい 5.加工により強度が向上する絞り加工のデメリット
1.初期投資が必要 2.割れやシワなどの欠陥が生じる例えば、ブランク直径が小さいと、絞り終わりでブランクホルダーによるブランクのホールドが外れてしまい、上図左のような口辺しわが発生してしまいます。また、絞り深さが大きすぎると、上図右のように、絞り加工の数日後に割れが生じる置き割れが起きることがあります。そのほか、ブランクを押さえる圧力が弱すぎればしわが、強すぎれば割れが発生してしまいます。金型の形状によっても割れやしわなどが生じることがあるので、金型の設計にはノウハウや経験が必要です。
まとめ
仕組みはシンプルですが、精度や品質の向上のため、細かな手順を踏んで成される加工だということがわかります。
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