オーケストラトランペットの「移調読み」「読み替え」とは?
これは 「この楽譜の『ド』の音は、『F』の音なんやで」 という意味です。なので、楽譜に「in F」と書いてあったら、トランペットでは「ド」はF(ソ)、「レ」はG(ラ)……というように吹かないといけないわけですね。このように、オーケストラのトランペットの譜面は「 『ド』の音が実際には何の音を示すか」 が書いてあることがほとんどです。こうした楽譜に書かれている音符を、一般的なB♭管のトランペットで吹くために別の音に読み替えるテクニックを 「移調読み」 または 「読み替え」 と呼びます。
今回は、この「移調読み」の具体的なやり方をご紹介していきます。私がオーケストラにいたときに、 実際にやっていた方法 です。
どうやって読んだらいいの?
先ほどは「in F」、つまり 「この楽譜の『ド』の音は、『F』の音なんやで」 と指定された譜面を例としました。でも実際のオーケストラでは、「in A」「in H」「in C」「in D」「in Es」「in E」といった具合に、 曲によって譜面上の音符をさまざまな音に読み替えなければならない ことがほとんどです。このように、「どの音を『ド』にするか」という基準を「調」とか「調性」とか呼びます。「ハ長調」とか「ニ短調」とか言うときの「調」ですね。
「そんなに調が違う楽譜ばっかりなの? もぅマヂ無理。。。 」と思った方も、諦めないでください。私も、大学入学後に学生オーケストラに入って初めてトランペットの譜面を見たときは「 もぅマヂ無理。。。 」ってなりました。オーケストラでは「in B♭」という楽譜は、ほぼ見たことがありません。
では、実際にどうやって読んだら良いのかを、パターン別にご紹介していきます。どの場合も、一般的な「B♭管」のトランペットで吹くことを前提としています。
移調読みの具体的な方法① ド(B♭)から一定音ずらす② 新たな音階として覚える(in F)③ ①②を組み合わせる(in E・in Es)
① ド(B♭)から一定音ずらす移調読みの基本的な考え方です。トランペットの調である B♭を基準 にして、楽譜で指定されている調が どれだけ高いか、あるいは低いか を把握し、その分だけ譜面上の 音符の高さをずらします 。と言っても文章だけでは分かりにくいと思いますので、また楽譜を見ながら考えていきましょう。今度は「in H(ハー)」の楽譜と、これを「in B♭」に書き替えた楽譜です。
HはB♭と比べて半音高いので、 譜面上の音符よりも半音高く吹けば良い 、ということになりますね。※ドイツ式に「H」と表記しているので、「B♭」も本来は「B(ベー)」と表記すべきところですが、英音名の「B(ビー)」と紛らわしいので、あえてフラットを付けています。
AはB♭よりも半音低いですよね?なので、今度は 譜面上の音よりも半音低い音を吹けば正解 、ということです。
同様に考えると、 「in C」なら全音 (二度)、 「in D」なら全音二つ分 (三度)高くすれば良いわけです。ね、簡単でしょ?……といっても、最初から頭の中で音を変換しながら吹くのは大変。頭がこんがらがって演奏どころではなくなりますよね。ですから、慣れるまでは 楽譜上に実音(実際に鳴らす音)を書き込む などして覚えると良いでしょう。
② 新たな音階として覚える(in F)それでは、最初にご紹介した「in F」はどうでしょう。これも、先ほどの例を考えれば簡単。FはB♭よりも五度(完全五度)高い音ですので、 楽譜上の全ての音を五度上げれば 吹けますね。……と言われてすぐにできる方はそれで良いのですが、これは なかなか大変 だと思います。考えようによっては、これを機に全ての音の音程関係を頭に入れるという方法もありますし、長期的な視点で考えればその方が良いのかもしれません。
ただ、それよりも 簡単な方法 があります。それは、 「in F」の読み方を新たに覚えてしまう ことです。誰でも生まれて初めて五線譜を見たときは「?」だったわけですから、新しく別の読み方を覚えるのはそれほど大変ではない……ハズです。
この場合も、慣れるまでは上の画像のように 実際に吹く音を楽譜に書き込む のも手です。覚え方のコツとしては「 楽譜上の音符よりも二つ上の線上にある音 」と考えると分かりやすいです。慣れると、「in F」の楽譜を渡されてもすんなりB♭管で吹けるようになります。いや、ホントに。
③ ①②を組み合わせる(in E・in Es)移調読みの 最大の難関は、何と言っても「in E」(※個人の感想です) 。B♭から音が遠く、しかも「#」がわんさか付いてくるので、読みにくいったらありゃしない。
ところが!「in F」が読めるようになった皆さんにとっては、「in E」なんてもう怖くない!ヒントは、E(エー)とF(エフ)の音程。 EはFよりも半音低い 音ですよね?
まずは、「in E」の楽譜を 「in F」だと仮定して、音符を変換 します。それから その音を半音下げれば ……ほら、実音に!このようにすれば、もはや「in E」なんて 「in B♭」も同然、と言っても過言ではない でしょう!……すみません、過言かもしれません。
同じようにして 「in Es」も、いったん「in F」読みして全音下げれば「in B ♭ 」 として読むことができます。
なぜ楽譜の調がこんなに違うの?
ところで、オーケストラのトランペットの譜面は、どうしてこんなにも 調がバラバラ なのでしょう?
その理由は、トランペットという楽器の歴史と深く関わっています。昔のトランペットは今のような形ではなく、一本の楽器でいろいろな曲を演奏するのは困難だったそうなのです。 楽曲に合わせて管の長さの違うトランペットをいちいち用意 しなくてはいけなかったのですね。管の長さが違えば楽器の 調も変わりますから、楽譜もそれに合わせて書かれていた 、という事情があったわけです。
同様に、クラリネットやホルンの楽譜ももさまざまな調で書かれており、移調読みが必要になります。