. Shosaku Numa, 1929-92) - 日本の科学と技術
Shosaku Numa, 1929-92) - 日本の科学と技術
Shosaku Numa, 1929-92) - 日本の科学と技術

沼研の伝説的なエピソード:沼正作(Shosaku Numa, 1929-92)

沼正作博士(1929-1992)は、神経伝達物質の受容体やイオンチャネル等の一次構造を次々と決定していき、脳内で働くさまざまな神経機能素子の分子的実体や構造機能相関を明らかにすることにおいて多大な貢献をした科学者です。あの怒涛の業績を産み出した沼研では、どのように研究が進められていたのでしょうか?当時、京都大学医化学教室(医化学第二講座) 沼 研究室で活躍された研究者の方々が語るエピソードから伺い知ることができます。

注)ここで紹介するエピソードは、昭和の時代のものです。令和の研究倫理の基準に照らし合わせると、すべてがアカデミック・ハラスメントに該当すると思います

  • 大学におけるハラスメント防止に向けて 文部科学省
研究に対する厳しさ

大学院に入って数日後に 「君,もう大学院をやめなさい」 と言われました。当時私の研究していた酵素は室温で数秒で失活する酵素で,私が不安定を言い訳の材料にしたことに沼先生は激怒しました。 (医 化 学 教 室 と 私)

コンピューターに間違いはつきもの。ヌクレオチドシークエンスをアミノ酸に読み替えるのは,目で全部チェックしないとコンピューター間違えますからね。今までずっとそうしてきましたから。そのおかげで,これまでの論文1つも間違いがありませんわ。」 (医 化 学 教 室 と 私)

フラコレが夜中にとまって活性画分を失ったとき: 「何でや。」 「フラコレがとまっておりました。」 「君なんでみとらんのや。フラコレなんて故障するにきまっとる。夜中じゅう起きてチェックするのが当然で私はいつもそうしてますよ。」 (医 化 学 教 室 と 私)

ラボツアー行きたい。 すごすぎる施設。 クローニングに細胞培養培養に抗体精製の自動化により人を酷使せず沼研を超える作業量も可能に。 つまりそれはピペド分化の終焉

素人としてはこれからの研究職が身につけねばならない物が何かをしっかり考えないとね。 https://t.co/MZcadoM9AB

— THE-O (@Paptimus_PMX003) May 31, 2023

沼 先生が風邪を引いたヒトに向かってよく言っていたことですが, 「緊張感が足りないと風邪を引きます。緊張感を保ってACTHを分泌するようにしておけば風邪は引きませんよ。従って私は風邪を引いたことがない。」 それが昂じて,風邪で病院に行っていてプログレス報告会に遅れたヒ トに先生からの一言 「公私混同すべきじゃない。」 (医 化 学 教 室 と 私)

ほぼ毎日夜10時ころ沼先生が研究室へおりてこられ, 「きょうの実験は如何でしたか?」 と質問され,わたしがデータを説明すると, 「では明日はどこそこまで進みますね。」, なにかミスがあると, 「なぜすぐやり直さないのですか。」 といった調子でした。 (医 化 学 教 室 と 私)

共同研究者に対して: 「もうほかの部分全部できてて,あと先生のアラインメントだけができてないんですわ。いつできますか?」 「あさってくらいには」 「いや,こっちはずっと待ってるんですよ。」 「それではあしたには」 「もう他にすることないんですわ。」 「じゃ,今からすぐ やります。」 「今晩遅くまでいますから。ほなよろしく。」 (医 化 学 教 室 と 私)

この精製された ACTH-mRNA の純度を調べるべく当時東大におられた本庶先生のところへ教えて頂きに行くことになり,第6研究室から本庶先生にお願いしましたところ,都合がついたら Tel しますと言われ待っていました。3~4日たったところで,沼先生が, 「北さん」東大行きはどうなりましたか?? 本庶先生からの御連絡を待っています,と 答えましたところ,突然, 「あなたに熱意を感じない!!以前から,あなたは,時々土,日曜日に labに来ていない事に気付いていましたが,研究に対する努力は無限ですよ!!」 (医 化 学 教 室 と 私)

厳しかったですねえ。たとえば、お昼に本庶研沼研合同の論文抄読会をやっていて、大学院生が論文を発表するのですが、論文の紹介の仕方が悪いと両巨頭の前で叱責されるんです。…沼先生は他人に厳しいだけでなくご自分にもものすごく厳しくて、研究室を帰られるのが朝の5時ごろ、サイエンスにすべてを捧げる生活をしておられた。 (テルモ生命科学芸術財団 インタビュー)

沼教授室の明かりは毎晩午前2時ごろまで消えることがなかったという (月刊 化学 2015年10月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 最終回)

ラボにおける指導の絶対性

ある時竹島先生が沼先生に少しだけ口答えしたらこう言われたそうだ。 『私は戦争に行って上官の 言うことを聞かなかったやつを見て来た。戦場で頭を下げろと言われて逆らったやつは次の瞬間、首がなかった』 (努力は無限/竹島先生のこと Yoshimura Lab 2007-7-7)

留学するという最後の日,挨拶にうかがった時,先ず出たお言葉は, 「君はこれまで私に対して数々の無礼があった」 であった。これは,また2時間説教か,と思った瞬間, 「まあ,ええけどな。頑張れや」 ときた。(医 化 学 教 室 と 私)

論文発表に対する厳しさ

沼先生に 「これから始めるからな」 といわれたら, 筆頭著者はその瞬間から論文原稿を書き終えて出版社に郵送するまで, 沼先生との2~3週間にわたる一対一の濃厚な毎日, さらにその最後はほとんど徹夜の数日間が続くことを覚悟しなければならなかった. (月刊 化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

ペーパーワークに睡眠なし。夜中の3時か4時頃ようやくデスマッチがおわり,かえって寝られるかと思いきや, 「君は今から文献やって,明日朝9時には秘書さんにこれとこれやるように指示しとけよ。」 (医 化 学 教 室 と 私)

その後論文を書いて,教授に持って行き,その後2週間に渡る「デスマッチ」が始まりました。数日経った頃でしょうか, 「北さん,あなたの英語は,中学生以下です!!」 といわれ私の論文をビリビリに破られました。(医 化 学 教 室 と 私)

「中学生以下ならましですよ, 僕は”幼稚園児“とまでいわれた」と語ってくれた友人もいる. (月刊 化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

沼先生の論文の書き方は基本的に「英借文」だった. 極力オリジナルの表現を排除して先行文献の表現を借りてくるよう指示した. 先行文献も英米人が一流雑誌に書いた表現でなければ採用されず, しかも一つでなく複数の先行文献で使われていることをしめさなければならなかった. (月刊 化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

それどこに例がありますか」 と言うのがペーパーワークでの沼先生の口癖でした。 (医 化 学 教 室 と 私)

新しい知見や考え方が含まれている場合には当然オリジナルな文章を「英作文」せざるを得ない. 沼先生は筆頭著者が書いた原稿を, 声をだして読むように指示した. 沼先生はそれを聞きながら, 「ここは文章が続かんな」 とか 「これはうちで使った文章じゃないな」 といったコメントを発した. (月刊化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

論文は外国に遅れたらしまい。1日でも早く投稿すること。そのためには,出来上がった原稿を火曜日の午後1時までに大阪中央郵便局に持参し,窓口で今日の便に間に合いますかと確かめて投函すること,そうすればその日の夜の便でロンドンに水曜日には到着し木曜日には Nature のオフィスに届く。万一遅れても金曜日には着くのでその週にまにあう。 (医 化 学 教 室 と 私)

原著論文作成の時の沼先生の気合いの入れようは,経験したものでないと分からない,一種独特な世界があった。私などはペーパーワークの経験が乏しかったた め,ペーパーに関するいろいろな調べものを命令されたりしたとき,何事につけても要領を得ず,かつ対応が遅かったため,たびたび叱責された。沼先生は教授室から電話でお叱りになることが多く,医化学第3研究室の黒い電話のベルが鳴るたびに「また先生に叱られるのではないか」という思いから一気に心拍数が上昇し,身体が固くなり,冷や汗が噴き出すという条件反射が形成された。 (医 化 学 教 室 と 私)

教授室でのデスマッチのやり取りは一対一であり、筆頭著者の証言に頼るしかないが、ある友人は 「あなたは傲慢なうえに嘘つきです。嘘つきは決して研究者にはなれません」 といった厳しい言葉を浴び、激昂した沼先生が椅子を蹴り倒したのを目にして血の気が失せたと語ってくれた。 (月刊化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

当時はもちろんパソコンなどない. … そのため膨大な量の配列データを手作業で整理し, 電卓で図上の長さを計算し, B4サイズの紙に原図を書いていった. 原図を受け取った秘書はロットリングを使って作図し, できあがったものを論文上でのサイズに縮小コピーした. 沼先生はそれに定規を当てながら確認していき, 1mmの数分の一でも違っていると思ったら原図にもどっての書き直しを指示した。図のプロポーションが気に入らない場合も同じだった. … 沼先生は基本的にホワイトを使った修正を認めなかったので、何度かの書き直しの末、ようやく大きなマルチプル・アラインメントの図が完成した. ところが確認していくと1か所だけ本来破線であるべきところを実線(同じ種類のアミノ酸であることを意味する)にしていたことがわかり, 一同は落胆した. 今回ばかりはホワイトを使おうかとみなが思ったとき, 若い秘書の流した涙がこぼれ落ちて図をにじませた. これで否応なく書き直しになったという話である. (月刊化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

研究者にとっての論文というのは, 画家にとっての絵と同じなんですわ. 納得がいくまで何度でも書き直すんです. 最後の一筆まで力を抜いたらあかんのですわ.」 (月刊化学 2015年7月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第2回)

24時間365日

日曜の朝6時に沼先生に 「PstI はありませんか?」 と電話をかけられ起こされた (医 化 学 教 室 と 私)

12月31日に仕事を終え,医化学でのほんの少しの仕事を 沼先生に引き継いで頂き,自宅に戻り元旦を久しぶりに家族でゆっくり過ごしました。明けて2日の 昼頃でした。さて郷里の明石に帰って2~3日ゆっくりすごそうと準備していると,突然電話がなりはじめ愚妻が取り上げると沼先生からだとの事。これを聞いて小生が電話口にでると, 「沼ですが(しばし沈黙)。正月は休むと言っていましたが,もう2日です。いつから研究室に来るのですか?」 (医 化 学 教 室 と 私)

医化学第二講座の故沼正作教授とアセチルコリン受容体の研究を共同でされておられた時に,沼教授が深夜でも電話をかけてくるとこぼしておられました.久野先生のほうから,沼教授に夜中は応対しないと告げられたそうで,それからは,そのようなことはなくなったそうです.(PDF 久野宗先生追悼のことば 東北大学大学院生命科学研究科脳機能解析分野 八尾寛)

  1. 研究室メンバーに向けて書かれた恐ろしい手紙 2016年1月23日 アレ待チ
  1. イシューからはじめよ【書評】
  2. 自分が研究に向いている人か向いていない人かがわかる33の質問【適性診断】
沼 正作 博士の言葉

沼先生は、怖い先生だと聞いていましたが、私達の話を聞いて、にこやかに

教科書で得る知識も大事だが、実際に実験をしてみないと生きた知識にはならない。実験をしながら考えることがもっと重要だ。

と諭され、実験をすることを勧められました。(プロフェッサーがヒヨコの頃 第3回 筑波大学医学群医学類 副学類長 桝 正幸 先生 国立大学医学部長会議)

「何をやっても時間がたつのだから、出来るだけ大事で、意味がある仕事をやりなさい。」 (京都大学大学院医学研究科神経・細胞薬理学教室 メッセージ)

「目の前の100人を治療する医師も重要だが、将来の100万人の治療に役立つ基礎研究も重要である。」 (京都大学ウイルス研究所 増殖制御学分野 影山研究室 影山教授からのメッセージ)

「私が憂えているのは、今の日本の若い研究者が比較的早く論文の書ける ようなテーマしかやらないことだ。私は日本人に独創性がないとは思わない。欠けているとすれば、思い切って難しいことに挑戦しようというチャレンジ精神だ と思う。ヒマラヤ登山なら失敗すれば命がなくなるかもしれないが研究で失敗しても命はなくならない。多少のリスクは冒してでも、これは大切と思うテーマに は賭(か)けられるような若い人を養成してほしい。これが私の言い残したいことだ」 (産経新聞 平成4年3月14日朝刊 / 1991(平成3)年度修士学位記授与式式辞 1992(平成4)年3月26日 平成3年度修士学位記授与式式辞 学長 鈴木 正裕 / 『神戸大学学報』No.427 1992〈平成4〉年4月)

世の中には重箱のすみをつつくような研究をしている学者がいっぱいおるんですわ. そんな研究は時間の無駄やから私はやりません. そして研究テーマは世の中の流れに対して早すぎても遅すぎてもいけません. 一歩早いと早すぎます. 半歩早いテーマを選ぶことで成功するんです.」 (月刊 化学 2015年8月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 第3回)

最初のテーマには、痛みを感じる時に分泌される神経ペプチドであるサブスタンスPを選びました。ACTHの成功例から考えて、サブスタンスPの遺伝子をクローニングして調べれば、きっと新たな神経ペプチドが発見できる。そうすれば、痛みのメカニズムがより詳しくわかるだろうと思ったのです。この狙いも的中し、サブスタンスPとよく似た神経ペプチドを発見し、これをサブスタンスKと名付けました。この研究も世界的に高く評価され、新しい研究室を無事スタートしたとほっとしたのですが、ある時、沼先生から「君を教授にしたのは、あんな研究をしてもらうためではない。もっと新しい道を進むべきである」と言われました。(サイエンス・ライブラリーNo.53 中西 重忠 JT生命誌研究館)

少しは酒も飲めた方がええんですわ. 人生には酒でまぎらわさないと耐えられないようなつらいことがありますから.」 (月刊 化学 2015年10月号 化学同人 伝説の生化学者 沼 正作 物語 最終回)

参考
  1. 医 化 学 教 室 と 私
  2. 京都大学医化学教室 沼教授時代[昭和43(1968)年2月1日~平成 4(1992)年2月15日]
  3. 伝説の生化学者 沼正作物語 第1回 こうして誕生したデンセツの京大医化学第二講座 ●柿谷 均 (月刊化学 2015年6月号 化学同人):”大腸がんという病魔に襲われ,志なかばの63歳という若さでこの世を去った.これは,ありし日の沼先生を語る実録・沼 正作物語である.” “沼先生は教室員に元旦以外休みを取ることを許さなかったという「伝説」で有名だが, 実は 厳格な論文作成の作法こそが最も際立った特徴 であったように思う.” ”…この成果はNature誌のアーティクルに掲載され, 雑誌の表紙を飾った. 1979年春のことである. このとき沼先生は50歳, 世界の表舞台にデビューする年齢としてはかなり遅かった. 周囲は「遅咲きの研究者」という見方をしたが, あとから振り返ればここに至るまでの十分なトレーニングと準備を重ねていたということだろう, 沼先生の快進撃はここから始まった.”

沼正作先生の伝記「伝説の生化学者 沼正作物語」は,月刊化学のバックナンバー2015年6~10月号に全5回で掲載されています! バックナンバーをお求めの方はぜひご注文下さい! https://t.co/ch2fOU1yAf — 月刊 化学 (@gekkankagaku) June 21, 2022

教授「ポスドクが一番実験しない月はいつだか知ってるかい?」 学生「8月か1月でしょうか?それぞれお盆休み、正月休みがありますので」 教授「外れだな」 学生「ではいつなんです?」 教授「2月だ」 学生「なんで2月なんです?連休もありませんよね?」 教授「2月は一番日数が少ないからさ!」 — 限界ポスドクのアライさんbot【Youtubeみてね】 (@araisan_postdoc) October 27, 2019

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This entry was posted in 研究の進め方 on April 22, 2016 by scienceandtechnology.jp .

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