慶應卒の“元リク”が「日本発・ショート動画版Netflix」で目指す新世界。有料会員4.5万人、6割が20代
これは、アメリカの高校で実際に起こった銃撃事件を扱った「ロックダウン」という作品の一場面だ。予告映像はSNS上で1600万回再生され、21万の「いいね」がついた。本編の時間は15分。いわゆる「ショートフィルム」だが、視聴体験は映画そのもの。見終わると、スマホを持つ手にはじっとりと汗をかいていた。銃社会、そして「ガンシューティング(銃撃)世代」と呼ばれるアメリカの若者たちの潜在的な恐怖がありありと伝わってきた。
作品を独占配信しているのは、SAMANSA(サマンサ)。22年にアプリがリリースされた、月額490円のショートフィルム配信サービスだ。会員数は4.5万人。ユーザーの6割が20代の若者だ。ユーザーからは「映画のおもしろいところだけギュッと詰まっている」「2時間は長いけどショートフィルムならいける」など、ショート動画に慣れた世代ならではの感想が寄せられる。
全部自社でやる
SAMANSA CEOの岩永祐一。 撮影:野田翔
SAMANSAの配信作品は600本超。9割以上が海外制作のため、外資系企業が運営していると思いきや、創業メンバーはみな日本人だ。CEOの岩永祐一は慶應大学の理工学部を卒業後、リクリートを経て渡米。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で映画制作を2年学んだのちSAMANSAを創業した。共同創業者の遠山孝行も、慶應大学からテキサス大学の映画学科に編入・卒業するなど、クリエイティブのバックボーンがある。
Advertisementこれは同社の強みにもつながっている。例えば、予告編は監督が作るのではなくすべて自社で制作し、「バズらせ」るためのPDCAサイクルを日々回す。それもそのはず、集客はTikTokやYouTube、Instagramなどのショート動画がメイン。予告からサービスに流入し、無料会員期間を経て有料会員になってもらう。無料会員の半分がそのまま有料会員になり、定着率は9割超というから驚きだ。
オリジナル作品をハリウッドに売り込み
作品の調達にも、経営陣のクリエイティブ出身らしい姿勢は表れている。代理店は入れず、クリエイターやスタジオと直接契約を結び、年間の配信料を支払っているのだ。冒頭で紹介した「ロックダウン」も、カリフォルニアの映画学生の卒業制作だったが、「原石クリエイター」として直接契約を行った。
作品を調達するだけでなく、オリジナル作品の製作にも意欲的だ。「SSTRUCK(ストラック)」というオリジナルショートフィルム制作プロジェクトでは、23年にハリウッド新進気鋭の若手クリエイターたちと4作品を製作・配信した。脚本開発から編集まで寄り添う。
実際にSAMANSAはアメリカ大手のエージェンシーと提携し、ハリウッド大手スタジオ向けにこれらの作品の長編化の権利販売を打診。好感触を得ているという。
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