石垣島 グリーンイグアナ捕物帳 ~食味レポートを添えて~
情報収集の過程で駆除作業経験者や集落の住人に話を聞いていく。すると大抵、「素人が一人で行ったって姿も見られないよ」「高所作業車(リフト車)が必要だね」という意見が出てきた。これはなぜか。 件の林は濃い茂みに加えて、林床も琉球石灰岩で入り組んでいてイグアナの逃げ場が豊富だ。そのため目視で林内の標的を探すのは非常に難しい。となると高い木の上で日中にバスキング(日光浴)している個体を見つけるしかない。そして、歩くのも困難な密林の樹冠を狙うとなると、必然的に「やぐら」を組むことになるのだ。 そもそも高所作業車て…。どこから借りてくるんだよ。どんな免許が必要かすら知らないよ…(※車両サイズに応じた自動車運転免許の他に高所作業車運転車資格が必要)。
ネットの情報だけじゃ話にならない ええ…。 何その自信満々な回答は…。拍子抜けするわ…。 だが、冗談を言っているようにも見えない。 こちらが呆気にとられていると、「え?採れるよ?普通に。」「趣味で獲って骨格標本とか作ってる人もいるよ?」とダメ押し。ついに突破口を見つけたかもしれない。師匠と呼ばせてください。
事実、彼自身も過去に個人でイグアナを捕獲した実績があるという。かぶりつくように捕獲方法を聴き込む。 「トカゲ釣りしたことあるでしょ?あれと一緒。」 おいおい、嘘だろう!
沖縄に伝わる昔ながらの遊び「トカゲ釣り」のターゲットとなるオキナワキノボリトカゲ。 御存知ない方がほとんどであろうから説明しておこう。 「トカゲ釣り」とは沖縄で親しまれている伝統的な遊びである。ターゲットはキノボリトカゲという、それこそちょうどグリーンイグアナのミニチュアのような樹上性トカゲ。それを草の茎で作った「輪っか」で縛り上げて動きを封じ、捕まえるというものである。
そーっと首に草の輪っかを掛けて締め込むと…
はい釣れた!!…これが大人でも夢中になるくらい楽しい。
イグアナハントの道具立て 数ヶ月後、僕はまた石垣島へと降り立っていた。 手にはタマン(ハマフエフキ)用の釣竿、ケプラー繊維を撚った細手のロープ、そして麻袋。
今回用意したロープ。先端の輪はスリップノットなどで作り、スムーズに締めこめるようにしておく。
イグアナの一時確保用に購入した麻袋には、なんの偶然か原産地「BRASIL」の文字が。一体どういう経緯で石垣島のホームセンターに並んだのか。
僕はあえて使用しなかったが、どんな種類であれ大型爬虫類を取り扱う場合は手を保護する手袋を用意すべきである。最低でも軍手、できれば革手袋などがあると安心だ。
見つけた! 今回はレンタカーで、前回とは異なるエリアを海沿いに走りながら、聞いていた条件に合致するポイントを探す。 ある程度開けていて樹上を視認しやすく、足場も良い。それでいて足元にはイグアナの隠れ家となる琉球石灰岩がゴロゴロしている海岸林…。
新たなポイント。前回とロケーションはよく似ているが、確かに林の密度はまばら。
ついに見つけた…!
捕獲! うなだれるほかない。だが、希望も見えた。 「これは獲れる…!」
翌日も日が高くなる時間帯に左脚を引きずって現場へ向かう。昨日の落下で股関節を捻挫したらしい。 きっと、昨日の個体はもう警戒心を強くしていて、バスキングに出てくることはないだろう。だが一応、例の立ち枯れをチェックしてみる。 ……いるわ。昨日のものとは別個体かもしれないが、またも同じ場所にグリーンイグアナが陣取っている。しかも、今度はさらに都合の良いことに眠っているらしい。瞼を下ろして微動だにしない。
確保―!ここにいちゃいけない生物だってことはわかってるんだけど…、かっこよすぎてつい笑顔に。
両手のあちこちに小さな切り傷ができた。爪も背鰭(後述)もなかなかの切れ味。
ジュラシック! 二、三分ほど経つと、麻袋が動かなくなった。イグアナが落ち着きを取り戻したらしい。そっと麻袋から取り出してその身体を観察してみる。
この顔つき…。
頬が膨らんでいるのは成熟した雄の特徴。
そんな眼で…見てくれ見てくれ!もっと見てくれ!!
天然の迷彩とでもいうべき体色は
同一個体であっても状態によって、いくらかパターンが変わる。
腹側の模様はこんな感じ。
首元にはスタッズのような棘が並ぶ。
鋭く大きな爪。あの程度の傷で済んでよかったのかもしれない。
頭部~背中の背鰭(クレスト)は風になびくほどしなやかだが…
尻尾に生えているものは鋸のように硬く、鋭い。僕はこれで右手人差し指をザックリやった。
尾は全長の半分以上を占める長さ。縞模様がいかにも熱帯の爬虫類!
解体開始!締めた後だからこそじっくり観察できる箇所もある。
顎には牙こそ無いが、固い葉や木の実を噛み切るための小さく鋭い歯が並ぶ。
喉のヒダ(デューラップ)は広げてみるとこんなに大きい!オレンジ色がかっているのは婚姻色か。
後脚の内側、にはイボ状の突起が並ぶ。これはそけい孔といって、フェロモンを発する器官。雄ではこのように発達が顕著。
鶏とも豚ともつかぬ鮮やかな肉色!また、そけい孔列を内側から観察すると、脂肪の塊のよう。ヒトのアポクリン腺にも似ている。
前後の脚は皮を剥いてニンニク醤油で下味をつけ、片栗粉をまぶして揚げる。 「竜」感マシマシな竜田揚げの完成だ。 これが見た目のイロモノ感(ここは料理人のさじ加減かもしれないが…)に反して、ジューシーで味わい強く、実に美味い! 鶏肉に似ていると思いきや、もっと歯ごたえと旨味が強く、むしろスッポンなどカメ類に近い。さすが爬虫類といったところか。
片栗粉をまぶして揚げる。
グリーンイグアナの「竜」田揚げ
予想以上に美味い!沖縄の野外で獲れる肉としては最上級では。
イグアナの参鶏湯風
ごちそうさまでした!
さて、いかがだっただろうか。 たしかに石垣島には南米原産のグリーンイグアナが定着しつつあった。それも、駆除活動を尻目に、一般人が観察・捕獲を実践できる密度にまで増えていたのだ。 何度も言うがこれは在来の自然を維持していく上で由々しき事態であり、決して容認してはならないことである。 だがオオクチバスしかり、カミツキガメしかり。国内に定着してしまった外来生物というのは、あらゆるメディアの報道を通じてネガティブなイメージを持たれてしまうことが多い。それは、その種自体の魅力が否定されるようでとても悲しいことである。 やはりグリーンイグアナも、見れば見るほど素晴らしい(あと美味しい)生物であった。この素敵な爬虫類が、今後理不尽なバッシングを受けぬためにも、飼育者やペット業者はさらに意識を高めねばならないだろう。もちろん、その他のあらゆる外国産生物についても同じことだが。
石垣島の外来生物として忘れてはならないのが、やはり南米原産のオオヒキガエル。温暖な南西諸島では容易に熱帯産の生物が帰化、定着してしまうのだ。
この記事を紹介する 2016.07.28 平坂 寛 猛毒魚“オニダルマオコゼ”を素手で捕まえて食べる (沖縄県) 詳しく見る 2016.09.29 平坂 寛 もっとも手軽で楽しいジビエ! サワガニ&モクズガニを捕りに行こう 詳しく見る 2016.05.19 平坂 寛 深海魚「ミドリフサアンコウ」を食べる 詳しく見る高級魚、と聞いてどんな魚を連想するだろうか。 それはトラフグだったりクエだったり、人によってさまざまであろう。 僕の場合は茨城県に住んでいたこともあって、真っ先にアンコウを思い浮かべる。あれは美味い。・・・
2016.10.07 鍋田 陽二 絶品の外来二枚貝 「ホンビノスガイ」を採ってきた (東京湾) 詳しく見る※本記事の取材は漁業権の設定が無い海域で行っております。潮干狩りを行う際は禁漁区と禁漁期間に気をつけましょう。 いざ!外来種ホンビノスガイの住む海岸に 友人の誘いを受け、東京湾某所にホンビノスガイを採・・・
2016.09.19 平坂 寛 落ち葉にそっくり! 不思議でおいしい漂流魚「マツダイ」 詳しく見る夏から秋にかけて、漁港のゴミ溜まりをよく見ると奇妙な物体に遭遇することがある。 大きさは3cm程度のものから30cmを超えるものまで様々。一見すると水面を漂う落ち葉なのだが、絶妙に挙動が不自然…。 近・・・
2018.02.20 平坂 寛 アフリカマイマイの調理法と注意点 詳しく見る 速乾ロングスリーブTシャツ(ホワイト) 詳しく見る Pelican eel Tシャツ(シティグリーン) 詳しく見る 速乾ロングスリーブTシャツ(バーガンディ) 詳しく見る container > #origamiez-boby-inner -->- ©King Octopus Inc.,
- ABOUT US
- CONTACT
- PRIVACY POLICY
- 古物営業法に基づく表示